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【読んだ本】 君たちはどう生きるか/吉野源三郎
この本を一言で言うと...
「立派な人とは何か」「立派に生きるためにはどうすればいいか」について考えさせられる本
読むべき人は...
① すっかり不誠実で立派じゃない大人になってしまったあなた
② 立派な大人になってほしいと子供に願う親御さん
読んで学んだことは...
① 物事の真理に迫るための「高い視座」を持つ
人は自分を中心に物事を見たり考えたりしてしまう性質を持っているもの。その昔、人々は「地球が宇宙の中心だ」と信じていたことからもそれがわかる。そして、そうした考え方が「物事の真理」を見極める時のレンズを曇らせてしまう。
しかし、自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に、自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆくと、世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしまう。
大きな真理は、そういう人の目には、決してうつらないのだ。
主人公コペル君におじさんが伝えているように、自分を「大きな流れの中のちっぽけな1つの分子である」と捉えられるくらいに俯瞰的に何かを見たり考えられたりして初めて、「物事の真理」に近づける。
② 経験に裏打ちされた正しい「信念」を築く
実際に自分自身で経験して、何かを感じ心を動かされなければ、わからないことがある。例えば、こういうこととか。
君は水が酸素と水素からできていることは知っているね。(中略)こういうことは、言葉でそっくり説明することができるし、教室で実験を見ながら、ははあとうなずくことができる。ところが、冷たい水の味がどんなものかということになると、もう、君自身が水を飲んで見ない限り、どうしたって君にわからせることができない。
さらに、こういうことも言える。
まして、人間としてこの世に生きているということがどれだけ意味のあることなのか、それは、君が本当に人間らしく生きて見て、その間いにしっくり胸に感じとらなければならないことで、側からは、どんな偉い人を連れてきたって、とても教えこめることじゃあない。
実際に自分が経験をして感じ考えることで「何が立派か」「何が正義か」といった答えのない事柄について自分なりの「信念」が生まれる。この信念を築き、それに基づいて良いこと・悪いことを判断し行動することが大事である。
③「実行力」と「精神力」が伴わない善良さは空しい
ナポレオンの一生がなぜ感動を与えるのか。それは彼がいつでも積極的で、まるで疲れを知らないかのようにどんな困難な立場に立ってるも、不屈の闘志と王者にふさわしい誇りを持っていたから。
けれども、実行力といい、活動力といい、すばらしい精力といっても、それは、一体なんだろう。それは、人間が何かあることを成し遂げてゆく力ではないか。この世の中に何かある目的を実現してゆく力ではないか。
何かを実現していくために必要な「実行力」とそれを支える「精神力」をナポレオンは持っていたから、こんなにも人を魅了している。
一方で、多くの人はそれが伴わない。
君も大人になってゆくと、よい心がけを持っていながら、弱いばかりにその心がけを活かしきれないでいる、小さな善人がどんなに多いかということを、おいおいに知ってくるだろう。
人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しいことが多いのだ。
短い一生のうちで非凡な成果を残し人々の心をうつために「実行力」と「精神力」を養う必要がある。
④ 自分の過ちに向き合うことで正しい道を歩む
取り返しのつかない過ちをしてしまった時、人は心から傷つき苦しむ。
そうだ。自分自身そう認めることは、ほんとうにつらい。だから、大抵の人は、なんとか言い訳を考えて、自分でそう認めまいとする。
だけど、それには理由がある。
僕たちが、悔恨の思いに打たれるというのは、自分はそうではなく行動することもできのに、と考えるからだ。それだけの能力が自分にあったのに、と考えるからだ。
人は「何が正しいか」を知り「正しくありたい」と思うからこそ、自分のしてしまったことを悔いる。
だからこそ、過ちをおかした時は逃げずに苦しい思いと向き合い、そこから「正しい道に従って歩いていく力」を見い出して、乗り越えなければいけない。
読んで思ったことは...
● 自分はちっぽけな存在である、というところから考えてみる。
自分の現在位置を改めて俯瞰して見ると、とてもちっぽけな存在だと気づく。
長い人類の歴史から見れば、ほんの短い時間を生きているだけだし、先人が苦労して積み上げてきた文明に乗っかって生きているだけ。
周りを見渡してみれば、身の回りの物は全て自分以外の誰かが作ってくれたもので、自分がこの世界に生み出したものなんてほとんど何もない...。
こう考えると空しい気分になりそうだけど、この現在位置を正しく認識することが実はとても重要なんだ、とこの本は言っています。
人は一人で生きられるものではなく、先人も含めた誰かの「おかげ」で生きていられる。だからこそこの事実に感謝し、「自分も誰かの役に立つことをする」「後世のために何かを残せるようなことをする」という信念と実行力を蓄えなきゃいけない。
家族とか友達とか会社の中で「自分はちっぽけな存在である」と現在位置を捉えなおしてみると、そんな風に考えや行動が変わってくる気がした。