BCN 視点 #51 「IT人材不足を甘くみてはいけない」 (2014年6月19日)
飲食業や建設業における人手不足が大きな社会問題になっている。この労働力不足は、徐々に他業界に広がりつつある。総務省が5月30日に発表した「労働力調査(基本集計)」によれば、4月の完全失業者数は254万人、前年同月に比べて37万人減少しており、完全失業率は3.6%、完全失業者は47か月連続で減少している。また、同日に発表された4月の有効求人倍率は1.08倍で、この数値は過去20年間の最高値である2006年7月の水準と同じになった。景気の緩やかな回復を受けて有効求人数が増加している。
IT業界でもプログラマやシステム・エンジニア不足が徐々に深刻化しつつある。アベノミクスによる景気回復という要因のほかに、業界特有の要因として、社会保障・税番号(マイナンバー)制度導入に向けた政府・地方自治体における開発業務や大手銀行の勘定系システムなどの大型開発案件の増加がある。この大型開発案件の増加は一時的な要因なので、大型案件が終了する2~3年後、あるいは東京五輪が開催される2020年頃には人余り問題が起きるだろうという専門家もいる。しかし、人材不足の背景にはもっと大きなトレンドがあることを忘れてはいけない。それは、日本の労働力人口が着実に減少していることである。
すでに日本は人口減少時代に突入しているが、人口全体の減少数より、働き手となる世代の人口減少数がはるかに大きい。例えば、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(全国)」をみると、2010年から2014年の間に日本の人口は約111万人減少しているが、同じ期間に15歳以上65歳未満の人口は393万人減少している。この先も同じ傾向は続く。2014年から2019年までの5年間で全人口は226万人減少するが、15歳以上65歳未満の人口は7780万人から379万人減少して7401万人になるという予測になっている(18歳以上35歳未満に限定しても144万人の減少が見込まれている)。
もちろん、15歳以上65歳未満の人口で労働力が決まるわけではない。大幅に増加する65歳以上人口も労働力として期待できるし、15歳以上人口の労働参加率(とくに女性の労働参加率)を高めることによって、労働力を確保できる可能性はある。しかし、若者の数は着実に減少している。IT人材不足は一時的なものだと考えるべきではない。
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