【Outer Wilds二次創作】炉辺語り
■ひよっ子とHornfels■
「なあHornfels、さっきArkoseがまた幽霊物質に石をぶつけて遊んでいたよ。注意したけど、そもそももっとちゃんとした柵で囲うべきじゃないか?」
「心配ないさ。度を越す前にEskerがアトルロックからリトル・スカウトをあの子の足元に飛ばして警告を与えてくれるから」
「そんなピンポイント高精細射撃を!? 月から!?」
「月管制局が宇宙プログラムの最拠点だった頃は “早撃ちのEsker” で鳴らしてたからな」
「月管制局の仕事とは……?」
■ひよっ子とGabbro①■
「実はあの量子の詩は、4行の並び替えのほかにもちょっとした仕掛けがあるんだよ。聞きたい?」
「なんだって! 聞きたい」
「詩全体から何文字か消して任意の順に並べ替えると、『Gabbro』の文字が現れる」
「それは現われてくるだろ」
〜ループ後〜
「Gabbro、あなたは間違ってたよ! bの字がひとつ足りなかった!」
「わざわざ確認しに行ってくれたのかい、相棒?」
■誰かの記録■
(※お好きな旅人で想像してください)
いつだったか旅人の皆で「探査艇もスカウトみたいに好きな場所に一瞬でワープさせられたら便利なのになあ」って冗談半分で言い出して、そうだそうだって盛り上がったんだが、それを黙って聞いていたSlateがおもむろに口を開いて「中に乗る奴の安全性と周辺への影響を一切考慮しなくていいなら、いくらでもやりようはあるぞ?」とにこやかに言った。あんな怖い笑顔を見たのははじめてだったと思う。Gossanですら「今のはお前らが悪い」と言ってきて皆で謝った。
■ひよっ子とGabbro②
「前から気になってたんだけど、Gabbroはどうして上の焚き火の近くでハンモックを張らないんだい? 火のそばのほうが安心できるし、焦がしマシュマロも楽しめるだろう」
「……ああ、Hornfelsが私のことを『わざとマシュマロを焦がす奴』と言ってるのは知ってるよ。ループ仲間だからお前には話してもいいと思うが、あれには事情があるんだ」
「おや、いったいどんな事情で貴重な食料をわざと発ガン性物質に変化させているのかな?」
「あれはそう、Micaがはじめて自分でモデルロケットを作った時のことだった。打ち上げ後にすぐ失速してしまって墜落炎上したんだが、それがたまたま昼寝中の私のすぐ近くでね。すさまじい閃光と轟音におどろいて飛び起きたら、まわり一面が火の海だよ。Tuffが消火に駆けつけてきて、Spinelも釣った魚ごとバケツの水をぶちまけたりして火を消し止めた。おかげで私は助かったんだが、開封したばかりのマシュマロがブラックホールの卵さながら真っ黒焦げさ。でもまあべつに怪我もなかったし、ロケットの残骸を抱えてべそをかきながら謝るMicaがちょっとかわいそうだったんで、私はいつもこれぐらい焦がして食べてるから構わないよって言って、そのままぜんぶ食べてやったんだ。それから私は “マシュマロ焦がしの宇宙飛行士” になったのさ」
「そうだったのか……! うん、Gabbroはわりとそういう優しいところがあるもんな」
「だろ? いま適当に考えたにしては、私という存在を過不足なく表現した名エピソードだと思う」
「聞いた時間と褒めた時間を返してくれ」
「ハハ、だからループ仲間なら話せるって言ったろ? 太陽が時間を返してくれるさ。ところで上の焚き火のところにハンモックを掛けない理由だけど」
「そこに戻ってくるのか。今度は時間を有益に使わせてほしいね」
「たぶん役に立つと思うよ。実は、時々ほかの島が降ってくるんだ、あそこに。降ってきたなと気づいた瞬間にだいたい死んでる。それであっちで寝るのはやめにした。さすがにモデルロケットが落ちてくるより怖いからね」
「私があそこの焚き火を借りる前に教えておいてくれ、そういうことは」
■RiebeckとGabbro■
「休み中に訪ねて悪いね、Gabbro。巨人の大海で見たっていうNomai遺跡の話を聞きたくて」
「いつでも歓迎するよ。でもまだ本格的な調査はしてないから、正直たいした土産話はないんだ。あと散らかってるが気にしないでほしい」
