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第77講:戦場れぽうと
どうも、最近軽~い話題(ゑ?^^;)が続いておりますので、たまにはちゃんと仕事しとる場面をお届けいたしましょう(^^ゞ
発端
もともとは、他人の案件でありました。車のリース契約の連帯保証人に残金の請求をしたら「ありゃあ、欠陥車だ(-_-メ)」ということで支払を拒否。地方都市の裁判だから最初は最寄の支店の者に行かせていたのですが、どうも当事者全員がリースとクレジットの区別がつかずにいて、しまいにゃ「販売店の監督責任がどうしたこうした」という、本来あり得べからざる展開になってしまいました^^;
そして支店の担当者から「まけそうなの(;_;)」という泣きが入って、荒場・特にリース料請求をやらしたら日本で6番目に強いあたくしが「どれよう(^^ゞ」と、出馬した次第(^^ゞ
展開企画
さて。その日の弁論では、リース物件の車が欠陥車だったことを被告が証明するとのことでした。しかし、リース契約というのは、借主が貸主へ借受証を交付してしまったら、以後発生した故障等についてリース会社は一切責任を負いません。この裁判。借受証はあるので、そもそも欠陥車かどうかでもめる必要がありません。しかし、支店のしろうとさんにそこまで要求するというのは酷です。そこで、あたくしは、この裁判の主眼が残リース料請求だという本来の話の筋書きに戻すという作業から始めることにしました。
開戦
裁;今日は、借主が来ているそうなんです
取;ほ~(^^)
借主は保証人の親父なんですが、とっくに破産しちまいました(^^ゞ
裁;参考に話を聞こうと思いますが、いかがですか?
取;請求原因の争いはありません。必要ないと思います(^^)
裁;では、やめときましょう(^^ゞ
いきなり強引な展開をいたしました。被告は連帯保証したことを認めていますし、リース料の未払金額も承知していますが、車が欠陥車だったから払う必要がないといっているだけです。しかし、あたくしの主張は「リースに抗弁あたわず」ということですから、借主の話も聞く必要がないのです(^^)
従って、現在この裁判は「未払リース料を払え」という請求に対して「欠陥車だから払わない」という抗弁が成立するかどうか、が争点らしきものとなっております。
裁;和解について考えはありますか?
債;車は不良品です。お金は払いません(-_-メ)
さあ。以後40分にわたる口頭弁論の火蓋が切って落されました(^^)/
抗弁できない理由
それを説明する前に、リース契約というのは法的にどんな契約であるのかという特性についてご説明いたしましょう。
ある会社が、車を入れるとします。預金・借金の別なく、買うと車が社有資産になって税金を請求されます。そこで、会社は車の所有権を持たずに契約期間中は車を独占使用できるリースで入れることにしました。
通常、銀行からカネを借りて車を買う場合には、会社は次の段階を踏まなければいけません。
1 車をえらぶ
2 カネを借りる
3 借りたカネで車代を払う
4 新車が届く(^^)
リース契約の場合、1は借手にやってもらいますが、2と3をリース会社がやります。つまり
1 借手が車をえらぶ
2 リース会社が、そこの会社へ車代を貸す
3 カネは借手に渡さず、直接車屋に払う
4 新車が借手に届く
と、いうことで・・・
① 借手とリース会社の間にはカネの貸借の契約があり
② 融資金を渡すところを車屋に払うから
③ 借手はおカネの代りに車を受け取る
④ リース料は、実は借入金の返済
そういう特性を持っているのが、リース契約なわけです。そして、月賦のくるまクレジットと違うのは、車の所有を目的としない、ということです。クレジットなら払い終われば車は自分のモノですが、リース車は払い終わってもリース会社のモノで、返還しなきゃいけません。また、レンタカーは駐車場に止まっている車の中から選びますが、リースは自分の使う車をわざわざリース会社に都度買わせるという大きな違いがありまして、この辺からしてリース料が車の使用料ではないことがお解りいただけると思います。
したがって。今回の被告の言い分は
① おカネを借りて入れた車が
② すぐ故障した
③ 借りたカネも払わん
と言っているのと全く同じなワケです(-_-メ)うそだと思うなら、銀行でおカネをかりて車を買い、同じことをやってごらんなさい。まちがいなく、塩を撒かれますから(^^ゞ
被告の主張が、まったくお門違いなのがお解りいただけましたでしょうか(^^ゞ
そして、リース業者というのは念には念を入れて「確かに、まともなのをお借りしました」という借受証を取っており、後日の紛争を予防しております(^^)
うちは、業界の通説に従ってリース料の法的性質を消費貸借的にとらえ、そういう契約条項を採用しとります。かつて存在した日本リースという会社は、リース料を動産の賃貸借の対価的に捉えていた、めずらしい会社だったのですが、そこは去年つぶれてしまいました(^^)
舌戦
被;申込したのと違う車がきました(-_-メ)
取;それは、契約書に書いてない車、という意味ですか?
