【Outer Wilds二次創作】リメンバー・ザ・タイム
■それゆけ創設メンバーズ
Slate「Feldspar、お前はまた探査艇をこんな砂まみれにして! メンテナンスにどれだけ苦労すると思ってるんだ!?」
Feldspar「そりゃ双子星を探索してたらそうなるだろう。整備が面倒なら機体に砂粒が入りこまない設計にしてくれよ」
Slate「そんな気密性を高くできるか。安全装置を取っ払って推力重量比を倍にしてやるから、砂をぜんぶ振り落とす速度で飛んでこい」
Gossan「やめないかSlate。そういうことを言うとこの馬鹿は本当にやってくるぞ」
Feldspar「馬鹿呼ばわりするんじゃない。私はいまもっとスマートかつ冒険精神に富んだ方法を考えついた」
Gossan「ほう。どんな方法か一応聞いておこうか」
Feldspar「ブラックホールのぎりぎり端っこを最大速度で飛んで、砂粒をぜんぶ吸い込んでもらうってのはどうだ?」
Gossan「聞くんじゃなかった」
Slate「ふむ……? それなら機体の耐圧性能のテストにもなるか……」
Hornfels「何を言ってるんだ、ふたりとも。そんなことのためにパイロットと船を危険に晒すなんて許可できるわけがないだろう」
Feldspar「いや、考えてみろよ。ブラックホールの引力圏への侵入と脱出をうまいことやれば、船の進路変更と加速ができるはずだ。そうなれば燃料をほとんど使わずにもっと遠い星まで行けるかもしれないぞ!」
Hornfels「それは画期的なアイディアだ! よしわかった、軌道計算は任せろ。それとブラックホールを間近で撮影した写真も欲しい」
Gossan「(今夜中に耐Gスーツの改良が必要だなと思っている顔)」
■ヒミツの素材
Mica:「モデルロケットの完成のお祝いだよ」とGabbroがミニ探査艇の彫刻をプレゼントしてくれた。大事に飾っておいたはずなのに、ちょっと目を離した隙にどこかにやっちゃったみたいだ。失くしちゃってごめんと正直に謝ると「ああ、気にするなよ。そういうものだから」と笑ってて、どういう意味だろうと思ってたら、Hornfelsが血相を変えて走ってきて「さっき観測所の望遠鏡をのぞいていたら、Micaのモデルロケットみたいな形をした量子のかけらが急に現れて消えたんだが!?」と慌ててた。
■シュタインズ・ゲートの贈り物
Chert「あのさお前。私の横にバナナを置いて『朝ごはん』って小声でつぶやくのやめような?」
■毎日がプレシャス(Gabbroとひよっ子)
「Spinelがいつも私の打ち上げの餞別にくれるとっておきの缶詰があるんだよ。旅の中で記念すべき出来事があった時に特別に開けるのさ。あとは宇宙で孤独を感じた時とか、Hornfelsの長話を耐えぬいたご褒美とか、なんとなくそういう気分になった時とかに」
「つまり特になにも考えずに開けるんだね、とっておきを」
「ちなみに今回は『ループ77回(仮)記念おめでとう』という設定で開封する」
「(仮)」
■いにしえの火種(Riebeckとひよっ子)
「なあ、なんだか今日ちょっとHalの機嫌が悪くないかな? お前たち、またけんかしたのかい?」
「失礼だなRiebeck。そんなしょっちゅうけんかしてないよ。私らももうひよっ子じゃないんだからさ」
「そ、そうか、ごめんよ。じゃあ何があったんだろう」
「それがRiebeckにはなんとなく言いにくいんだけど」
「え、なんだい!? わ、私がなにかしちゃったのかな!? それなら謝ってくるよ!」
「いや、実はHalの奴、ここのところHornfelsやTektiteからの頼まれ仕事で忙しくて、少しイライラしてたんだ。それであいつ気分転換したいって言って、前にRiebeckがNomaiの遺跡で見つけてきた文書の翻訳を私と一緒にやりはじめたんだよ。そしたらなんか、なんかすごいしょうもないダジャレが書いてあって、それでちょっと……」
「本当に本当に申し訳ない」
■閉鎖領域の憩い場で・客人のその後(ひよっ子とGabbro)
