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おすすめ詩吟②海南行~南北朝のうっせぇわ~

南北朝時代のAdoちゃん

海海行(かいなんこう) 細川頼之(ほそかわ よりゆき)

人生 五十 功無きを 愧ず
花木 春過ぎて 夏已に 中なり
満室の 蒼蝿(そうよう) 掃えども 去り難し
起って 禅搨(ぜんとう) を尋ねて清風に臥せん

これも詩吟教室で初めて知った漢詩。作者は南北朝時代から室町時代初期にかけての武将で、足利義満を補佐し改革を断行したが諸将に疎まれ、領地の讃岐に帰ることになる。その際に京都にあった自分の屋敷を焼き払って出立するというロックな人である。むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないというヤツだろう。ちなみに10年後くらいに都に復帰を果たす。

詩の内容を今風に意訳してみると、私たちにもたいへん共感を呼ぶ内容となるので、ぜひAdoさんのヒット曲「うっせぇわ」の映像に戦国武将の顔を当てはめて妄想して欲しい一作。

意訳・海南行(讃岐に帰るわ)
どうせ自分の人生50になっても なんの功績もありませんよ
あっという間に季節は過ぎて、花咲く春かと思ったらもう夏半ばだよ
蒼蝿(悪口言って頼之を失脚させた奴ら)が部屋いっぱいに飛び回ってうっせぇわ!
追い払っても追い払っても ブンブンとうっせぇわ!
もう故郷の禅寺にでも入って、清々しい風のふくとこでスローライフするわ

何百年、何千年経とうと、いつでも職場の人間関係は煩わしいものだということがよくわかる漢詩だと思う。
普段よほど興味があるか、そっち系の研究者とかでなければ、お目にかかることはまず無い詩と人物との思いがけない出会いがあるのも詩吟の面白さのひとつかもしれない。

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