数値+パッシブデザイン+α
数値だけが大事ではないというけれど・・・
「数値だけが大事なのではない」
「太陽に素直なパッシブデザインが大事」
最近、高断熱高気密業界界隈でよく耳にします。
住宅の断熱基準義務化を前に、UA値を上げなければならないし、
また一方で既に数値(だけの)競争になりつつあることも事実で、
一昔前のオール電化時代のように「うちはオール電化できます!」が
最近では「うちはG3です!」になったとかならないとか。
そんな数値競争に警鐘を鳴らしたい気持ちもあるのでしょう、
冒頭の「数値だけが大事じゃない」発言の主旨をそう理解しています。
パッシブデザインで全て解決!?
ならば、UA値がよくなる断熱の構成を考えた上で更に、
方位、窓の大きさ、位置、軒の長さや角度、その他もろもろ
パッシブデザインを十分に考慮した設計をすることで大方の心配事は解消
されるだろうと僕も比較的簡単に考えておりました。
でも、そう言い切れない悩みがいつも付きまといます。
冷暖房換気です。(空調とは言いません)
本来、数値を上げてパッシブ設計をすれば設備は限りなくミニマム
になるはずです。
それなのに「全館空調」というワードのおかげでやたら過剰な設備をスペックしたり、逆に「エアコン1台で冷暖房できる」というワードに固執し、
バランスを欠いた冷暖房計画になってしまうこともしばしば・・。
わかりやすい言葉がいいのかどうか
「全館空調」や「エアコン1台で」という言葉は確かにわかりやすく、
ユーザーに浸透しているのかもしれません。
だけど、端的に言って「わかりやすい=いろいろ端折っている」と考えます。それが正しいかどうかを判断できる情報が少なくならざるを得ない。
それから、我々業界の中の人が思うほど、ユーザーは「全館空調」や「エアコン1台で」に飛びつかない。というか温熱環境的にことさら言わなくても大丈夫なブランディングなりアウトプットの方が大事なわけで。
ルイヴィトンが「うちのカバンは丈夫です」とも言わないし、
メルセデスが「うちの車は高級です」って言わないし、
リッツカールトンが「うちのホテルはラグジュアリーです」って
言ったら恥ずかしすぎる。
ZEH問題も絡み話はややこしく
UA値を良くし、パッシブ設計をしても設備で困ってしまう例を挙げました。そしてもうひとつ考えなければならないのがZEHです。
長期優良住宅や認定低炭素住宅の一次エネ消費量BEIは0.8以下となりました。これは今まで以上にUA値を良くし、設備もそれなりに良くしていかないと届かない水準であると言えましょう。
さらに、ZEHがスタンダード、太陽光発電がマストのような情勢になり、住宅税制や補助金、助成金の基準は大体ZEHが条件となっています。
そうなるとG2やG3も大事だけれど、どうしたらZEHになるかがより切実な問題となってきています。
ZEHかどうかは、UA値を計算し、設備によるエネルギー消費量を計算し、太陽光発電の発電量を計算し、プラスマイナスの収支でどうなるかを見てはじめて判断できるのですが、これがなかなか簡単ではありません。
外皮や設備で良くできなければ、太陽光の容量をできるだけ増やすということに行きがちですが、話はそう簡単ではなく、太陽光なしでもBEI0.8という縛りも存在します。つまり創エネ(太陽光)より省エネ(断熱)でできるだけ良くしていくことを求められていると言えます。
数値+パッシブデザイン+αとは
住宅の本質は住む人が心地よく、快適に過ごせることにつきる。
そのためのUA値であり、パッシブデザインであり、ZEHです。
UA値やZEHのための家づくりではないのですが、現実的にはそこの課題も
解消していく必要があります。数値だけが大事ではないけれど数値も大事。
僕が思う数値+パッシブデザイン+αの「+α」は「パッシブデザインで設計された高気密高断熱住宅における設備コーディネイトスキル」です。
パッシブデザインの本来の意味や目的、UA値他数値を計算することの意味や仕組み、そういった本質を十分に理解したうえで、例えば現在のG2G3等級67レベルにおいて、最適な冷暖房換気を実現し、且つZEH、V2H、自家消費重視の蓄電池などをいかに組み合わせ、提案し、形にできるか。
現在日々格闘していますが、そのようなスキルが今後ますます大事になっていくだろうと考え、ある準備をしています。
その話はまた別の機会に。