なつかし劇場/博士の異常な友情
小学生時代。等身大の変身ヒーローと言えばぶっちぎりで、仮面ライダーでございました。
バロムワンやコンドールマン、ダイヤモンドアイなど、B級好みの小生もやはり王道の仮面ライダーにはシビれました。
ちなみに、現在も関東平野ファンとしてB級道を貫いております。
仮面ライダーの人気要素の1つは変身ポーズ。
2号ライダーから始まったのですが、通常は立った状態でポーズを決め、ジャンプ&空中回転で変身完了。
しかし、さすがは2号ライダー、バイクに乗ったまま、手放し運転で変身ポーズを決める放送回があったのです。
クラスで一番仮面ライダーに入れ込んでいた、ヨシカズくんは、すぐさまチャリでの手放し変身ポーズの特訓を開始。
変身ポーズは、まず両腕を左真横に突き出し、ゆっくりと半円を描くように右側に移動。
最後にコブシを握りしめ、神輿を担ぐようなポーズでキメて完成。
ここまでで、手放し運転の時間は4秒程度。
仮面ライダーに出てくるおやっさん気取りで並走し、特訓を見守る小生。
最初は両腕を左に突出すだけでビビって、ハンドルにしがみつくヨシカズくん。
しかし、先祖が武士と言い張り、かあちゃんの事を母上と呼んでいるだけあって、サムライ魂を発揮。
なんと、3日程度で手放し変身ポーズをマスターしてしまいました。
さっそく、近所の男子に披露し大好評です。
それから1週間くらいたったでしょうか。
放課後。
駄菓子屋で、すもも漬けをストローで吸いまくりお決まりの咳き込みを楽しんだ後、土手でも行ってみようと自転車で移動する、ヨシカズくんと小生。
途中の道の先をふと見ると、クラスの女子数名が電柱に長いゴムを引っ掛け、ゴム飛びをしております。
もしも小生が同じ立場でしたら同じ事をしたでしょうが、男のサガとはカワイイものでございます。
ヨシカズくん、女子にエエカッコしたかったのでしょう。
手放しでの変身ポーズを見せつけようというのです。
シャキーン!
両腕を左に突き出し、手放し変身ポーズを開始するヨシカズくん。
女子の近くを通過するタイミングで神輿を担ぐポーズをキメるつもりです。
タイミングを調整するヨシカズくん。
だが、その行き着く先にはT字路のどんづまりが迫っていたのです。
大丈夫かヨシカズ?!
両腕で半円を描き、、
女子の真横を通り過ぎるその時、
「ヘンシン!」の掛け声が決まる!
振り返る女子たち。
ヨシカズくん至福の瞬間です。
そこまでで良かったのに、調子にのったヨシカズくんは迫るT字路をしりめにさらなるサービスをしてしまう。
「トォー!」
掛け声とともにジャンプポーズを見せつけ、ギリギリのタイミングでハンドルを切る、ヨシカズくん。
しかし、ハンドルを切りすぎ、
ハンドルを握りしめたまま、T字路の死角にあった道路標識の白いポールに頭から突っ込んで、
カ〜ン!
額で受け身を取ってしまったのです。
顔を上げたヨシカズくんの額にはゴルフボールみたいなタンコブが!
ビビりまくる小生。
「ウエ、ウエン。マ、ママァ〜!」
ヨシカズくんは押し殺すように小さく泣きながら、自転車をおきざりに、団地の我が家を目指し駆け出していきます。
立ち尽くす小生。
ヨシカズくんのタンコブも去ることながら、ママァ〜!と小さく叫んだ彼のサムライキャラの崩壊がショックだったのです。
2台の自転車を押して帰り、ヨシカズくんの自転車を団地の駐輪場に停めようとすると、ヨシカズくんは半ベソでかあちゃんと病院に向かう様子。
とっさに、駐輪場の影に隠れる小生。
小生は遠ざかる母と子の姿を見送りながら心に誓いました。
ヨシカズくん。
「ママァ〜!」の件は墓場まで持っていくよ。
最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。(*´∀`*)