誇り高き騒音
5月31日、バックドロップシンデレラの無観客配信ライブが池袋Admで行われた。
チケット売り上げ目標として「ゼップ超え」を掲げ、あゆみさん以外のメンバーがライブ前日までにそれぞれツイキャスで宣伝生配信を実施。
なお、あゆみさんは極端にパソコンが苦手なようで、渉さん曰く「ストレスしか溜まらない!」として、放送の実施まで漕ぎ着けられなかった。
(頑張ったね!!!)
残念ながらゼップ超えはならなかったものの、当日は「O-EAST超え」の視聴者数であったようだ。
配信がスタートし、あゆみさん以外の3人が姿を現す。
いつも通り、渉さんの弾き語りからライブがスタート。
(あれ弾き語りっていうか、前口上って感じだよね)
途中であゆみさんの笑い声が入ったのが何か良かった。
素直な感想として、楽しかった。
彼らのライブにおいて、モッシュやサークルモッシュ、シンガロングは、「欠かすことのできない要素」だと思っていた。
個人的な感想だが、上記のそれらはあくまでも「大きな醍醐味の1つ」であったようだ。
そういった「リアルな感触」が一切ない、配信ライブというものであっても、十二分に彼らの魅力は伝わった。
渉さんが途中のMCで配信ライブへの不安、というか感覚が違うことへの戸惑いを話していた。
お客さんがいる有り難みがわかった、とも。
結果的に「お客さんの反応はわかんないけど、俺らは楽しい!」と完全に前向きになっていた。
きっと、ツイキャスを見ていた人達の「オンラインコールアンドレスポンス」「オンラインシンガロング」「オンライン…(否っ!)おおーーっ!?」(伝われ)のおかげだろう。
彼らの戸惑いと相まって、シュールさが際立っていたが。
個人的にあの手のシュールさは好きなのでとても良かった。
あゆみさんがウォールオブデスを指して、ソーシャルディスタンスって言ってたのもかなりツボ。
ライブ再開したら色んなバンドが言いそう。
そして1番最初に言ったのは間違いなくあゆみさんだと思う。
彼らの歌が、今のバンドが置かれた状況と妙にマッチしている部分が多い気がして、何だかいつも以上にグッと来た。
特にライブ序盤で演奏された「Coolです」の歌詞がいつも以上に、というか今までとは違う形で心に響いた。
愛するべき騒音でいよう
秘かな抵抗と行こうぜ
新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための施策が、色んな方向からライブハウスの営業に制限を掛け、結果的にバンドの活動にも制限を掛けている。
そんな中、少しでも出来る事をと色んなバンドがライブハウスで無観客の配信ライブを行なっている。
言わずもがな、バックドロップシンデレラもその一員。
彼らの「愛するべき騒音」も配信ライブという「秘かな抵抗」を通じて聞くと、いつもと違う聞こえ方をする。
あゆみさんがMCで「ライブ中にお客さんの顔が豊かになっていくのが好き」と言っていた。
今年2月のZeppTokyo公演でも「お客さんがワクワクしているのが嬉しい」と言っていて、本当に観客の前でライブをするということに対して、喜びを噛みしめているんだなとしみじみ思った。
「こんな世界になっても楽しいことをしようと思って、その最後尾でいいから走っていきたい」
「僕たち4人はまたあなたの世界の中に、心の中に飛び込んでいく」
そう言って始まった「サンタマリアに乗って」。
曲中にあゆみさんが歌うのを一瞬止め、天を仰いで「くそーーーーーーーーーっ!」って叫んだのが、バンドやスタッフ、ファン全員の声を代弁しているような気がして、何というか、泣けてしまった。
「月明かりウンザウンザを踊る」の曲中であゆみさんが言っていた。
「皆さん想像してください。今までよりもずっと楽しいことを。」
「僕たちちっぽけな4人とやっていこうよ。踊って行こうよ。笑い飛ばしていこうよ。」
「新しい世界へ行こうぜ。」
きっと、リアルなライブで聞いてても感動しただろう。
でも、今現在必死で「今までよりもずっと楽しいこと」を考えている人達が見せてくれた、「新しい世界」の一部がこのライブなのだと思うと、この言葉は画面越しで聞くからこそ意味があったように感じる。
こういう前向きな言葉も、普段のライブでは感じることがないだろう悔しさも、配信ライブという形だからこそ出てきた感情の一部なんだろう。
それを受け取れただけで、今回の配信ライブを見た価値はあったなぁと思った。
池袋Admは6月から「休業期間の3rdシーズン」に突入する旨、発表があった。
6月から営業を始めているライブハウスもあるが、各自治体のガイドライン通りの営業じゃそもそも経営が成り立たんみたいなところも多い。
ライブハウスを支えてきた、ライブハウスに支えられてきた人間にとってはまだまだ厳しい時期が続きそうだ。
いつかまた一緒の空間で「愛するべき騒音」に包まれながら「今までよりずっと楽しいこと」を「ちっぽけな4人」と出来ますように。
バックドロップシンデレラの音楽という、愛するべき、誇り高き騒音をまた直接、聴けますように。
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