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第46講・債権者的快感

そういえば、例の「夕暮れの篠栗線」計画は、電話加入権はうっぱらったし家の入札期日も決まったしで、彼は着々と「ああ、かなしい」に向かって歩んでおります(^^)
そんなこんなで、どんな商売にも「こりゃあ、キモチいいぞ(^^)」と思う瞬間があるもんですが、きょうは債権者的快感をあなたに・・・


強制競売

本日の債務者は、新築なった取立人宅から車で10分ぐらいの所に住んでおります。わが自宅の完成を記念して、強制競売の申立をいたしました^^;
本日の物件は、たいへんな優良物件です。なんと、無抵当。ということは「家、売れちまうぞ(^^)」と言って、すきなように債務者にあそんでもらうことができます。


事情

さあ。さっそく、泣きの電話が入ってまいりました(^^)

債;こんにちは(;_;)
取;はい、こんにちは(^^)!
債;あのですね、判決出たときにですね・・・

おもしろいもんで、債務者というのは縷縷自分の置かれた現況をしゃべり、結論を一番あとでしゃべる傾向があるので「事情はあとから聞くから、どうしたいのだ?」と最初に釘をさしておかないと、いたずらに時間ばっかりかかります。
ただし、きょうは最初っからたっぷり会話を愉しむつもりですので、煙草を吸いながら聞き流しております(^^)

債;再契約の書類、子供がかばんの中に入れていて…
取;お子さん、いくつ?
債;小学生
取;おたくは、小学生にそんな紙持たすんかね(^^)?
債;・・・(T_T)
債;○○さん(うちの社員)に言ったら、もう担当変わってるってことで・・・
取;そのとおり。わしが、担当じゃ(^^)
債;今から書類送りますから、なんとか…
取;お断りします(^^)【きっぱり】
債;前の担当の○○さんは・・
取;ぼくが気に入らなければ、直ちに清算してちょうだい(^^)
債;いえ、そんなつもりでは…(T_T)

以前の記録を見ると、去年のいまごろ訴状が届いて月何万円か払うということで再契約の書類を前担当が送っておりますが、まったく返送がなく、連絡もよこさないのでこいつの家を叩き売ることに。
そんなつもりだろうが、こんなつもりだろうが、この債務者は私に当たったということからして既にがけっぷちに立っております(^^ゞ


気持ちいいひととき

ウズウズしながらも、一応事情は聞いてやったので、おたのしみの時間がまいりました(^^)
「きみ・・・」おもむろに、口をひらく取立人。

取;おたくの物件は、無抵当である
債;はい(;_;)
取;ということは、必ず売れる(^^)
債;・・・はい(;_;)
取;ということは、家の代金をいただく方が、てっとり早い
債;・・・そんな
取;分割では時間がかかる上に、あなたは絶対また未収を起こす

基本的に、債務者を信用してはいけません。ケツに火がついているときは、みんなこうなんです。
が、一旦おさまってノド元をすぎれば、み~んな未収ぶっこくのです(^^)

取;そこで…だ
債;はい
取;選択肢は、ふたつにひとつ
債;・・・はい


宣告

さあ、待ちに待った宣告の時がやってまいりました。前から一回こういう案件をやってみたかったので、自分が納得できるよう、この宣告は極力ドラマチックにいきたい。
そんなわけで、演出のためにしばらく無言でおり、もったいをつけながら気分をもりあげております(^^)

取;す~・・・・ふ~(煙草の煙が、2メートルぐらい吹き上がる)
債;・・・・
取;ぎゅっ!ぎゅっ!(梅小路蒸気機関車館の動輪灰皿で、煙草をけす)
債;・・・・・

煙草を消しながら鼻から最後の煙を抜いて
「いま、債務者が泣きついている」
「これから無慈悲な宣告をしなければならん」
「ああ、ぼくはなんて非情な債権者…」
「西部警察の、大門刑事みたいだわ(^^ゞ」
と、とってもハードボイルドな気分になったところで…

取;家を手ばなすか、一括清算
債;えっ?
取;家を手ばなすか、一括清算
債;ええ~っ!

一度、これやってみたかったんです。
いっつも「剰余ないかもしれん(滅多に、ない)」「こりゃあ、熱いうちにカネふんだくっておかなければ」という不毛な案件ばかりでしたので、今回、どうやってもカネになる案件で債務者に最後通牒を渡すのが競売も担当するようになってからの夢でありました(^^)

取;じいん・・・(ああ、このセリフ言ってみたかった・・・)
債;そんな~(T_T)
取;じいんじいん…(ああ、ぼかあ幸せだなあ(^^))
債;今度は必ず、必ずきっちり払いますから!
取;…(借金とりやっててよかった(^^))
債;お願いします!お願いします!
取;なに?何か言った?(なんかうるせーな?)

取立人はすっかり満足しておりますので、何も耳にはいっておりません(^^ゞ
やがて債務者はあきらめたのか、絶句。お互いしゃべることもないので「では、そういうことでご検討くださいね~(^^)」と、明るく言っておしまい。


数日後

お昼に牡蠣めしを食べてすっかり元気になった取立人のもとに、午後いちで無抵当くんから電話。
「明日、払います。おいくらですか?」とまあ、なんだか酒屋のつけを払うみたいに言う債務者。「ちいと待っておくんなはれ」約2分後、お勘定ができあがりました(^^)

おかんじょう(^^)

金995,637円也
元本 758,000円 利息 2,530円
遅延損害金 214,527円
印紙代 3,000円 差押登記費用 13,000円
差押登記抹消料 2,000円 切手代 2,580円

取;・・・というわけで、しめて995,637円(^^)【ち~ん!】
債;わかりました…

 翌日、これらのおカネたちが耳をそろえて帰ってきました。
 やはり、長年憧れたことだけあってキモチよかった(^^)
 が、こんどの機会にはぜひ競落させてやろうと思っております(^^)

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