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第5講:おとうさん(お倒産)

会社に入ってこのかた、こうした特殊業務というか荒れ場修羅場を経験してますと、日常のささいな事にも過敏に反応するようになります。通勤途中で気になる場所を発見した私は、急遽実地調査(業界用語で「実調」という)を開始。一応の結論を見ました。今日は、跡地から会社倒産を判断する自己流の解釈法を一部ご披露しましょう。


或る朝

そこは、運送会社であった。昨日までは、ちゃんと人がいて、トラックが出たり入ったりしているという、ごく普通の運送会社であった(…らしい)。ところが、降りつづけた雨があがった朝、私がそこを通りかかると運送会社のトラックはきれいさっぱり忽然と姿を消していた。「倒産かっ?」と、商売柄色めきたつわたくし・・・会社に行ったら端末で名寄せして、債権あるかどうか確認せにゃならんなあと思っていると、玄関には一枚の紙が貼り出されているなどますます怪しい。


この会社は本当にツブれたのか?

さて、私はこの会社が本当にツブレたのかどうか判断に迷いました。敷地の具合がこんな感じだからです。

①事務所(遠景と近景)

②車庫 
 
全体としては、わりかしきれいに整理されておる、という印象です。潰れて夜逃げする会社というのは、こんな風に整理されていることはないんです。夜逃げ会社というのは、事務所その他会社施設内から金目のモノだけ運び出して、あとはそのままほったらかしてますので。経験上、これは夜逃げにしては整理されすぎだという気がしたわけです。
しかし、②の写真をご覧ください。ドアが壊れて、そのまま放置されてます。それから、入口付近には雑多な部品・機械類が放置されている所にに”怪しい”という債権者稼業で培われた嗅覚を刺激され、ちょいと調べてみようかと思って中へ立ち入ったところ、外れたドアの蝶番部分はサビており、かなりの期間にわたって修理されていない事がわかります。「ドアの修理もできんのかぁ?」と、ますます怪しい。


詳細検分

玄関へ回って、電気のメーターを確認。通常の夜逃げ(どんなじゃ(^^ゞ)の場合、いきなりほっぽりだして逃げてくわけですので、当然東京電力へ連絡する余裕なんざないわけです。あるいは、あったとしてもカネがなきゃ電気代精算するのも難しいんで連絡はせんでしょう。ところが、電気メーターの下には、導線の赤銅色も鮮やかに引込線をぶった切った跡がありまして、
「ああ、倒産ではないのだな」と判断しました。
導線が切られているということは、事前に東京電力へ連絡してあり、事務所の片付けが終わったのを確認した電気配線技師が電柱の導入口の回路を切ってから、電気メーターへの送電線を切らなきゃできんワザです。だいたい、夜逃げするような会社が電気料金の精算までするハズはありません。仮にいきなり電気メーター口の導線をぶった切ったりしていたら、おそらく死人が出ていたでしょう。


結論

そして玄関先で貼り紙を発見。

「下記へ移転しました…」

と、いうわけで。人さわがせな朝だった…って、勝手に自分でさわいでただけか…。


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