Atomic Heartがリリースされる前後の事件まとめ
Atomic Heartのリリース過程を調べました。公式の紹介文だと、ちょっと欲しかった情報が抜け落ちていて、「俺は真実を知りたい」と思いました。
あと発売にあたって色々と事件もあったので、それも軽く書いておきたいと思います。
トレイラー動画が話題に
2017/07/22、下記のトレイラー動画がMundfishによって公開されました。
全体的にロシアテイストの美しいグラフィックは、多くの人に衝撃を与えました。
僕が何を見て知ったのか、遡っても思い出せなかったんですが、automatonというサイトの何らかの記事を見た?のかと思われます。
記憶だと2020年前後ぐらいに知ったような気がするので、↑この記事より後の気がするんですが、うーん見つからない。
この時期は2019年を発売予定として置いていたそうです。
Founder edition
2018年4Qに、Founder editionというバージョンを発売していました。正式発売となった今はもちろん売っていません。
基本的には2019年4Q発売予定だったゲームのベータ版への早期アクセスが特典でした。
3段階のプランだったようで、最上級プランの「ATOMIC FOUNDER’S EDITION」(90$)では、基本的な特典に加えて、ゲーム内で支援者の写真と名前が壁に展示される、という珍しい特典がありました。
この特典は、「Kollektiv Complex」という名前の施設がゲーム内にあって、そこに展示される形で実現しました。
ただ肝心の早期アクセスが実現しなかったようで、Founder editionの購入者も普通の購入者と変わらないタイミングになったようです。
一応、販売委託されているBeepのFAQの中で
という説明はあるんですが、Founder editionの購入者に対してはほぼサイレントで特典消失した形になっており、これは良くない対応だったと思います。
リリース延期&延期
2019年4Qは間に合わず、リリースは延期になりました。
MundfishはAtomic Heartのスピンオフとして、Soviet Luna Park VR というタイトルも開発してたんですが、2018年末には発売中止にして、Atomic Heart1本に開発リソースを集中させました。
ベータアクセスも実現できず、「トレイラーは立派だったけど、発売までいかないのでは?」という、インディーゲームによくある流れになるんじゃないかという見方も増えてきた頃に、Mundfishは2022年にまたトレイラー動画を出しました。
この動画中で2022年#######ber発売、と発表しました。9〜12月のどこかで発売するぞ、という風に解釈できる内容でしたが、結局2022年発売は間に合いませんでした。
実際は2023/2/21に発売となりました。PlayStation日本版はさらに遅れて、2023/4/13。
ただこの延期に関しては、Mundfishという開発会社の規模を考えれば全然仕方のないことだと思います。
ウクライナ問題とMundfish
これも触れざるを得ないでしょう。
2022/2/24、ロシアがウクライナに侵攻しました。
タイミング的にはMundfishが2022年の発売予告トレイラーを公開した1, 2週間後でした。
「Atomic Heart」は内容的にガッツリソ連を扱っているゲームで、しかもグローバル販売しようとしていたので、世界的にロシアに経済制裁を強める情勢になったのは完全な逆風でした。
ロシア政府に個人情報を流してるとか、プーチンとつながりがあるとか色々疑惑は出たんですが、それはまあ風評被害なのかなと思うんですが、一つ大きな疑問として、「Mundfishってロシア企業なのか?」というのをまず僕は思いました。
公式サイトを見ると、「キプロスで創業した会社だ」という説明があり、LinkedInの本拠地もキプロスになっています。
https://www.linkedin.com/company/mundfish/
Mundfishの説明を鵜呑みにするなら、キプロスを本拠地とするゲーム開発会社で、グローバルに人材を採用している、ゲームはソ連をテーマにしているが、別にロシア企業ではない、という風に見えます。
ただ調べていくと、これはやはり嘘っぽくて、少なくとも2018年頃はロシアのモスクワに拠点があった形跡があります。
CEOのRobert Bagratuni氏は、Mundfish創業前にMail.ruというロシア企業に3年9ヶ月勤務しています。その他にも「ロシア」とのつながりは色々あります。
