【読んだ本】 日本の大問題――残酷な日本の未来を変える22の方法/荻上チキ
この本を一言で言うと...
日本の政治・経済・福祉・外交・メディア・治安・教育について問題と、それに対する荻上チキさんの提案が学べる本
読んで学んだことは...
① 政治にまつわる問題
● 戦後の日本政治は55年体制のもとで安定成長してきたが、93年の細川内閣誕生以来、自民党の安定政権は崩れた。浮動票が増え、政策がポピュリズム化しやすくなった。
※55年体制…自由主義と資本主義を肯定する「保守」のスタンスである与党自民党に対して、社会主義を志向する「革新」というスタンスをとる社会党が、最大野党として異議申し立てする構図の体制。政権交代を欠いた一方で、比較的安定した政治運営が可能だった。
● 比例代表制と小選挙区制を併用している日本の選挙制度では、二大政党制に収斂せず、一強多弱やポピュリズム政党が生まれやすい。ポピュリズムは短期的なカウンターとして影響力を持っても、長期的な政権維持能力があるとは限らない。
● 選挙に行くことだけが政治参加ではない。署名やデモ活動、自前のメディアによって「世論にアピールする」方法や、陳情やロビイングによって「議員と親しくなり耳打ちする」という方法もある。これらは「この世論は無視しがたい=表を左右しうる」と思わせる状況をつくることで政治状況を動かしていくもの。こういった多様な政治参加の方法を知り、再考する必要がある。
● 一定の署名が集まれば国会の議題に乗せる「署名法」をつくり、社会運動の成功体験を積み重ねていくこともできる。※イギリスの「E-Peitition」のような。
② 経済・福祉にまつわる問題
● 戦後の日本経済は、「高度経済成長期」→「安定成長期」→「低成長期」と右肩下がりを続けているが、だから「低成長が永遠に続く」と考えるのは誤り。現に、他の先進国は 90 年代以降も成長している。
● 日本は長らくデフレに苦しめられてきた。デフレが続くと、企業の利益を削り、労働者の賃金も低下する。金融政策や財政政策によって、デフレを脱することは、経済成長をするためには欠かせない。
● デフレを解消するには、適切な金融緩和と財政出動によるデフレマインドの打破が必要。が、90年代・00年代の政権は金融政策に消極的であったため、日本一国だけが円高になりダメージを丸かぶりした。
● 経済成長さえすればいいわけではない。経済成長とともに、再分配政策や人権の尊重を両立させていくことが重要。そして、長期的に見れば、ブラック企業への規制や就学前教育の義務化といった適切な再分配政策や人権政策は、経済成長に結びつく。
読んで思ったことは...
● 価値観が多様化し、複数のタグをその都度切り替えながら生きる現代では、特定の候補者に自分の1票すべてを託すことは難しい。なぜなら、その候補者が掲げる政策が、自分の考えとすべて合致していることは稀であるから。政党や政治家に投票するのではなく、政策に対して投票する仕組みの方が、現代の価値観に合っているような気がする。政策実行の過程が公開され国民に監視されていさえすれば、“誰が実行するか” は大きな問題ではないのはないかと思ったりする。
● それに近い考え方の「署名法」のアイディアはとても興味深い。政治は、政治家に「この世論は無視しがたい」と思わせさえすれば良いので、多くの人が議題を提起できて、国民からの大量で適切な署名が集まるWebサービスをつくってさえしまえたら、大きな影響力が持てる。これ誰か作らないかな。