(46)鳥爺DJ奮闘記「人生で初めてのこと」
いつもありがとうございます。鳥爺です。
ディスコを明け渡し、放心状態で行くあてもないまま繁華街を歩いていました。
「まっちゃん!」
と、後ろから私を呼ぶ声が聞こえました。
振り返ると、声の主はいつも行く喫茶店で知り合った小池さん(仮称)です。
「まっちゃん、どこ行くんだい?」
最近、ここで知り合った人は、私のことをいつのまにか「まっちゃん」と呼んでくれていました。
「いえ、どこにも、、、」
と、我にかえり行くあてもなく歩いていることを自覚しました。
「時間ある? よかったら行かない?」
と、親指と人差指、中指で輪っかを作り、お猪口を傾けるような仕草をしました。
小池さんとはそんなに親しくはありませんが、どうしようもない空虚な気持ちが強かったので、そのお誘いに乗りました。
小池さんは、お猪口のジェスチャーのしたので、てっきり居酒屋と思いきや、この地では一番人気があるクラブに私を誘いました。
東京で言えば、銀座のクラブみたいな場所かもしれません。
地下のお店行くために階段を降りて行くと、ディスコとは違った大人の雰囲気が漂います。
その瞬間、「高そうなお店」と、緊張しました。
出入り口にはスーツをダンディに着こなした40歳代の支配人らしき男性がドアを開け、中に案内してくれました。
ディスコも初めて入った時は、異次元の世界で驚きましたが、このクラブも私にとっては異次元の世界です。
時間が早かったせいかお客様はあまり居ないようで、ホステスの女性が一斉に立ち上がり、「いらっしゃいませ」と挨拶をしてくれました。
ディスコに遊ぶに来る女の子と違って、ここはドレスアップされた大人の女性という雰囲気です。
「凄いな。これがクラブなんだ」
と、独り言をいいました。
小池さんはこのお店の常連さんらしく、全く動じる様子はありません。
席に案内してくれると、40歳代でとても品が良く、美しい女性が私たちの席に来てくれました。
「いらっしゃいませ。毎度ありがとうござます」
と落ち着いた声と振る舞いで、一瞬で人を惹きつける魅力を感じました。
「ママ、こんばんは!」
と小池さんが挨拶をし、ママと呼ばれたその女性と楽しそうに話をしていました。
すると「こんばんは」と、今度は私の向かい側の席に若い女性が座りました。
「こんばんは。はじめまして」
と挨拶をすると、いきなり肩をバシーンと叩かれました。
「痛てっ!?」
結構痛かったので、思わず声が漏れてしまいました。
初めての客を叩くなんて、この店はなんなの?
「初めまして、ではないでしょ??」
「はぁ~??」と私。
「わかんないの? わたし。キ・ミ・コよ」
と肩を叩いたのは、ディスコの店外で暴れていた若者を一喝した女性でした。
キミコは1周年記念イベントでもいろいろなアイデアを出してくれました。
しかし今、目の前にいる着飾った女性がキミコだとは、言われるまで気づきませんでした。
しかも大人っぽい、、、!?
「どう? ディスコのときとは違うでしょ?」
確かに違います。
ディスコの時は踊りやすい格好で幼いイメージでしたが、今は落ち着いた大人の女性です。
「ここで働いていたんだ?」
「そうよ。まだ新人だけどね」
そんな会話をしているうちに、キミコは人気があるようで別のお客様の指名が入って、席を立ちました。
その後、私の席に来た子は外国人の子たちです。
フィリピン人と中国人の女性が、15分単位くらいで入れ替わり立ち代りに席につきました。
1時間くらいしてからでしょうか。
私に異変が生じてきたのです。
それは私にとって、人生で初めてのことでした。
(つづく)
今日も素敵な一日になりますように(^o^)/