ただだからといって、「ロシア政府」とつながってたかと言われると疑問で、そもそもこの規模のインディーゲーム会社が政府とつながってるというのはちょっと想像しがたいと個人的には思います。
真実はわかりませんし、ウクライナ侵攻についてはこの記事で扱うには重すぎる政治的問題です。確率は低いですが、なりふり構わなくなったクレムリンがMundfishに「ロシアのイメージアップのためのゲームをつくってグローバルに流行させろ。かつその売上は国家に寄付しろ」と命令を出してた可能性もないとは言えません。
ただ僕の推測としては、Mundfishとロシアの関係については下記の感じじゃないかと思っています。
Mundfishの創業者たちはロシアと関係が深い人々で、そのバックグラウンドもあってAtomic Heartの開発をはじめた
キプロスに拠点を移したのは事実で、それがゲーム開発の事情なのか、ビジネス上の理由なのか、政治的な要因なのかは不明
ウクライナ侵攻とともに、ロシアとの関係はなかったことになった
Mundfishは「政治的には中立」という立場を明言している
「中立」であって、「反対」ではないのは、ロシアとの関係が深いというバックグラウンドからだと思われる
ウクライナ侵攻自体には反対でも、ロシアに対しては全否定したくない、というのがどこかあるのではないかと思う
今回の戦争に関しては、一般のロシア国民のコンセンサスで決まったものではないので、ある種の板挟み状態になってるのではないか
これは各種ニュースサイトを情報収集して、僕が勝手に思ってる推測です。推測ですが、このゲームの売上がロシア政府の軍資金になる、みたいな陰謀論よりかは、やや信憑性あると思ってます。
ただ、Mundfishの情報の出し方も、嘘はついてるので、オープンではないなと思います。Atomic Heartの発表に関しては、断片的に情報出して、謎めいたゲームという雰囲気をつくったのはすごいよかったんですけど、企業情報は正直に出して欲しい気がします。
Founder editionの件もそうですが、この辺の対応のヘタさによって、会社に対して不信感を持った人は一定数いそうです。たぶん、事実は企業の情報発信がヘタなだけなんだとは思います。
あと英語圏の会社じゃない、というのも結構ある気します。USのスタートアップは普通にワチャワチャしてんのを母国語で発信するだけですみますけど、非英語圏はグローバルに展開しようとすると一回変換しないといけません。これは日本企業もそうで、しんどいですよね。
発売前にゲーム内容がリークされる事件
発売の数日前の2023/2/19にゲーム内容がリークされる、という事件もありました。
つくづくセンセーショナルな話題に事欠かないゲームだな、と思いました。
ウクライナからのデジタルプロバガンダ認定事件
日本市場はまだ発売してないですが、2023/2/21にグローバルで発売開始しました。トレイラー動画公開から約6年、遂にこのときが来ました。
2023/3/3、ウクライナのデジタル改革担当大臣?のフェドロフ氏がAtomic Heartの販売停止を求めて、Sony, Microsoft, Valve(Steam)に対して声明を出しました。
このツイートから1ヶ月程経過しましたが、各プラットフォームは黙殺してるので、販売停止にはならなさそうです。ウクライナ侵攻自体は完全にロシアがただただ悪いので、国際社会が一体化して対抗していかなければいけないとは思ってるところなんですが、とはいえ侵攻前から開発されてたゲームを販売停止にするのは違う気がしたので、黙殺する流れになったのは、個人的には良かったと思います。
ゲーム内に先住民差別表現があった事件
発売後の事件はもう一つあって、ゲーム内に差別表現があって、Mundfishが謝罪しています。
セーブ部屋に「ヌー、パガジー!」という昔のロシア製アニメが流れているんですが、昔のアニメ故にちょっと現代から見ると先住民差別表現があったみたいです。
この件に関しては、謝罪して、アップデートで当該アニメの削除という対応になっています。
Xbox版に日本語字幕がなかった事件
日本語字幕がなかった事件もありました。
これもアプデで修正。政治的問題とか差別問題とかと比べると、ちょっと小粒なネタかもしれませんが、一応日本に関わることということで。
事件じゃないけどゲーム内のソ連要素の解説
わたくしのゲーム実況内では到底拾えなかったんですけど、ロシアに詳しい人が見ると、ゲーム中には山ほどソ連・ロシアネタが出てくるみたいで、↓の記事はその辺を細かく解説してくださってて、へえ〜と思いました。
(了)