箸くれ女
数年前、私は大手企業内のオフィスでお弁当の販売をしていた。
ある時、身長160センチ位で細身、ショートカットが似合う北川景子さん似な女性が買いにきた。
と、思った。
女性は私の顔を真っ直ぐみながら
「お箸をいただけませんか?」と聞いてきた。
私は、人の顔を覚えることを特技としている。
(この人、今まで買いにきたことないなぁ。
でもまぁ、ごくたまにお弁当持参でお箸だけ忘れてきてしまいもらいにくる人もいるので、あげるか)と
思いながら「どうぞ」と差し出した。
お弁当数より多めに箸の予備を持ってきていた。
そして翌日。
北川景子似が音も立てずに
スゥーーっと現れた。
「お箸をいただけませんか?」と言う。
(え、デジャブ?かな)と思いながら
「えっと。。。」
2日くらい箸忘れちゃうドジっ子もいるか
むしろ
ドジっ子っぽい愛嬌を全面にだし
人懐っこい眼で舌までだしたら
躊躇なくあげられるのに(そんな大人はいない)
箸の一本や二本
持ってけドロボーってなかんじで
彼女は、凛とした佇まいの北川景子。
「お箸をくれるのは当たり前ですよね?」と目で訴える
私の中のなにかを見透かされているような
催眠術でもかけられているような。。
またしても
お箸を差し出してしまった。
北川、お弁当を買わずに二日も続けて箸だけもらいに来やがったズーズーしい女。と悪魔が。
でも、お箸がないと食べられないもんネと
私の中の天使が呟いた。
私は考えた。
もしもまた北川が来ても
3回目は、あげられないな
お箸は10円位すると聞いていたし
お弁当の付属品なんだし
タダであげたくないっ!
私は負けたくない!
美人だからってなんだい!(ただのひがみ)
そして3日目。やはり奴はきた。
もうすっかり常連の顔で
スゥーーっと音も立てずに
私の前へ
真っ直ぐ私を見ながら
「お箸をいただけませんか?」
私には秘策があった。
「ごめんなさい~
今日から、お弁当の数だけお箸を持ってきてるんですよ( ^Д^)」
だからあげられないんですぅぅぅ
私は、勝ち続けるのだ。笑
(私は北川景子さんは大好きです。言わずもがな)