映像化希望BL①「スメルズライクグリーンスピリット SIDE:A/B」
「おっさんずラブ」「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」など、BL映像作品のヒットが定着しつつある。腐女子もテレビ局も浮足立つ、win-winな世界の萌芽期にまさに直面しているだろう。
2021年4月からは「絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男」(pixivにて連載中)もドラマ化が決定。今後、ますます各局でのBL作品映像化は増加していくことが予想される。
ちょっと待ってくれ~~~~~~~~~~!!!!!!!
どの原作も面白いよ、わたしも好き。特に当たっているのは、ライトな雰囲気で気軽に楽しめて、いわゆる腐女子でない一般視聴層も十分楽しめる可能性がある。とにかく、王道のエンタメ路線をさらう構造で見やすいのだ。そのおかげで、徐々にBLというジャンルが市民権を獲得する一歩を踏み出している気がする。
一方で、脳裏をよぎる、とある考え。
「BL作品って・・・もっと”いろいろ”あるよね?????」
これは、いわゆる色気ムンムンな濡れ場たんまりの作品を見せろと言っているのではない。
ライトなコメディタッチの作品が映像化しやすく、実際に売れた事実もある。だが、その方向性だけを未来永劫追い求めることはできない。なぜなら、エンタメにとって最もやっかいな敵は「飽き」だから。
世間がBLドラマブームの波に乗っている今こそ、また違った雰囲気の作品を提供して「幅を広げる」ことはエンタメ業界のそれにも貢献するだろう。
つまり
「もっとこんな作品もあるよ~~~~~!!!!!!!! コレとかめっちゃ泣けるし!!! コレは道徳の教科書に載せてもいいレベルだし!?!!! コレは少女漫画並のさわやか胸キュンだよ男性同士ってだけでね~~~~!!?!!!!?!!!!!!!!」
って言いたい。それだけ。テレビ東京のプロデューサー様、テレビ朝日のプロデューサー様、どうか目にとまってください。(他局さんは本当にBL好きなPと演出がいない場合は仕上がりが怖いのでご遠慮ください)(でもTBS「MIU404」塚原あゆ子監督×新井順子P×野木亜希子先生は本当に信頼できるのでどうかよろしくお願いします)
その初回として挙げたいのが
「スメルズライクグリーンスピリット SIDE:A/B」
知る人にとっては「コイツ、1回目でこの作品を挙げるなんて”本気”だな」「これはBLじゃねえぞ!」「これを映像化できるほど日本のBL映像界が醸成されているか疑問」とザワつくかもしれない。
それでも私は、これを真っ先に挙げたい。
なぜなら、「日本の”BL”は文学たりえる教養でもある」と証明したいから。
これまでの作品のレベルが低いという意味ではない。むしろこれまでの作品がエンタメとして楽しかったからこそ、そろそろ次の段階に進んでもいい。
かつて”漫画”自体が子ども向けだとバカにされ、大人の趣味として受容されない時代があった。そこから、徐々にジャパニーズカルチャーとして品質が認められ、ストーリーの深さにうなり、時に感動の涙を流して、生きていく中での学びがあると人々が理解し始めた。
この「スメルズライクグリーンスピリット」には、BLジャンルをそんなイチ文化として昇華できるだけのテーマがある。
あらすじはこうだ。
ド田舎の学生・三島は同級生からイジメられていた。理由は三島が“ホモっぽい”から。実際に男性が好きな三島は抵抗もせず、隠れてする女装だけが心の拠り所だった。ある日、三島が屋上にいると、以前なくした口紅を持ったイジメグループのリーダー・桐野を目撃する。彼は三島の使った口紅を、自らの唇に塗ろうとしていて…。この世界のどこかで“本当の自分”でいられる場所を求めた少年達の、今、一番伝えたい青春ストーリー。
これを読むと、「えっ…イジメから始まるのはちょっと…」「なんか辛そう、見たくないかも」と思うかもしれない。
ばかやろう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
たしかに、ページをめくって最初は怖気づいてしまうかもしれない。ただ、第1話、2話と進めていくうちに「あれ・・・? これ、重いだけじゃないな」とコメディチックな描写で救われることに気付く。
そんな救いに胸をなでおろし、第3話を読むと、主人公・三島とイジメのリーダー・桐野の関係性がまるで一変するのだ。
言ってしまえば、この《2人の少年の成長物語》に値するのだが、それぞれの進む道が本当に泣ける。「なぜコレを教科書に載せないんだ」「LGBTQが~とか頭で理解するな、コレを読んで心で理解しろ」と文部科学省に署名を提出したい。そのくらい、性認識の描写が秀逸なのだ。
この作品が仮に映像化され、最終回(もしくは劇場のラストシーン)が流れたとき、それは世の中のBLに対する意識が一変するときだと確信している。
ただ、映像化にあたってどうしても注意しなければならない点がある。
それは「演出が暗くなりすぎないこと」。
例えばドラマ「MIU404」(TBS系)。救いのない事件原因と展開は、一歩間違えれば鬼のように暗い作品になってしまうところ、あの小気味いい演出と演技と音楽で抜群のバランスを保っている。(演出だけじゃないんかい)
この「スメルズー」も、一歩間違えれば痛々しくトラウマ級の作品となってしまいかねない。そこを、演出や役者の演技やエンディングで、軽やかさと切なさを表現してほしいのだ。
また、キャスティングについても
・三島=女装の似合う女顔、きゃしゃな体つき、毛はサラサラ体質
・桐野=クールな釣り目、背は三島よりも大きく、男らしい体つき
の演技力ある若手であってほしい。ここを忖度で崩されると、本当に話が変わってしまう。逆に、このキャスティングができないならまだ実写化すべきでないといっても過言ではない。
もしこの作品化が成功したら、本当に一世風靡も夢じゃない。そう思えるくらい、この原作には人の心を動かす、いや、心を突き刺して二度と元の人生観には戻れないような力がある。
映像化のえらいひと、愛をもって、よろしくお願いいたします!!!!!!