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マレーシアに移住する理由

マレーシアに移住する理由ってなに?
人それぞれなんだけど、マレーシアが好きなら住めばいい。
子供に語学を身につけさせる為に、子供に留学させて一緒にマレーシアに住むって人も、
noteを読むようになって知った。結構いらっしゃるようで
「そういうことを躊躇せずに挑戦できるんだなぁ、すごいな」って思う。

 私が最初にマレーシアに住んだのは29歳の頃だ。
現在は64歳なので来年になれば年金が満額もらえるようになるので、月に12万円くらいの収入があるはずだから、再び、いや三度マレーシアに移住をしようと考えている。

 三十数年前にマレーシアに住んでいたときは、もちろん現地で仕事をしていた。
正確に書くならばJICAのボランティア活動をしていたのだ。
 仕事の内容は自動車の整備を刑務所の囚人に教えていた。

刑務所内の養殖池のベンチ


詳しくは守秘義務があるので書くことは出来ない。
毎朝、刑務所内のモスクから流れる
アザーン(イスラム教のお祈り)の声で強制的に起こされていた。モスクの屋上に取り付けられたスピーカーから流れる大音量のアザーンはアラビア語なのだろうか。よく聴くとマレーシア語も混ざっていたと記憶している。
マレーシアの夜明けは遅くて7時を過ぎてようやく日が差して明るくなるのだ。毎朝のルーティンは水浴びから始まる。現在ではどこの家でもガス湯沸かし器タイプのシャワーがあるのだが三十年前は湯沸かし器がなくて、冷たい水でマンディーと呼ばれる水浴びをしていた。熱帯のマレーシアでも朝一番のマンディーは冷たくて桶で最初に水を浴びるときは勇気がいった。それ故に一気に目が覚めるのだった。

朝食の定番の炉ティ・チャナイ


 朝食は正面の門を開けて貰って刑務所の外に出る、一番近いクダイ(お店)というかワロン(屋台)へ行き、ロティ・チャナイを食べるのが日課だった。ワロンでは早く出社してきた同僚が先に朝食を食べている。
「やあトオル、スダ マカン?」(トオル、飯は食ったか?)とあいさつをしてくれるのだが。飯を食いに来たばかりの人間に「飯は食ったか?」はないだろう。
返事は「スダ スダ」(もう済ませた)
同じように「スダ ミヌン?」ってのがある。
「もう飲みましたか」なんだけど、これは10時と3時のおやつ時に言われることが多い。いい年をした大人が「おやつは食べたのか」と聞くのもなんだか可愛くて笑ってしまう。

 いつも朝食はロティ・チャナイロティを食べていた。休日も遠くへ外出しても何処かのお店でロティを食べていた。お店はみな似たような作りをしている。店の入り口付近にガラス張りのカウンターがあって、直ぐ後ろにステンレスの作業台があり、インド系の親父がロティの生地をこねている。ロティがインド料理ならインド系が言うロッティが正しい呼び名だろう。
ロティは生地を回しながら伸ばし、薄く平べったくなったら前後左右から生地を中央に折りたたむように寄せて、生地に空気を閉じ込め焼き上がったときに、ふっくらとなるように成形している。たっぷりの油を鉄板に引きロティの生地を乗せその上からまた油をかけるのだ。適度に焼けたらひっくり返して両面がしっかり焼けたらステンレスの作業台に移し、両側から手のひらでパンパンとたたいて焼き上がったロティが柔らかくなるようにしているのだ。
「なに飲む」お店のスタッフは一応に言葉が短い。
私がこの店に始めて来たときは
「お前どこから来た」
「俺は日本人だけど、この近くで仕事をしている」と応えると、さらに色々と聞いてくる
「東京か?家族は一緒か?給料はいいのか?」と矢継ぎ早に聞かれたものだが、その店に数回通うと飽きてしまったのか。
「なに食べる」「なに飲む」の対応になる。
 