「帰ってきたばかりだもんね。仕方ないよ」
「そう労ってくれるのはRiebeckくらいだ。Hornfelsなんかは『お前はたとえ無限の休みがあっても部屋の片付けなんかしないで寝てるだろう』とか言うんだから」
「あはは、ひどいなあ。Gabbroは私と違ってなんだかんだと管制の細かい要請を引き受けてるのにね。おっと、本当に散らかっ……うん、いろいろ床に置いてあるね。気にしないでと言うけど、私はすぐいろんなものを蹴飛ばしちゃうから、気をつけないと……」
「ああ、そうだな、怪我はしないように気をつけてくれ。大海で拾ってきたNomaiの食器みたいなのがそのへんに置いてあるから。デザインがいかしてたんでいくつか持ち帰ってきたんだ。なんならひとつ要るかい?」
「博物館に寄贈してくれ! オレが今すぐぜんぶ片付けるから!!」
■水をきれいに■
「あー、テステス、こちらは村長のRutile。ただいまより第22回間欠泉ゴミ拾い競争を始める。水は木々をはぐくむ命の源であり、Hearthianの故郷だ。安全に気をつけて、ふるって参加してほしい。釣り針、ウィンチ、ほか宇宙服標準装備の使用は許可されている。モデルロケットを故意に墜落させてゴミを燃焼させたり、他の参加者の進路上に木を切り倒して妨害するといった行為は、厳に慎むように。1番功労のあった者への褒賞は、いつもどおりPorphyの『とっておきの樹液ワイン』バケツ1杯分だ。それから今回は特別に副賞として、先日発掘された『Gossanがデートの誘い文句を練習する様子が収録されたレコーダー』を贈呈する」
■はてしない物語■
パターン①
「管制局、こちらは発射台のSlateだ。今からひよっ子が発射コードを取りに行く予定だったが、まだ起きてこなくてな。おおかた緊張してなかなか寝つけなかったんだろう。もう30分くらい寝かせておくよ。急ぎの旅って訳じゃない。なんだ、新人飛行士には優しいんだなって? そりゃあそうだ、大事な探査艇を居眠り運転でぶつけられちゃ敵わないからな!」
パターン②
「管制局、こちらは無重力洞窟のGossanだ。ひよっ子に最後の訓練をつけてたんだが、あいつときたらこの期に及んで速度同調に失敗して、岩壁に頭をガン!とやってね。いまTuffに面倒をみてもらってる。いや、軽い脳震盪だ。焼きマシュマロのひとつも食べれば治るよ。でもそっちに行くのが少し遅れそうだから連絡した。出発を延期させるべきかって? なに、心配なんてものはいくらしたってきりがないんだ。あとは実地の経験を積ませてやるのみさ。30分もしたら向かわせるから、私の自慢の教え子にちゃんと発射コードを渡してやってくれよ!」
パターン③
「わが友、宇宙飛行士! ビッグニュースだよ! えっ、この彫像かい? これもすごいものだけど、それよりもっと大変なんだ! ついさっきMoraineが、シグナルスコープでFeldsparのハーモニカの音を一瞬だけキャッチしたんだ! いまHornfelsが大慌てであちこちに連絡してて手が離せないんだ。それで『すまないが発射コードはもうしばらくしてから取りに来てほしい』ってさ。とりあえず30分くらい、そのあたりでいっしょに時間を潰そう。ああ、親友、お前の初飛行の日にFeldsparの消息が届くなんて(ぐすん)、まるであの英雄がお前の旅立ちを祝ってくれてるみたいじゃないか……うぐっ……興奮で吐き気がしてきた……」
■Chertと流れ者を旅してみた■
「ダムの表面完全性がゼロ!? ありえない、さっきまで異常なんかなかったのに! くそっ、こんなのはスカウトの故障だ!」
「Chert、落ち着いてくれ、なにか別の作品っぽいセリフも混じってる」
「うわあああ! ダムが崩れる! もうおしまいだ! こんな時にこんな場所にたどり着くなんて、なんて不運なんだ!」
「Chert、落ち着いてくれ、だいじょうぶだ、みんなループでもとに戻れる」
「うわあああ!! お前もなにか別の作品っぽいこと言い出してる!!」
■ひよっ子とGabbro③■
「ああ、お前か! 無事にここに辿り着けてよかった。はじめてのソロ飛行は最高だろ?