被;いえ。それは契約書に書いてあるのです(-_-メ)
取;では、借受証にも書いてある車が来たんですね?
被;ええ。でも製造後半年経った物だったんですよ!
取;故障は車を受け取ってスグですか後ですか?
被;3週間ぐらいしてです(-_-メ)
あたしゃ車は無知なんですが、新車だって売れなきゃ製造後半年の車が納車されることもあるでしょう(^^ゞ念のため、隠し球的に持ってきていた借受証の日付を見ると「平成2年3月4日」と、書いてあります。但し、車の引渡はその8日前に行われていますので、納車日から借受証提出日までの間に故障が起こっていると、こちらがやばくなります。
取;【車は2月26日に引渡…】(-_-;)
取;【引渡から3週間後は、3月15日頃だ】(-_-;)
原告席で腕組みして計算していると、天井に雨漏りのシミが見えます(^^ゞそれはさておいて、ちょっとさぐってみることにしました(^^ゞ
取;すると、故障は3月中旬なんですね?
被;ちょうど、彼岸の墓参りで壊れたんですよ(-_-メ)
取;【大らっき~(^^)/】
借受証交付時に故障がなかったということは、正常なリース物件が渡されたということですから、うちはその後の故障について関知しません。この場合、車を渡したのは2月。壊れたのは、お彼岸(^^)うちは、関係ありません(^^)
休息のとき
しばらくの間、裁判官が被告に話を聞いております。あたくしもしゃべり続けで疲れちゃったので、原告席に座って話を聞き、休んでおりました(^^ゞ
被;修理に出して~(;_;)
被;受けとったらまた壊れて~(;_;)
被;また修理に出して~(;_;)
取;【不運なヒト・・・^^;】
裁;で、その後車はどうしたの?
被;乗る気がないから、取りに行きませんでした(;_;)
取;…【しょうがねえなあ】^^;
時計をみますと、午後4時。あんましのんびりしていると、飛行機に乗り遅れます(^^ゞぼつぼつ、借受証で口を封じてとどめをさすことにしました(^^)
取;借受証が、平成2年3月4日に出てんです(^^)
被;はあ?
取;これ「まともなの借りました」って証文す(^^ゞ
被;へえ?
取;故障したの、彼岸ですよね(^^)
被;ええ…^^;
さあ、いい感じに仕上がってまいりました。一時優勢だった被告が、みるみるうちに劣勢に回ってゆくのが手にとるようにわかります(^^)この、気の強い女性を落したかのごとき展開の快感が、もめる裁判の醍醐味。借金とりの、法務担当だけが味わえる特権であります(^^)引き続いて一気にチェックメイトを狙います(^^)
取;てえと、借受時点では故障しとらん(^^)
被;でも…(;_;)
取;違うの?理屈上そうでしょ?(^^)
被;・・・(T_T)
デモもストもありません。そうなんです(^^)
取;7条みてごらん
被;はい…(;_;)
取;借受後の故障は、販売店と解決する(^^)
被;あうう…(;_;)
取;書いてあるね(^^)
被;あい~(T_T)
無駄な抵抗
被;党の消費者相談で勝てるっていわれたっ!(;_;)
取;そりゃあ~た、相談員の質がわるいのよう(^^ゞ
やおら、法廷の傍聴席で破産した親父さんが「あっしが悪いんですう(T_T)」と、泣いております(^^;
裁;・・・【おいでおいで】(^^)
裁判官が、手招きしとります^^;
取;なんすか?^^;
裁;和解、できん?(^^)
取;和解調書だと稟議簡単でいいのよう(^^ゞ
裁;・・・(^^ゞ
こうして裁判官が、懇切丁寧に被告に理屈を説明され、和解をすすめてくださったのですが、被告は「うん(^^)」と言いません。
結局、1週間後に判決が言渡されました。判決文に被告主張が争点として採用されておらず、あたくしの「リースに抗弁あたわず」という弁論展開が、みごと花開いた圧勝となりました(^^)むろん、その後被告がさしおさえ攻撃をくらって悲惨な運命を辿ったのは言うまでもありません(^^ゞ