 マレーシアはマレー系もインド系も中国系もほぼ全ての人がフレンドリーなのだが、それは日本人が珍しいからで、特に女性に対しては、日本人女性と仲良くなりたいという下心(というか友人に自慢したい)から、よりフレンドリーに感じると思う。それも数回通うと、そんなこともなくなる。
早い話がちょっかいを出して反応を面白がっているのだけかも知れない。
 焼きたてのロティはとても美味しい。ロティを日本語に訳すと「パン」なんだけど朝食に食べるのはロティ・チャナイのことでもちろんロティでも通じる。初めてのお店だと、日本人だとわけが解らなくて注文していると思って「なんのロティだ」と聞かれることもある。これはマレー人の優しさからきているのかも知れない。
ロティ・バカール、これは「トースト」のことなので日本人がなにを頼みたいのかを忖度して聞き返してくれる事がある。ロティのお店ではもちろんトーストもメニューにあるのだ。

テータリは泡立っている

 ロティを食べながら飲むのは「テー・タリ」一択しかない。お店によって味も微妙に違う。最初からカップに底にコンデンスミルクが入っている物があったり、甘いのが苦手な人は注意が必要ですね。 テータリが泡立っているのは写真を見れば理由がわかりますね。ではなぜこのように作るのか。それは熱い紅茶を冷ましているのです。マレー系もインド系も基本は猫舌で、日本人よりも熱い者に耐性がないのである。彼らは手で食事をするので、熱い者を食べるととたんに手が火傷してしまう。炊きたてのご飯など絶対に食べられない。いつも冷めているものばかりを食べていると言ってもいい。 多くの日本人の観光客が選択するように、飲み物に迷ったら、冷たいのなら「アイル・トゥンビカイ」(スイカジュース)温かい飲み物なら「ミロ」(そのままミロ)を注文すれば想像通りの味なので心配がない。個人的には「ロティに合うのはテー・タリでしょ!」って思う。 我々日本人がロティ・チャナイと呼んでいるのはもしかしたら正確にはロティ・プラタと呼ぶのかも知れない。他にも、ロティ・コソン(ゼロ)とかプレーンでも通じると思う。地方によって微妙に違うことがある。  美味しいロティを食べるなら、客が並んで居るところで食べるに限る。作り置きをするお店はロティが冷えてしまって美味しくない。常に客が途絶えず回転の良いところのお店で食べるのが良い。多少の待ち時間があってもできたてのロティが食べられるなら行列する我慢も必要だ。タイミングが悪く冷えたロティが回って来そうならロティ・タンパル(目玉焼きのせ)にして貰って、ロティを焼き直して貰う事も出来る。 目玉焼きのことを「マタ レンブー」と呼んだりする。(マタは目、レンブーは牛)目玉焼きがまるで牛の目のように見えるとのことだ。 付け汁はカレーですね。マレーシア人の中には、カレーはいらないと言ってサンバルだけで食べる人もいる。「辛いだろ」と聞くと「もっと辛いは、もっと美味しいんだ」と応えるのだ。

 カレーの種類は
アヤム(チキン)イカン(サカナ)ダル(豆)の三種類が一般的だ。
始めて食べる人はアヤム(チキンカレー)が良いだろう。
 できたてのロティを右手だけでちぎってカレーを付ける。サンバルをあらかじめカレーに溶かしておくのもいい。サクっとした食感がロティの命だろう。シンプルな料理なので小麦の味がロティの美味しさになる。半分くらい食べると「もう一枚いけそうだな」と思ったら、
そんなときは「タンバ ラギ」(お替わり)と
マレーシア語で言ってもう一枚を頼むと、なんだかマレーシアの長期滞在者になったような気分になる。

 ここでロティの種類をあげる。頭にロティと付いていると思って下さい。
 テロール(生地に玉子を混ぜる)
 タンパル(貼り付けると言う意味、ロティに目玉焼きを乗せる)
 サディン(イワシの缶詰を使うのが一般的)などがある。
 また、ロティとは呼ばれないけど似たようなもので、ロティ屋さんには必ずあるのがムルタバだ。ムルタバはロティの生地に挽肉やタマネギなどの野菜も一緒に包んでまるて平べったい餃子のようなものだ。こちらの種類があってアヤム(鶏肉)サディン(イワシ)カンビン(山羊肉)などがあり、必ず具が入っています。
 
 ロティ・チャナイのサクサクふんわりした食感とサンバルを絡めたカレーの付け汁が懐かしい。来年にはマレーシアに移住したいと考えているが、その理由の一番はロティ・チャナイを食べたいからかも知れない。三十年前の思いではロティ・チャナイなのだ。

ロティ・チャナイが無性に食べたくなったので、
こんな文章を書いてしまった。

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