話が一息ついたところで、竜巻が来た。私らはそれをうまくやりすごしたけど、私が木の炉辺から持ってきたバケツの魚が空に吸い込まれた。魚は元気にぴちぴち跳ねながら、海面に飛び込んでいった。
Gabbroははるかな海原を眺めやった。
「私の予測では、あの一匹の外来種がこの惑星の生態系に深刻な影響を及ぼす可能性は、おそらく低いとみられる」
「あなたの環境影響評価に同意する。短い間だけど、水が合ってくれることを願うばかりだ」
■閉鎖領域の憩い場で・さまざまな友情のかたち(Gabbroとひよっ子)
「ああ、せっかくだしSpinelにも魚のお礼を伝えておこうかな。たまに無線で話してるんだよ」
「え、あ、それはちょっと……」
「ん、どうした?」
「実は前回のループでは……その……失敗したんだ。Spinelに釣り場を教えてもらったあと、魚を捕って探査艇に積んだんだけど、バケツに蓋をするのを忘れたみたいなことがあって、そのまま飛び立って……」
「嘘だろ相棒」
「無重力で水がぶわってなって、魚がコックピットに張り付いて前が見えなくなって、焦ってるうちに、まあ……その……なんか気づいたら太陽のほうに行っちゃって止まれなくて、全力で突っ込んで死んだ……」
「あー……うん。ちょっと待ってくれ。こういう場合のリアクションの引き出しが私にはない。いま適切な反応を考えるから」
「いやまあ私が死んだのはどうでもよくて」
「よくはないんだよ」
「今回のループではSpinelに話を聞かずに直接釣りをしてきて最短でここに来てるんだ。だからお礼を言っても何のことだってなる」
「ふむ。まあそれは大丈夫だろう」
「え?」
(無線のスイッチを入れる)
「ハロー、村長。Gabbroだよ。ああ、すべて順調だ。Spinelを呼んでもらえるかい?
……やあSpinel、久しぶりだね。え、昨日も話した? そうだっけ。なんだかもうずいぶん話してない気がするよ。実は、新人飛行士が例のスポットで大物を釣って届けに来たんだ。そうそう、そのひよっ子。君が釣り場を教えてくれたんだってな。
え、教えた覚えがないって? ハハ、とうとう物忘れが始まったな。あれだ、結構前にRiebeckの見送り会をみんなでやった時じゃないかい。君あの時かなり飲んでて、次の日の朝になんにも覚えてなかったろ。そうそう、多分そうだよ。
とにかく嬉しいよ、食べるのがもったいないくらいだ。そうだね、いろいろ話したいことはあるけど、またふたりでキャンプして夜通し語り明かす時のためにとっておこう。うん、ありがとう、そっちも体に気をつけて。愛してるよ。じゃあ、おやすみ」
(無線のスイッチを切る)
「ほら大丈夫だった」
「卑怯すぎない……?」
「長年の付き合いだからな」
「なんで私は宇宙に来てまで他人のいちゃいちゃを見せつけられなきゃならないんだ」
「別に、PorphyとGossanみたいなあれじゃないが。年寄りにはこれくらい言ってやったほうが喜ぶよ。Eskerあたりは泊まってけとかあれ持ってけこれ持ってけと面倒くさくなるからやらないけど。なんだ、羨ましいのかい相棒?」
「いいんだ。私にはHalがいるからいいんだ。超新星爆発とループを止める方法をかならず見つけて、そうしたら私のこの大冒険を三日三晩話してやるんだ」
「大事な親友をショック死させたくないなら、いろいろセンシティブな部分は適当にごまかしておけよ」
「やだよ。Halに作り話はしたくない」
「なにもかも話すだけが友情の形ってわけじゃないさ。どんなに伝えたくても、言わないほうがいいことだってあるんだから」
■shipless%(ひよっ子とEsker)
「ねえEsker。あなたは自分で船を操縦してアトルロックと炉辺を行き来してるの? ここから少し行ったところに古い探査艇があるみたいだけど」
「あれは昔とある飛行士がお前のようなひよっ子時代にやらかしたやつさ。私は使っていないよ。まあ、私ももうずいぶん木の炉辺に帰っちゃいないが、帰る時は別の方法を使ってる」
「というと?」
「まず宇宙服を装備してジェットパックの出力を最大にする」
「あっ。私それ聞かなくてもわかった気がする」
