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なるべく明るい乳がん日記21長い道のりを行かねばならない

〜前回のあらすじ〜
3週間でワンクールの抗がん剤投与。1回目のクールをどうにか乗り切り、いよいよ2回目の投与の日を迎えた。
初回投与は入院したが今回は通院で投与する。
車社会で暮らす私にとって通院とはすなわち運転である。
(タイトルはFLYING KIDS  )

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【TC療法2回目の投与日】
病院までは片道約50キロある。今回はそこを自力で運転し、抗がん剤を投与した後、自力で帰ってこようという試みだ。

ちなみに運転免許を取得したのは6年前、43歳の時である。取得するのに9ヶ月かかった。合宿でも取れる免許をまさかの9ヶ月。なぜそんなにかかったのか。内訳は教習所の外では全くお目にかかることのないS字カーブで一度落ち、方向変換で2度落ちた。仕事をしながら通ったのでスケジュール的な問題もあった。それにしてもだ。

大学生たちと一緒に通い始めたはずなのにいつの間にか周りは高校生ばかりになり、教則本は知らん間に改訂され、学科の授業で私だけ前年度のグラフを見ていることに気付き驚愕した。効果測定の部屋の椅子も新調されるなど9ヶ月はなかなかの時の流れであった。取得できて本当に良かった。

前に進むのは好きだがバック駐車は苦手なままだ。バックモニターなどというオシャレなものは私の車には付いていない。頼れるものは3つのミラーと少ない経験のみである。そう考えるとむしろちゃんと駐車できているのかもしれない。いつもちょっと斜めだけど。


採血をするので朝食は抜きだ。朝食は絶対食べたい派の私なので辛い。黒いヘアキャップの上に医療用帽子を被って朝早く家を出た。通勤ラッシュに巻き込まれながらなんとか病院に辿り着く。

受付を終え、体重を測定する。2キロほど増えている。抗がん剤はむくみやすいのだ。

看護師さんに呼ばれ、体温や血圧などを測る。自宅で過ごす間の体調の変化を記録する紙を病院側から渡されていたので、それを見ながら副作用を確認。私の場合は特に身体の痛みがキツかった。

眠れないことが辛いので、もう少し強い痛み止めが欲しいと伝える。

採血は4本。検査結果が出るまで1時間ほど待ち時間がある。その間に軽く朝ご飯を食べる。


診察室に呼ばれ、主治医の先生と話す。血液検査の結果は良好!お褒めの言葉をいただく。

「前回の投与で辛かった症状はこのお薬で対処しましょう。」と痛み止めと便通を整える薬の処方をテキパキと決めていく先生。

何か他に気になることはないか聞かれたので、そういえば最近下腹が微妙に痛い時があると伝えるとすぐさま先生は内線の受話器を持ち上げ、婦人科の空きがないか確認。さすがに今日の空きはなかったので、次回投与時に婦人科を受診する予約を入れてもらった。先生の行動はいつも光より速い。

それまでに症状が悪化するようなら近所で受診するようにとのこと。ちなみに最初に撮った全身CTで子宮筋腫があることはわかっている。

子宮筋腫は珍しくない腫瘍です。小さなものも含めると、30歳以上の女性の20-30%にみられます。がん(悪性の腫瘍)ではありませんが、貧血や痛みなど様々な症状の原因となります。
小さくて、無症状の場合は治療の必要はありません。

公益社団法人日本産科婦人科学会WEBサイトより抜粋

年を重ねると色々と出てくるものだな。


診察を終え、しばらく待った後、看護師さんに呼ばれて点滴の準備に入る。朝の採血は左手の甲で採った。手の甲の方が痛いとされるが、針を刺すのだからどっちにしろちょっと痛い。

点滴はアイスグローブの邪魔にならないよう手首より少し上の血管に刺す。準備が終わると、化学療法室という抗がん剤投与専用の部屋へ案内された。


革のリクライニングチェアが7脚並んでいる。個別に仕切ったりせず、投与を受ける人みんなで大きなテレビを見ている。

指定された椅子に座り、もう一度血圧を測る。上が100を切っている。元々低いものがさらに低い。

「立ちくらみとか大丈夫?」と聞かれるがそれはない。低いけれど大丈夫な範囲なのでそのまま投与の準備は進む。アイスグローブに両手を入れる。これを書いている今は真冬なので忘れそうになるがこの時は夏なので冷たくて気持ち良く感じる。

先客は3人。CVポートというものを埋め込んでそこから投与している人もいる。

ドセタキセルを流す私の隣で、おばちゃんが「私あと何回ー!?」と看護師さんに聞いた。「全部で18回で今日12回目だから、あと6回!」と看護師さん。

18回・・・!!私の4倍以上!!!

心の中でお疲れ様です!!とおばちゃんを労う。おばちゃんもまた、長い道のりを行かねばならないのだった。

全ての投与を終える頃、化学療法室に座っているのは私だけになった。「血糖値を測るのは月に1回だから次回は朝ご飯食べて来ても大丈夫ですよ。」と看護師さん。やったー!次は朝食べていいんだ! ”空腹の早朝50キロ運転” を回避できるのは嬉しい。

院内薬局で薬を受け取り、薬剤師さんから説明を聞く。2回目の投与の旅を乗り切るために私は新たな薬草を院内薬局という名の道具屋で仕入れるのだ。

歯を食いしばりながらお会計を済ませた私は昼食後、体調の変化がないのをいいことに調子に乗って100均だの本屋だのウキウキでハシゴしまくり、帰りの運転も問題なく大声で歌いながらゴキゲンに帰宅。

久しぶりの遠出と買い物と人との会話を目一杯楽しんだのであった。

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