「豊か」かどうかの話
住宅業界のプロ向けに書いた記事です。
プロの方はもし良かったら参考になさって下さい。
そうでない方は、業界の裏話だと思って見てみて下さい。
皆さん、どちらが好きですか?
どちらも甲乙つけ難く、価値観はそれぞれで好みに寄るところなのですが
もしどちらかの車を買う、どちらかの部屋に宿泊するとなった時には、性能や価格、特徴やメリットデメリット・・・・結構吟味しますよね。
次に住宅です。
この中から自分の家の外観を選ぶとしたら、どれを選びますか?
私も含めた皆さんは下の4件の中から選ばれたのではないでしょうか?
実は上の4件はサイディングの外壁で窓の収まりは外壁とゾロです。
下の4件は木外壁かガルバ、窓は内側に引っ込んだ納まりです。
我々には、木外壁で窓は陰影のある納まりが格好良いというバイアスがかかっていますが、何も知らないユーザーさんや設計事務所さんの中には、なんとなく明るくて綺麗という理由で上の4件の中から選ぶ人も結構いるはずです。
もちろん価値観は人それぞれで好みは自由なのですが、それでは物が売れません。
上の4つから選ぶユーザーさんや設計事務所さんをどうやって下の4つから選んでもらえるようにするか、も我々の仕事のひとつです。
では今度は窓周りを内側から。
上の4つの窓周りの写真は、新建材でできた普通の家。
デザインも何もありません。
100mm厚さの普通の壁で、奥行きはなくサッシも貧相に見えます。
表面のビニール皮膜が浮き上がっているものもあります。
下の4つの写真は外壁の厚みがある、あるいは窓近辺の余裕スペースを考えた設計です。そこにスペースの余裕があると花や飾りなどの趣味や好みを表現することができます。
なんなら自分がそこでたたずんでも良い。それは生活が「豊か」だと言えましょう。
キーワードは「豊かさ」です。
上の4件より下の4件のほうが「豊か」に見えませんか?
と私は問いかけます。設計事務所さんに、工務店さんに、ユーザーさんに。
そうすると皆さん、「確かに」と頷いて下さいます。
どっちが皆さんの家づくりにおいて、暮らしにおいて、
「豊か」になりそうです?
我々は断熱はなぜ厚くするのが良いのか、木の外壁はなぜ良いのか、窓はなぜこれが良いのか、をスペックで語ります。
でも時に「豊か」かどうかで語り、それを相手と共有することができた時、突破口が見えることもよくあることなんです。