拝啓 優しさで私を殺したあなたへ
お元気ですか?
私は、もう何ヵ月もチョコレートのようにどろどろになって気味の悪い心を、何とか手をベタベタにしながら日々かき集めて、心とは形容しがたくなったそれから目を背けることでなんとか生きています。
あなたは相変わらず誰にでも優しいのでしょうね。
その優しさが私を殺したことには気がついていますか?
気がついていないでしょうね。というか、気がつかないでください。
あなたは優しい人だから、私があなたに殺されたと気づいてしまったら、なんとも言えない顔をして私をなかったものにして優しい自分を保つのでしょ?
あなたのなかから私がいなくなることは、耐えがたいのです。だから、気がつかないでください。
誰も傷つけたことがないとでも言いたげなあなたが、私は大っ嫌いでした。
私はいい人じゃないからといって保険をかけて、誰にでもいい人でいるあなたが嫌いでした。
優しくされる度に、あなたの優しさが私以外にも向くことを知る度に、内蔵という内蔵が口から裏表を返しながら出てくるような気がしたのです。
そして、そんな大嫌いなあなたが私だけのものじゃないことに気づかされる度に、頭を引っ掻き回されてあなたがほんとうは大好きだってことを否定する自分が何より嫌いでした。
敬具
追伸
あなたのお陰で、私は人に優しくなれました。
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