屑の結晶(ネタバレ無しレビュー)
センセーショナルな帯惹句とプロローグに触れて、まずは直近に起きた事件を思い出す。“クズ男”と称される人物の年齢・職業(無職)・ルックス等も、ニュースやワイドショーを賑わせているその事件の容疑者を彷彿させる。「嗚呼この話もサイコパス物なのかな…」とテンション低めに読み始めた。
…が、そうは問屋が卸さないのが、まさき氏の真骨頂。氏の作品に接するのは2度目だが、怖さがじわじわ忍び寄る初見の作品と同列に考えてしまっていたために、よい意味で肩透かしを食らった。
ひと言で表現すると“センチメンタル”。小〜中学生の頃に読んだジュブナイルの世界に近い。この歳でジュブナイルを読まされても…という気がしないでもないが、それなりに切なさは共有出来た。
加齢と共に猟奇的なホラーへと嗜好が偏重しているが、今作には物足りなさよりも寧ろ懐かしさを感じた。また、モデルになったと思しき場所や建物が何となく推察出来るのも(ロケ地マニアとして)楽しい。現実が小説を凌駕してしまった今だからこそ、このようなフィクションらしいフィクションにホッと出来るのかもしれない。