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【営業録】ガチ神社でお笑いはセンシティブ



外でネタをやらせていただく機会が増えてきたので、印象に残ったステージを記録していこうと思う。


 AM9:00。
私含めた部員5人を車に乗せ、市内からは幾分離れた小さな集落にある洲崎神社へ。
田舎道を走ると、無数の無人メダカ販売所に出会う。
その全てにメダカが欲しいという童心を刺激されるが耐えて耐え抜く。
先に待ち構えるぬーどぅー(農道)をクネクネと走り抜け、これでもかと部員たちに私のドラテクを見せつける。
教習所のS字クランクはこういった時のためにある。

 調子に乗っていたのも束の間、神社への分かれ道の2択の賭けに負け、民家の庭に行き止まり。まずい不法侵入。
慌てて引き返そうとすると、運の悪いことに家主のおじ様もちょうど同じ祭に向かうべく車を走らせ始めたのでその車に追われる形で、バックで数百メートル引き返す羽目になった。
その間家主の強面のおじ様とはお互いの顔を覚えるに十分な時間目があっていた。
ネタで笑って貰えないと困るため渾身のかわいい顔をキープし続ける。


幸先がいいとは言えないスタートだったが、会場に着いた瞬間
「終わった」
5人全員が思うだけではなく口にした。


見るからに御神木といった、パワーを放っていそうな巨木の向こう側に
祭特有の提灯も装飾も何もない、無加工の神社がそこにはあった。
嗚呼一面のアースカラー!
想像していたような赤提灯や、そばを焼きながら野次を飛ばしてくるような露天のおっちゃんなど、あるはずも無いといった厳かな神社で巫女が舞を踊っていた。
「まつり」と聞いて祭を想像していたけど、あれは政、いや祀り、だった。


多くの人間は笑っていい場所と笑ってはいけない場所を本能的に弁える。
緊張する場所と言えば病院、校長室、交番前を通る時など、神前はその最たるもの。
見る側が緊張している場面で、笑っていただくことは特に難しくなる。
そう言った意味で、終わったと思ったのだ。


おかしいぞ、30分ほど経つのにまだ誰の笑顔も見ていない。
それどころか喋っている人すら見ない。
この人たちは何で笑うのか、
この人たちは笑ったことがあるのか。
そもそもこの中の誰か1人でも笑いたいと思っているのか?
と失礼ながら本気で疑ってしまうほど、黒のスーツを着こなした神妙な面持ちの大人たち。


大串地区の洲崎神社のお祭りでお笑いステージをやって欲しい!!
ということだけ聞いてたので、部員一同そのためにネタを用意していた。


私が屋外でネタをやる時の鉄則は、全力でふざける!
そうすると聞き流していたお客さんもなんだなんだあの活きの良いちぃでぶは、と振り返ってくれる。
それはほぼ全ての場所で通用すると思っていた。

今回も究極の馬鹿ネタ。
おくんちをやっているところに「洲崎秋のパン祭り」という架空のお祭りが乱入して
トング片手にパン音頭。
ぱんぱんぱっぱらぱっぱぱぱんぱぱんあそーれ!
みたいな、くだらないのをやる予定だったけど相方の後輩ちゃんはまさに詰んだ、というような顔をしていた。


しめ縄の下でネタやるなんて聞いてない聞いてない聞いてない。
普段二礼二拍手一礼してるあの場所、普段賽銭箱があるところに立って神に思いっきり背を向ける形でネタをやる。
良いわけないだろと思ってしまったけど、この時点ではもう順応が進み楽しみになりつつあった。


お笑いステージです!と呼び込みが入ると、お客さんが自ずとお笑いを見るモードに切り替えてくれた空気があった。
プロ彼女ならぬプロ観客の皆様。

前の組がいいウケ具合をしていたので安心して舞台に上がった。

いざ出てみると行きの車で急いで考えた掴みが想像を超えるウケ方をした。
滑ったら書こうと思っていたけれどまた使うので略。

パン祭りをやる苦し紛れの理由付けに、昔は米の収穫祭だったけど今は米が高騰しているから我々はパンに可能性を見出したのです、とか適当なことを言いながらなんとかやり終えた。

音響のおじ様の粋な計らいによって、パン音頭を歌唱中、マイクにエコーがかけられてえげつないこぶしを連発するプロ歌手の風格を演出して頂いた。

自分たちのステージが終わったら、創始者が参加する太鼓を見たり、
獅子舞に頭かみかみしてもらったり、(中の人の顔を見てやろうと思ったけど叶わず)
かっっったい餅を沢山撒くイベント?で本気で餅を捕球し、餅が後ろの者の手に渡るのを阻んだ。


午前に始まって終わる祭りも稀だよね。

謝礼と、暖かいお言葉と、ちゃんと味にこだわってるタイプのお弁当を頂き、心も懐も温まった。お客さんから次の営業も頂いて収穫もあった。



再びメダカの誘惑にも耐え、市内へ帰還。
一日経った今、まだばちは当たっていない。
次は大串大おにぎり祭りを開催させていただきたい。


捕まえた餅とお弁当
カラフルカニ道楽

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