【名著を読む】徳弘正也 『ジャングルの王者ターちゃん♡』、『狂四郎2030』
漫画って本当いいですよね。
皆さんは漫画の良いところは何だと思いますか?
「一番はどんな疲れてても読める」と「繰り返し読める」だと思います。
仕事終わりにNetflix12話のドラマ見るのはキツくてもベッドで漫画は体力気力ゼロでも読めますね。しかも自分のペースで話進めれて何回も同じ話を読めれる。最高のコンテンツですね。
デメリットは漫画の話ばかりするとバカっぽく見えることくらいかな?(音楽や映画の話に比べて)
よく日本から(若手で)天才的な映画監督や音楽家が生まれないなんて話が出ますが数の原理の話で何故なら日本で天才が生まれたら漫画を描くから!!
※フィラデルフィアで生まれた子供がボクシングをするかの如し
というひとつの私の結論が出てて。
漫画家は映画監督では絶対不可能な全知全能の神になれる仕事です。
その世界の神になり政治システムから社会的ルール、法律、人の心の揺れ動きなども創る仕事です
僕も漫画を読んで人格形成してきた人間なので、そこで子供の頃好きだった
徳弘正也先生『狂四郎2030』&ターちゃんのブログでも書こうかななんて思って書き始めます。
ターちゃんとジェーン
この間家の近くのまんだらけでターちゃんの文庫3巻の表紙見て↓これ
めちゃいいな!本当ベストカップルだな。ターちゃんとジェーン!
涙出るほど良いなあ!と思ってこの一枚のイラストで徳弘正也漫画が大好きだったことをふと思い出した。
(確かターちゃんて27歳だったような?俺ターちゃんと同い年になったの!?なんて思った)
なかなかこんなベストカップルなれないよなあ。
『ジャングルの王者ターちゃん♡』は深い
徳弘正也漫画といえば『ジャングルの王者ターちゃん♡』が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか?
そしてONE PIECE の尾田栄一郎先生が徳弘正也のアシスタントをしていたこと。
あらすじ
キンタマで空飛ぶギャグ漫画程度に思っているかも知れないが
良い漫画なんだ。(こう見えて)
でも今日は`狂四郎2030`の話を書きたいからターちゃんの話はサラッと流す.
元祖尊厳破壊王 徳弘正也
1.ターちゃんで有名なシーン
優しさに目覚め始めたマスクの男(主人公のクローン)を教育するために
仲悪かったけどだんだん打ち解けてきた女の子(女レスラー)をロボトミー手術で廃人にしてプレゼントしたシーン。
※子供時代にドン引き
現代漫画の「王」ONE PIECE の地獄展開と尾田セン聖の尊厳破壊の地獄の火力
もう誰にも止められない現代漫画の王、尾田セン聖は師匠の徳弘先生から尊厳破壊描写の影響を色濃く受けていく。
地獄を描くことにおいてもはや尾田セン聖に敵う事はないでしょう。
話それました!
狂四郎2030の事が書きたかったのでした!
