
なつかし劇場/明日に向かって打て
1度は行きたいと思っていたキャバレーハリウッドの最後の店舗。
赤羽店、北千住店が平成30年の年末に閉店いたしますと。
同年5月に亡くなられた。福富太郎さんが司会をしていたテレビ番組「末廣演芸会」が思い出されてまいります。
「裸族ちゃん。エメロンジジイ、帰ったみたいだよ」
カランを押して、ケロリンの黄色い桶にお湯を貯めていた小生に、ヨシカズくんがささやきました。
エメロンジジイというのは小生が付けたあだ名。湯船をうめる水道付近に居座り、水でお湯をうめるのを雰囲気だけで阻止する、熱い湯好きのツルッパゲ爺さんです。
ココは飛鳥山公園の前に位置する銭湯。小生がマジソンバッグを購入したカバン屋の裏手にある「えびす湯」です。
早速、水道を全開にして湯船につかる2人。家にお風呂はあるのですがビジネスホテルレベルのセコさ。週に1回、何とか湯銭(ゆせん)をせびってココに来るのです。
広い湯船に足を投げ出し、高い天井の開放感を楽しむ2人。
壁に描かれたお決まりの富士山も雄大で、気分を盛り上げてくれます。
湯船を堪能し「ガラガラ」と仕切りの引き戸を開け、脱衣場に戻ると、もう一つの楽しみが待っております。
それは、脱衣場の隅に置かれた「タイム80(エイティ)」というパチンコゲーム機です。
制限時間の80秒間打ち放題。
親指でレバーを弾きチューリップなどのヤクモノを狙い、1回入賞すると1点。
10点に達すると、50円と書かれた木札が払い出され、コカ−コーラ、コーヒー牛乳、パンピーなど好きな物が飲めます。
ワンプレイ30円のこのマシン。
一発クリアで20円の儲けです。
チューリップが開いてないか2人で見ていると背後から。
「おめえら!相変わらずバクチか!」
ステテコのゴムをパチンパチン弾きながら、ニヤけてるこのおじさんは、三代目三遊亭歌奴(うたやっこ)、噺家さんです。
数週間前、小生達のパチンコ勝負を観戦していた歌奴さんを、落語マニアの小生が見破ったのがきっかけで仲良くなったのです。
「おめえ。今時、その歳で落語聞いてんのか。今に出世して大臣になるぞ!」
その時、歌奴さんがヨイショして言ってくれた言葉です。
今日も少々ほろ酔い気味なのか、ヨウジをくわえたおいさん。
「おいさん!こないだ末廣演芸会出てたね。すげーウケてたじゃん!」と小生。
「いやぁ!人気者はツライなぁ!」頭をボリボリ掻いて、上機嫌になるおいさん。
小銭入れから、手のひらにジャラ銭をだし。
「ホラ!30円つ、取りな!」
ヨイショ芸の歌奴さんをヨイショし、ご祝儀を頂戴する小生。
結局その日は3人で、湯冷めするまでパチンコを打ち続けるのでございました。
P.S.
今回、投稿のため検索してみました。えびす湯は、パチンコは無いものの、昔のままのたたずまいで現在も営業中。
歌奴さんは2004年に62歳でお亡くなりになられていました。
今度の休みには何十年ぶりかで、えびす湯に行ってみようと思います。
ガラガラと入口の引き戸を開けると、ステテコ姿のおいさんがニヤニヤしながら
「おめえ!またバクチに来たのか!」
と出迎えてくれそうな気がいたします。
最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。(*´∀`*)
鳥裸族
なつかし劇場集|torirazoku|note(ノート)https://note.mu/torirazoku/m/m692c7a8cd1fb
なつかし劇場はポッドキャスト
「拝啓、関東平野」
で読み上げて頂いております。
いいなと思ったら応援しよう!