「ちなみに木の炉辺からここへ来る時には間欠泉と偵察機ランチャーを利用して……」
「私それもわかった気がする」
■友達思い
「Halも私と一緒に宇宙に行こうよ。どうだい、ためしに私と一日入れ替わってさ、Gossanの訓練を受けてみるってのは? 宇宙服を着てればバレやしないよ!」
「ええ!? でもちょっと確かに……面白そうだな……」
「そうこなくっちゃ!」
「おい、ひよっ子。きょうの訓練をさぼったな? Halがお前のふりして無重力洞窟に来ていたぞ」
「うわ、Gossanの目は騙せなかったか……」
「一目瞭然だ。なにしろお前より格段に動きがよかったからな。あいつは素質がある」
「えっ」
「飲み込みが早いし判断も正確だ。ちゃんと人の注意を聞くしな。ちょっと慌てるところもあるが、経験を積めばじゅうぶん改善されるだろう。明日からでも飛行訓練も受けさせてみようと思ってる」
「えっえっ」
「Halが宇宙に行くなら自力でNomai語の翻訳もできるからツール開発ももう必要ないな。お前も親友を応援してやれよ」
「待って、待ってくれ! 宇宙には危険がいっぱいなんだ! 探査艇は死の罠だし、幽霊物質には殺され続けるし、太陽には吸い込まれるし、急に出たり消えたりするサボテンあるし、ループ仲間はろくな説明もなしに死ぬまで眠らせてくるし、変なシャトルで星系外まで連れてかれて戻れなくなったりするし、ループ仲間はどんなに死に疲れててもハンモック譲ってくれないし、何にもしてないのに急になんかガンってなって死んだりするし! そんな所にHalを行かせられないよ!!」
* * * *
~Gabbroの島~
「……という夢を見た」
「なんで私の悪口2回挟んだ?」
「考えてみたら、あのタイミングで博物館の記憶の像のいちばん近くにいたのは私じゃなくてHalのほうだったかもしれないんだよ。想像するだけで倒れそうだ。私は自分が死ぬのは慣れたけど、友達が砂に閉じ込められて圧死したりアンコウに食べられたりするなんて話、耐えられない」
「……。まあ、うん。私も、お前みたいにネジがとんで変なところに刺さってるような奴でよかったと思うよ」
「ああ、Riebeckじゃ間欠泉の入口で引っかかっちゃうかもしれないし……」
「というかループの自覚があればみんな自分みたいにむちゃくちゃするっていう前提で考えなくていいだろ」
「そりゃGabbroはそういうタイプじゃないし、そうじゃなきゃいけないとも思わないけど。でもこれがFeldsparだったら絶対私よりもっと無謀で突飛な挑戦をやってるはずだよ?」
「もっとおかしい奴を基準にするな」
■相棒と旅をしよう(Gabbroとひよっ子)
「やっぱり私もずっとここにいるのは退屈だし、ループ仲間同士、たまには協力して一緒に旅してみるのもいいよな」
「!! いいよ!! 一緒に行こう、どこがいい!? ブラックホールとか落ちてみたくない!?」
「先に飛行マニュアルを見せてもらっていいかい。私一人で動かさなきゃいけなくなった事態に備えておく必要がありそうだ」
「そうだね、Gabbroの船とはたぶんいろいろ違うだろうし。わからない所があったら聞いてくれ。と言っても私もまだまだだけどね。初めての場所に着陸する時はいまだに失敗ばかりだよ」
「ハハ、失敗も仕事のうちさ。なにしろお前はカレンダー上では今日が初飛行なんだからな」
* * * *
「どうだいGabbro? だいたいやりかたはわかった?」
「わからない」
「え!? どのへんが!?」
「何もわからない。機体強度も操作性もこれだけ上がってるのに、どうやったらそんな事故を起こせる……?」
「えっえっえっ」
「自動操縦はまあまだ回避に難がありそうだが……なんだ航行記録からマーカーをつけるとか……それに速度同調ってなんだそのチート……こんなのがあって一体どうして……」
「えっなに速度同調? なにそれ?」
「お前、とりあえずこの飛行マニュアルを擦り切れるまで読んでこい。話はそれからだ」
「擦り切れようがないよ!? 22分で新品に戻っちゃうんだからさあ!!」
[リメンバー・ザ・タイム/了]