人間の狂気と愛と地獄を極限まで描いた不朽の名作『狂四郎2030』
狂四郎2030 あらすじ
「表」と「裏」、「善」と「悪」、「愛」と「狂気」を描いた逸品
遺伝子が全ての優劣を決めるという思想、徹底的な管理社会、人殺しの心理、「理想郷」が抱える矛盾など「エロとグロ」「笑いと泣き」を同居させられるとんでもない漫画
連載期間:1997年~2004年
まず政治体制と社会
全権委任法の成立によって独裁政党が牛耳るようになった近未来の日本。
そこでは差別と弾圧が平然と横行し、一般人は農園で死ぬまで働かされる世界が広がってます。
第三次世界大戦
2019年から2025年までの6年続いた戦争で、日本とアメリカの連合勢力と、ロシアと中国とヨーロッパの連合勢力との間で繰り広げられた。核ミサイルが大量使用され、核ミサイルの性能が迎撃システムを上回っていたために後方の都市部も攻撃の目標とされ、結果世界人口の約80%、それも軍人よりも民間人が多く死亡し、アメリカと中国は大打撃を受けて事実上消滅した。
その後機械技術大国ハイテク日本は捨て農業一本槍に。
バーチャSEXマシン
(メタバース上での)実在しない相手の性交。生身の人間との性交はひと握りの特権階級でのみ行われており、一般国民はこのバーチャSEXによって性欲を満たしている。
実際には現実の性交に不自由していない特権階級もバーチャSEXに耽溺しており、劇中では、バーチャマシンの所有率は軍人が99%、役人が87%、一般国民は32%となっている
つまりこの32%以外はバーチャマシン獲得の為に毎日毎日働き、所持している32%は没収されないように毎日毎日働くというのが基本的な社会の回し方である
そんな地獄のような世の中であるにも関わらず、人々は政府の流す偽情報や支給されたバーチャルマシンで一時の仮想現実に耽ることで、もはや現世が地獄であることすら忘れてしまう始末。
本作の舞台、2030年の日本では倫理や道徳といった社会通念がまるで通用しません。権力者が「殺す」といったら容赦なく殺され、男たちに囲まれた女は容赦なく犯されるのみ。
(メタバース)のバーチャル空間を通じて互いに惹かれ合う狂四郎とユリカ。
この話はロミオとジュリエットなので仮想空間上で会った男女が実際に会うまでのお話です。
国家反逆者になってでも会いにいくというのがテーマです。
ヒロインであるユリカは作中で何度も何度も酷い目にあります。
通常の作品であれば間一髪のところでヒーローが駆けつけ難を逃れるようなシーンでも、ご都合展開は無し。
何度も権力者たちに犯されます
ギャグシーンもありながらユリカ(の過去)受け入れサイバースペース上でプロポーズする狂四郎。
果たして本当に現実世界で会えるのか。
M型遺伝子理論
本作にはM型遺伝子理論なる学説が登場します。
M型遺伝子理論は単なる遺伝子に関する学説なのですが、権力者はこれを拡大解釈して都合よく国民を支配するためのツールとして利用しました。
M型遺伝子と判明した者は国家反逆病を発症する恐れのあるキャリアとして、容赦ない差別と偏見に晒されます。
遺伝子による差別、密告制度、異常なまでの全体主義など人間の狂気の部分を物語の中心にしてます。
主人公、狂四郎も誕生してすぐにM型遺伝子異常者として両親から引き離され、関東厚生病院に入れられます。そこで兵士としての訓練を積み、14歳で空軍少年航空隊に入隊。第三次世界大戦では各地の激戦をくぐり抜け、後期はMAS(陸軍特殊部隊)隊員として要人暗殺や破壊工作で活躍。本来なら少佐以上の地位に就いてもおかしくない軍歴・戦功と、極めて高い戦闘能力を持っているが、M型遺伝子異常レベルAという出自の為、戦後は治安警察の平巡査、しかも最も過酷な「敗残兵狩り」という軽輩に留まっていた。
デザインヒューマン
男女は完全に隔離されて生殖をさせないとなると国家はどのように人口を維持させているか気になる所ですがデザインヒューマンというのが鍵になります。
↑男性との性行為のためだけに生み出された、遺伝子操作によるデザインヒューマンも登場しますが人間の心を持ついいシーン。
理想郷(ユートピア)
この漫画はバーチャSEXマシン、オアシス農園、M型遺伝子理論、デザインヒューマン、理想郷建国が物語の中枢にあります。
