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Vol.2-#45 物語のおわり

パリ・シャルルドゴール空港。
旅が終わり、日本に帰国する日がやってきた。

「さぁ、帰ろう。」
夫は言った。だがジャミ子はテコでも動かなかった。まだ帰るわけにはいかないのだ。

理由はスタバのご当地マグカップ。
プラハとパリ、今回訪れた二つの都市のマグカップを揃えたかった。

街を歩けばそこかしこにあるスタバなのに、ジャミ子はまだ、パリでスタバに行けてなかった。
「帰れない、、わたし帰れないの、、」

プラハではホテルの目の前にスタバがあったのでゲットしていた。もしプラハでゲットしていないのであれば簡単に諦めがつく。しかしゲットしてしまったのだ。ジャミ子はプラハでカップを!

プラハのマグカップ

空港は最後のチャンスだった。空港には必ずと言っていいほどスタバがある。ない訳がない。確信に満ちた表情でイミグレーションを終えたジャミ子の表情がどんどんと曇っていく。
ーーーーーーない…。スタバがない!

これまで一人で生きてきた人生と、家族を得たこれから先の人生。ジャミ子にとってスタバのご当地マグカップは新生活の象徴だった。夫とペアで使いたかったのだ。

それなのに夫はサラリと言った。「仕方ないね。」


仕方……ない?何気ない夫の一言に、ジャミ子は静かに絶望する。あのマグカップは二つ揃って初めて成立するのだ。一つだけでは意味がない。

搭乗時間が迫ってきた。
「さぁ、帰ろう。」夫はもう一度言った。


「わたし、あなたと帰れない…」

しぇーーーッ


ジャミ子は言葉を続けた。
「この先の人生をあなたと歩んでいく覚悟が持てない。結婚するのが早すぎたわ。」

「スタバのカップを買えなかった事は、私にはまだ早いという啓示だと思うの。」
ジャミ子はそう言い、航空券をビリビリに破いた。


ジャミ子の物語はここで終わる。

23歳のジャミ子は今後、どのような人生を送るのか。物語は終わっても人生は続く。
この先もジャミ子はきっと、サバイバルな物語を紡いでいくに違いない。

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