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第30話「究極の肉体労働は『ゴーヤの法則』で打ち破れ」(小浜島)

自転車日本一周旅〜人生で大切なことはすべて旅で学んだ〜

サトウキビ収穫の刈り取り作業が始まった。
サトウキビはその名の通り砂糖類の原料となる植物。
サトウキビは2メートル以上の背丈があり、竹のような植物で太さは直径5センチほどになる。

竹は一本一本独立し、真っ直ぐに伸びているが、サトウキビは台風や天候の影響で複雑に絡み合っている。島には球場規模のさとうきび畑が点在し、キビガリ隊は片っ端からサトウキビを刈り上げて行った。

収穫には、手斧と二股のついた特殊なカマの2種類使う。
まず、手斧を使ってサトウキビの根元を刈る。
刈るというよりなぎ倒していく感じ。
根元からなぎ倒したキビを力づくで密林から引っ張り出して山積みにしていく。
次に二股の脱葉カマを使って、あまり糖度のないサトウキビの頭の部分を切り取り、余分な葉っぱをさらし、一本の竹のような形状にする。
さらし終わった長い弓矢型の一本の棒を対にしてバランスよく積み上げて山にする。

山にしたキビはあらかじめ敷いたロープで力づくで締め上げ、100本単位でユニック車の荷台に積み込み、製糖工場に運ばれていく。
要は、倒す→葉を落とす→山積みにする。
実に単純な作業の繰り返しだ。

8時から作業開始。
10時に15分程度休憩。
12時まで作業。
昼食休憩を挟み、13時から作業。
15時に15分程度休憩。
17時まで作業。

休憩を除くと7時間、身体を動かし続け、鍛えまくる過酷な筋トレ労働だ。
中腰で思いっきり振りかぶってキビの根元に斧を入れる。
なぎ倒した4〜5本のキビを右脇に挟んで引っ張り出す。
キビを背丈ほどに山積みにする。
この一連の動作をやり続ける。
7分間ではない。
70分でもない。
7時間続けるのだ。
右上腕筋を中心に上腕二頭筋、三角筋。
そして、広背筋、下半身全体に刺激が入り筋肉全体が鍛えられる。同時に、有酸素運動も行う「究極の肉体労働」なのだ。

これを10人ほどのチームで球場規模のさとうきび畑を隅から隅まで刈り上げていく。
収穫量一人一日一トンのノルマ達成のために血と汗を流しながら、長髪をバリカンでバリバリと丸刈りにしていく感じでさとうきび畑を刈り上げていく日々。

数日で朝起きるとカマを握る右手の指が開かなくなった。
毎朝カマをもった形で右手が硬直し、目覚める。
こぶしを握り締めた「ぐー」状態から「ぱー」に出来ない。
左手で右指一本一本を開いてやらないとパーができない。
やがてキビを持つ左手も同じく、開かなくなった。

八重山諸島の天候は気まぐれだ。
晴れていた次の瞬間、雨が降る。
ある日、寒さで凍えそうな時があった。
着込んだらいいのだが、畑なので着替えがない。
Tシャツと作業ズボン姿。
凍えそうなので、ひたすらキビを刈り続けて自走式で熱を発電した時は、エネルギーが枯渇するのが分かった。

まるで毎日フルマラソンを走り続けているような過酷な日々。
これまで僕はフルマラソン15回完走。
学生時代はバスケットとレスリング。
自転車日本一周旅の他、3000キロの徒歩日本縦断旅を敢行するなど、体力系には自信があったが、サトウキビ刈りには叩きのめされた。
究極の肉体労働だと思う。

肉体労働に限らず目標達成のためには、やらないといけない、やりたくないことでもやり続けること。
面白いのは、努力の結果が現れてくると、やりたくないことが楽しくなってくるのだ。
これがゴーヤーの法則。
 「ヤ」りたいことを
 「ヤ」るためには
 「ヤ」らないといけない
 「ヤ」りたくないことを
 「ヤ」り続けること。


そして、自由を手に入れるには、やりたくて出来ることから、やりたくないけど出来ることを率先してやる。
人は、好きでやりたいことが自由であると考えるけど、本当の自由とは、嫌い、やりたくないけど出来ることをやること。
すると自立と自律が磨かれ、それが自分の強みとなっていく。

自由には、自立と自律が必要なのだ。
自立とは、人生を切り拓く自分で立ち上がる力。
自律とは、弱い自分に負けず自らを律すること。
自由は何でも出来るとは違う。
何にでも、チャレンジできる権利があるということ。

誰からも、言われなくても率先してやるべきことをやる。
ここから始めないと、自由を手にすることは難しい。
肉体を極限まで酷使してみえるくる自由への渇望だ。

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