徳弘先生は、原始共産主義への憧れや民主主義への不信感があるものの、共産主義の理想は実現できないという冷静さ、科学技術への信頼も併せ持っていて、それが漫画の中でぶつかっていきます。
徳弘先生は自分で理想郷を作りながら最後理想郷は"成立しない"矛盾まで描きます。
現代漫画の王、尾田セン聖は師匠の徳弘先生から尊厳破壊描写影響を受けているわけで、この1ページでの文字数ONE PIECE並と感じたと思います
純粋でまっすぐすぎる狂四郎とユリカの愛
これは狂四郎がヒロインのユリカと会うために北海道を目指して旅をする物語です。
旅は困難を極め、追手を毎日のように切り倒す狂四郎は自分のような血塗られた人間が果たしてユリカに相応しいのか自問自答する日々を繰り返します。
一方のユリカもユリカで、北海道の中央政府電子管理センターで勤務するだけかと思いきや、様々なトラブルに巻き込まれ精神面だけでなく、物理的に何度も酷い目に逢います
二人の関係はもはや「愛」とか「信頼」とかそういう言葉では言い表せないほど濃密で、読んでるこっちが泣きそうになります。
あまりにも悲惨で救いの無い世界だからこそ、2人の純愛がより際立って読者の心に響きます。
狂四郎2030の作中内で描かれる残酷で狂気的な描写は目を覆いたくなるくらい酷いもので陰鬱です。
同時に狂四郎とユリカが想い合うプラトニックな描写も大変素晴らしく、本当に溜息が出る程です。恋愛は素晴らしいですね。
狂四郎は大戦末期において暗殺任務に従事してからは度重なる殺人に精神を病み、最終的には女性や幼児すら躊躇無く殺す殺人マシンのような人格になる。彼女にだけは殺人鬼としての自分の顔を知られたくないと思っています。
ユリカ自身は16歳の時から上司より性的虐待を受け続けてきた。 多くの男たちに陵辱され汚された現実の自分を狂四郎に見られたくないと苦悩します。
自分をさらけ出すシーンが重く辛い。
魅力的なキャラクター
敵キャラも含めて魅力的なキャラが多いです。
完璧に作られた敵もとても悲しいです。
喜怒哀楽を極限まで突き詰めたキャラクターの表情
キャラクターの表情が喜怒哀楽を思いっきり煮詰めて煮詰めて煮詰めた顔をします。単純な表現では語り尽くせないほど、人間の複雑で感情・想いが描かれています。
その人の人生そのものを思いっきりぶつけられるようなそんな描写が多いです。
とんでもない鼻水泣き顔を大コマ
後の漫画界と(主にアシスタントしていた尾田先生に)影響を与えた鼻水泣き顔大コマは
ヒロインにもさせる(てかヒロインにさせる)漫画表現をアップデートさせ物語をより深みに連れて行った。
そして地獄を描くことにおいてもはや尾田セン聖も影響をものすごく受けているでしょう。(ルフィの親父が革命家ドラゴン的な意味で)
狂四郎2030 まとめ
狂気、愛、差別と偏見、善悪、マインドコントロール、全体主義の恐怖、安きに流れる人間の弱さ、XR技術が示す未来などヒューマニズムの極致は読んでいて疲れますが読後感もすごいです。
やはり現実世界で本当に会えるシーンは感動します。
壮大なストーリーかと思いきや(いや壮絶なのだが)結局は単なるディストピア世界での人間模様を描きつつ二人の主人公の超プラトニック恋愛ストーリーで終わってます
このディストピアの世界は何も変わらないし、変えようとする気も無い。
変えようとした野心家は、巨大なシステムに磨り潰されて次々と退場していく。
それでも人間社会不信の作家が描く極上の人間賛歌
(one pieceもね)
徳弘先生、(尾田セン聖も)原始共産主義への憧れや民主主義への不信感があるものの、共産主義の理想は実現できないという冷静さ、科学技術への信頼も併せ持っていて、それが物語世界を作っている。
反権威だけど最終的には思想より個人の人情を信じてる印象があります
恋愛は素晴らしい、人を愛する事は美しい。生きることは素晴らしいとシンプルな人間賛歌。
僕も子供の頃漫画家になりたかったが、徳弘先生、尾田先生が凄すぎて諦めた。(子供ながらこんなレベルの話人生10回やっても描けないわと思った)
徳弘先生&尾田先生は僕の夢です。末長く漫画描き続けてくださいね
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?