Vol.2-#35 ハネムーン紀行②
勘違いの激しい男と我慢ができない女
チェコ。
チェコはEUに加盟しているものの、通貨はユーロではない。チェココルナだ。チョココロネではない。
それなのに夫は「チョココロネ」と言う。短縮する時は「コロナ」と言う。
ジャミ子はあえて突っ込まなかった。可愛いではないか。
さて、チェコの首都プラハ。やはりプラハ城に行くべきだろう。
夫婦はガイドブックを開いた。プラハ城には見所が多くあるらしい。
○聖ヴィート大聖堂
○聖イジ―教会
○旧王宮
○黄金小路
○衛兵交代式
など
ガイドブックには城内のマップが描かれており、それぞれの建物に上記の名前がふってあった。しかしどの建物にも「プラハ城」という名前がふられていなかった。
この事からジャミ子は、「プラハ城」という城の建造物はなく、この敷地内全ての総称が「プラハ城」なのだと理解する。
しかし夫は違った。いわゆる「城」がどこかにあるのだと思っていた。
(夫)「プラハ城っていうのがまたどこか別の場所にあるんだろうね」
(ジャミ)「ん?ここってプラハ城でしょ?」
そんな噛み合わない会話をしつつ、二人はビュースポットである南搭を上る。細く長い螺旋階段をひたすら上る。ゼェゼェと息を吐きながら夫は言った。
(夫)「ここはプラハ城っていうのとはまた違うんだろうね」
(ジャミ)「ここはプラハ城でしょ?」
長い階段を上りきり、やっと頂上に着いた!
先ほどまで居た広場には豆粒ほどの人々、遠くにはオレンジ色の屋根が連なっていた。その風景を見ながら夫は言った。
(夫)「このどこかにプラハ城があるんだろうね」
(ジャミ)「・・・」
ジャミ子はついに爆発した。
「ここがプラハ城や!このエリア一帯がプラハ城なんや!」
「そしてチェコの通貨は“チェココルナ”!!“チョココロネ”は私が小ニの時に好きだったパンの事だし、“コロナ”は感染症やー!!」
眼下に広がるプラハの街に向かってジャミ子は叫んだ。