ピアソラと『Oblivion(忘却)』
ピアソラという作曲家の曲を知りたくて、検索していた時に見つけたこの動画。
情熱的でいて、冷静。
近いのに、距離がある。
熱いのに、凍える程冷たい。
激しいのに、うっとりする程優しい。
身を任せているようで、限りなく孤独。
相反する特性を全て兼ね備えたような、この2人の見知らぬダンサーの官能的な踊りに釘付けになった。
何度も何度も繰り返し見た。まるで取り憑かれたように。
沸々とした情念が、陽炎のように香り立つ。
最後、しゃがみ込む2人の未来はどんな未来なんだろう。そこには未来などなく、忘却しかないのだろうか。
この動画が好きすぎて、自分もアルゼンチンタンゴを習い始めた。もっともバレエとは身体の動かし方があまりに違うので、数ヶ月で辞めてしまったけど。
そして、タンゴといえばこの映画『セント・オブ・ウーマン(夢の香り)』
盲目の軍人に踊りましょうと誘われて、間違うのが怖いからと躊躇する女性。
「タンゴには人生と違って、間違いはない。脚が絡まっても踊り続ければ良い」
と粋に誘うアル・パチーノが格好いい。ダンスと共に流れる音楽は、『Por una cabeza(首ひとつの差で)』恋の駆け引きに、僅かの差で破れた男の失恋の歌だ。
タンゴを踊る時は、気と呼吸だけで踊る。
ミロンガなどで知らない相手と踊る時にはもちろん振付などないし、次に相手がどういう動きをしてくるかキャッチしながら感覚で踊る。
それはまるで会話のようだ。最初は躊躇しながら、でも徐々に相手が見えてくる。
相手を理解しようとするから、感覚が研ぎすまされる。
それは、ダンスを超えた心の交流だ。
相手が上手い男性なら、初心者の女性でも身を任せているだけで様に見える。
男性にリードされるって、やっぱり心地良い。
タンゴには、大人の香りがする。
60歳になるまでに再開したいな。脚が絡まりそうだけど(笑)
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