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憧れの人

憧れの人に会える機会は限られている。
そう感じたのはつい最近のこと。いい大人になってから。
会いたい時に憧れの人が亡くなっているパターンもある。わたしにとっては岡本太郎さんがその一人。
だから、会いたい人に会いたいときに会いに行く、を最近すごく意識している。

今日もまた一人、憧れのあの人に会ってきたのだ。日本で最初のテレビジョン俳優、黒柳徹子さん。世界中で翻訳され、戦後最大のベストセラーといわれる『窓際のトットちゃん』の著者。
わたしは徹子さんを尊敬している。『窓際のトットちゃん』を母が薦めてくれ読んだまだ幼い頃から。当時のわたしには辛いエピソードもあったけれど、〝わたしもわたしでいいんだ〟と思えたことをぼんやりと覚えている。そして小林校長先生(トモエ学園)のような素敵な、全肯定してくれる先生に出会えなかったことを悔しがり、なんとなく、この先も出会えなそうなことに絶望した。(この予感は後々的中する)

話は変わるが、一ヶ月前、珍しく風邪をこじらせ寝込んでしまった。熱はないのに、喉が絶望的に痛く、何もする気が起きない病。2日間だけ家事は全放棄、我が家で“隔離部屋”と呼んでいる部屋に篭り、テレビ朝日系で2017年に放送された『トットちゃん!』を全話一気に見返したのだった。

徹子さん熱が高まっているある日、SNSで映画『窓際のトットちゃん』の試写会のお知らせが流れてきて、一度目はふーんとスクロールする手が止まらなかったが、脳みそからSTOP!の指令が。
慌てて戻ってよく読んでみたら、試写会当日はなんと徹子さんご本人が登場とな。
会いたい人に会えるチャンス!とまたまた脳みそからのお達し。ありがたや。
急いで名前や住所欄を埋めていくと…どうして応募しようと思ったのですか?という突然の質問欄。え!と驚き、直様わたしは今、試されていると思い、どれほどに徹子さんを尊敬し、大好きかをドバーっとしたためたのです。そして何度も読み直し誤字脱字チェックを終え、応募ボタンを押す際には〝なんだか当たりそうな気がする〟と確信めいたものを感じたのです。
当選発表日は朝から何度も何度もメールBOXを確認しては、迷惑メールBOXに移動して…の繰り返し。ようやくメールがきたのは16:02!
当たると思ったものの、「映画『窓ぎわのトットちゃん』完成披露試写会 ご当選のお知らせ」の文字が見えたときには、やったーーー!やっぱりねー!と叫びました。

そして迎えた当日。
ドキドキしながら六本木ヒルズのTOHOシネマズへ。貰った整理券は「1列 ◯◯番」…えー!1列目?まじかー!心臓バクバクしながら1列目へ。そしたら、あれ?ん?1列目ってムービー席って座席の貼り紙に書いてある…⁇⁇舞台上の造り込みパネルが目の前…これじゃぁ徹子さんもといスクリーンも見えないのでは?なんだかワクワクの実がしゅるしゅるしぼんでいくのが自分でも分かりました。
だけどね、大人しく座る私じゃないのよ。ただじゃ諦めないのよ。わたしは通路に立ってる黒スーツの係員さんに確認しました。

わたし 「すみません…これ1列目って書いてあるんですが、あちらで合ってますか?」
係員 「(ハッ…)あのですね、これは1列目ではなく、アルファベットの“I”ですね。分かりにくいですね〜すみません」
わたし 「………(恥ずかしくてしにそう)…あらま!“I”なんですね、“1”だと思い込んじゃって…すみません…お騒がせしました〜〜〜(フェードアウト)」

勿論、正しい席に着くまで一切振り返ることなく着席。くすん。自分のおっちょこちょいぶりを呪うよね。

さて、徹子さんは素敵な花柄のワンピースを召してらして、自力で歩き、沢山たくさんお話ししてくださいました。感動。
お風邪をひいてしまったのか、始終鼻水をハンカチでぬぐっていて、息がゼェゼェ苦しそうだったのが少し心配。

本編に関してはネタバレになってしまうので割愛するが、徹子さんの本を読んだ方なら、あ〜!となるシーンが散りばめられていて、中盤以降はマスクの中が湿るほど泣いてしまった。

人は本当の大人になると、幼少期のことを残したくなるのだろうか。宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」
しかり。その話はまた今度。

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