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突然踊り出すシンガーソングライター(米津玄師、藤井風、星野源、オーイシマサヨシ、キタニタツヤ)

今更だが、「ファタール」のMVを見た。

元SexyZoneの中島健人と、シンガーソングライターのキタニタツヤの曲だ。TikTokなどでダンスは目にしたことがあったが、本家MVは初見。コメント欄を読んでいると「キタニタツヤはダンス未経験」という旨のコメントがあった。

いやいや……めちゃくちゃうまいが……

何しろ相手は踊ってなんぼのグループにいたスーパーアイドルだ。並の神経ではとても隣で踊れない。だがキタニタツヤは堂々たる踊りっぷりで、中島健人と渡り合っているように見える。

すっかり感心しつつ、本業がシンガーソングライターでキャリア途中からダンスを始めた人たちがほかにもいることに思い当たった。そこで、筆者の観測範囲内の話になってしまうが、簡単に比較してみようと思う。


米津玄師

2016年リリースの5枚目のシングル「LOSER」にて突然ダンスを披露。ハチ時代からファンだった筆者は大変驚いた。運動はテニスをしていた程度で、ダンスは未経験だったとのこと。

以下のインタビューでは踊ることになった経緯に触れられている。以前からやりたい気持ちはあり、PVの打ち合わせで「曲を作ってる本人が踊ってたらかっこいいね」という話になったそう。
2〜3週間ほど毎日練習したが「地獄の日々でした」と吐露している。2〜3週間でここまで踊れるものなのか。

振り付けとダンス指導は辻本和彦。ジャンルはコンテンポラリー、ジャズダンスなど。これ以降、米津玄師のライブやMVなどに継続して携わっている。米津玄師作詞曲の「パプリカ」も辻本和彦の振り付けだ。
ちなみにこれ以降、米津玄師が本格的に踊っている様子はない。「Flamingo」「感電」などのMVで踊るシーンもあるが、ライブ等で振り付けがついたダンスを踊りながら歌うことは基本的にないようだ。よって上記の辻本和彦が携わるのも、バックダンサーのダンスが主となる。ただ、ここで信頼できるダンサーと知り合えたことは米津玄師にとって大きな財産となったに違いない。

藤井風

2021年リリースの6枚目のシングル「きらり」でこちらも突然ダンスをして見せた。筆者はこの少し前から弾き語り動画などを見ていたが、まさか踊るとは思わなかった。プレミアム公開当日のチャットを覗くと、ダンスに驚くファンのコメントが残っている。
このダンスについては、MVプレミアム公開直後に行った生配信で本人が語っている。

(10:00〜)
「いつものわしの好きなこういう(適当にノリで踊っている)のを卒業して、ガチガチに振り付いたのに挑戦してみたいってコンセプトがあった」

振り付けはノルウェーの3人組ダンスグループ・QuickStyle。上記配信で、藤井風の過去MVを見て本人がやりそうな動きをつけてくれたと話している。
ダンス指導はShingo(岡本晋吾)。「きらり」MVでチェックシャツのオタクファッションで踊っているのは本人。これ以降、「damn」「花」「feelin’ Go(o)d」の振り付けも担当。ライブのバックダンサーも務める。

ちなみに藤井風は「きらり」以降ライブでも積極的にダンスにチャレンジし、2024年8月の日産スタジアムライブではヘッドセットマイクで何曲も踊りまくる姿が見られた。ダンススキル的にも「きらり」と比較してかなりこなれており見事。

星野源

星野源のダンスと言えばやはり2016年の9枚目のシングル「恋」だろう。

星野源が踊っているのを筆者が初めて見たのは、この「恋」で出演した歌番組だった。サビ等は踊らずバックダンサーだけが踊っていたが、間奏で「あっそういうダンスがあるんですね〜」というような小芝居を入れた後キビキビと踊り始めたので大変驚いた。
星野源についてはダンス経験はゼロではない模様。高校時代に「民族舞踊部」だったとのこと。(その経験が現在のダンスにどれほど活きているかは不明)

なお星野源は「恋」以前にもPVでたびたびダンスをしている。
2015年のアルバム『YELLOW DANCER』収録「時よ」

2012年の3枚目のシングル「夢の外へ」

これ以前のSAKEROCKやライブ等でダンスをしているかは確認できなかった。劇団所属も長いため、そのどこかでダンスを経験している可能性もある。

オーイシマサヨシ

2018年の2枚目のシングル「オトモダチフィルム」MVでダンスをしている。

これ以前にダンスをしていたかは不明だが、大石昌良名義やSound Schedule時代に踊っているとは考えにくいためおそらくこれが初出であろう。アニメソングのための名義である「オーイシマサヨシ」はキャッチーでマスコット的な存在感があり、踊るのも必然と感じる。ただオーイシマサヨシは当時38歳。この記事で紹介したほかのシンガーソングライターはダンスMV初出時いずれも20代だ。この歳からダンスを始めるのは並大抵ではなかっただろう。

「オトモダチフィルム」はTVアニメ『多田くんは恋をしない』主題歌。アニメ制作サイドから「こんな感じの楽曲をお願いします」と提示された曲の中に星野源「恋」があったという。それは踊りもしよう。

振り付けは「恋」の振り付け師であるMIKIKOのダンスカンパニー・ELEVENPLAYのNONとのこと。そこもなのか。

オーイシマサヨシはライブでもたびたびダンスを披露している。2024年の武道館ライブ前には走り込みやダンス練習を重ねたそうで、踊りながらの歌唱もかなり安定している。

キタニタツヤ

2020年メジャーデビュー、「ファタール」の2024年は28歳である。

上記はダンスのみを見ることができる別MV。ウェーブや首・肩のアイソレーション、タットなどで細かい音ハメをする様子も確認できる。

上記の記事によると、踊ることになったきっかけは中島健人が「面白いから踊れ」と言ったことだったようだ。

リアルアキバボーイズ(プロダンサーが作ったダンスチーム)がYouTubeで解説していたが、「天才タイプ」「ほんとに初心者なの?」と大絶賛。3週間で振りを入れたとのこと。米津玄師も「2〜3週間」と言っていたがにわかには信じがたい。センスと努力の賜物なのだろうと察せられる。

(ちなみにオーイシマサヨシの項で紹介している武道館ライブでバックダンサーを務めているのはこちらのリアルアキバボーイズである)
(さらにちなみに、リアルアキバボーイズは筆者の記事「O-MENZは2.5次元アイドルである」で紹介したO-MENZと同じ事務所とのこと。確かに存在というか立ち位置に何か通じるものがある)

まとめ

さて、ここまで見てきてのおおまかな傾向を簡単にまとめる。

  • 新曲MVの演出としてダンスを選んでいる

  • 自ら踊ることを選択している

  • プロの振り付け師が指導している

自分の曲をさらに魅力的にプロモーションするための手段としてダンスを選択していることがわかる。
そしてここからは筆者の推測だが、どのシンガーソングライターもポップスをメインにしつつもさまざまな音楽を吸収し自らのものにしてアウトプットしている印象がある。おそらく、ダンスも「『音楽』という自己表現」の範疇にあると捉えているから、プロに教わり真正面から取り組んだのではないだろうか。

また、近年のK-POPやそれに近いダンスグループの台頭、TikTokなどにおけるダンス文化の盛り上がりなどとも相関関係がありそうに思う。そう考えると、この「歌って踊れるシンガーソングライター」は今後さらに増えていくのではないだろうか。次踊るのは誰なのか?優里か、あいみょんか、さだまさしか?(もう踊っていたらすみません)

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