……うん? 何を言ってるんだって? 前にも会ったじゃないかって? いや、お前こそ何を言ってるんだ。私らがここで会うのはこれがはじめてだろう。タイムループ? 私とお前が? ふむ、そいつはじつに楽しい想像だな。宇宙の旅でお前も創作活動に目覚めたのかい、いいことだ。
……なんてな。冗談だよ、相棒。名づけて『タイムループに気づいてないGabbroさんごっこ』だ。ハハ、びっくりしただろ?
……え、いや、待ってくれ。あー、うん、そうだな、ちょっと悪ふざけがすぎた。謝るよ、すまない。なあ、頼むから泣かないでくれ、私が悪かった。もうしない。大丈夫だよ、うん、お前ひとりじゃない。ちゃんと私も覚えてるからな。ごめんな」
■第22回間欠泉ゴミ拾い競争その後 MoraineとGneiss■
「けっきょくGossanが優勝したから誰も聞けなかったね、あのレコーダー」
「まあGossanが本気のフル装備で来たら、宇宙プログラムの若い旅人連中が勝てるわけないからな」
「私はGossanの信号をずっと追尾してたけど、途中から木の炉辺の反対側に行ったり大気圏外に出たりしてた。あんなの止められるのFeldsparしかいないよ」
「さすがにそれはスコープの故障だろう、Moraine。見てやるから持っておいで」
「あとPorphyが鬼気迫る勢いで善戦してた」
「2人で聞けよもう」
■ひよっ子とChertで他の旅人の話
「それでね、Feldsparの置き手紙いわく、『私だってスカウトを使うこともあるんだよ』ってさ」
「ははは、聞いたことがあるよ。『私はね、まだ誰も辿り着いたことがない場所に自分の足で降り立つためにパイロットをやっているんだ。スカウトに先を越されるなんて我慢ならないのさ』と言ってたらしいな」
「まさにFeldsparだね」
「でも、べつの理由を聞いたことがあるんだ。……聞くかい?」
「なんだって! ぜひ教えてくれ、Chert」
「スカウトが発明されて間もない頃、性能テストを兼ねた射撃大会が開かれたんだ。遠くの的にスカウトを飛ばして命中精度を競い合うってやつさ。昔のはワープ機能もなかったから、狙った所にちゃんと一発で飛ばせることが今よりずっと大事だったんだよ。その大会で、Eskerが2位のFeldsparに大差をつけて優勝して」
「Eskerって本当に何なの?」
「で、そのことでEskerが冗談のつもりで『なんだ、Hearthian最高のパイロットも大したことないな』とか言っちゃってね。で、ここからはまあ、噂なんだが、Feldsparはそれでプライドをいたく傷つけられて、以来スカウトをあまり使おうとしなくなったって話がある」
「うわあ……」
「ちなみに私はその大会の時のEskerに次ぐ成績を訓練で叩き出したことがある。アトルロックに行くたびに射撃のコツを教わっているからね」
「月管制局の仕事とは……?」
■Marlの情熱■
「ふむ、どうも義足の調子が悪いな。Slateに見てもらうか」
「やあTektite! 義足を作り直すのかい? 材料にあの木を切り倒してこようか?」
「いや大丈夫だ。間に合ってる」
「訓練をやりやすくするために、無重力洞窟の壁を掘削して内部を拡張できないかって話があるらしい。ああ、とんでもないことだ。あんな恐ろしいものをこれ以上広げるなんて……うう……」
「やあTuff! 心の平穏のために洞窟の足場やウィンチを強化するってのはどうだい? 材料に木がいるならいくらでも言ってくれよ!」
「いや大丈夫だ。間に合ってる」
■Tektiteとひよっ子
「しかしMarlはあの高さから落ちて骨折だけで済んでいるんだから、ものすごい強運だな。あやかりたいものだ」
「頭もだいぶ打ったんじゃないかって村長は言ってたけどね」
「今からMarlを宇宙プログラムに参加させて、あのブリキ缶で闇のイバラに向かわせるか」
「いいアイディアだ、Tektite。あそこでMarlが適度にひどい目に遭ってくれば、対イバラの種子の戦いにおいて私らHearthianの勝利は確実だね」
■ひよっ子とちびっこたち
「やあ、シグナルスコープを自分で作ってみたんだって、Tephra?」
「うん! 旅人たちがだれも貸してくれないから遊べないってGneissに言ったら、なら自分で作ってみればいいって。Moraineもそういうことならって自分のを見せてくれたから、まねしてかっこいいのが作れたよ!」
「それはすごいな。私もひよっ子の頃はHalと一緒に見よう見まねでいろんなものを作ったよ。それがNomai語の翻訳機づくりに生かされてる」
「え? ひよっ子はいまもひよっ子でしょ?」
「Hornfelsは君に宇宙飛行士への敬意について教えるべきだろうな」
「でね、このスコープを使うと、なんでかGalenaの声が大きく聞こえるんだよ」
「そうなの? どれどれ、Galena、なにか喋ってもらっていいかい?」
「また遊んでくれてありがとう」
「うわっ! 本当だ! いったいどうなっているんだ。……おや、このスコープの鏡筒に使われているマシュマロ缶、横に『月基地』って書いてあるな」
■ひよっ子とFeldspar
「おっ、戻ってきたのか、ひよっ子。なにか発見はあったかい?」
「教えてくれた空洞のツルの奥に行ってみたよ。あなたのメモも読んだ! それでFeldspar、ちょっと頼みがあるんだが」
「ジェットパックの補給か? 好きに使ってくれてかまわないぞ」
「ありがとう、でもそうじゃなくて。クラゲの頭を削ってきたから、そこの火と鍋を貸してほしいんだ」
「うん、私のメモを読んだっていうのは私の聞き間違いだったかな?」
「Feldsparはこれを生で食べたんだろう。きちんと加熱調理したらいったい何が起こると思う?」
「本当にやめておけ。なあ、ひよっ子。お前はここに辿りついた2人めのHearthianだ。それは十分に驚嘆と嫉妬に値する。この私だってお前くらいの頃にそんなことはできなかったからな。
それでも、お前がここから無事に出られる保証なんてない。わかるだろ? お前はアンコウの腹の中でこう叫ぶことになるかもしれない、『食われて死ぬ前にもっとましなものを食っておけばよかった!』とな。そんなのは悲惨すぎる」
「うん知ってる。でも心配はいらないよ、これが私の最後の食事になるってことは絶対にないから!」
「そうか。なるほど。自信過剰なのは訓練生時代から変わってないんだな。Gossanはなにを教えていたんだ。私のひよっ子時代を思い出すけど」
■ひよっ子とFeldspar 続き
「まあ、ともかく火に当たって、まともなものを食べて、準備を整えて出発してくれ。お前がここから無事に木の炉辺に帰れなかったら、私もいよいよGossanに合わす顔が無い」
「みんなの所に帰る気はあるんだね、Feldspar」
「……まあ。いつかは、な」
「あなたはずっと長いこと、私らの英雄でありつづけるために過酷な挑戦を続けて、道を切り開いてきたんだ。これからはもっと自由に、好きなように旅をしたり休んだりしてほしいと私は思う。でも私はずっと知りたいと思ってもいるよ。Feldsparがあの村に帰ってきたら、HornfelsやGossanやSlateはどんな顔をするんだろうってことを。
これは私の仮説だけど、きっとみんな、今日は人生でいちばん最高の日だって顔になる。たとえ次の瞬間に太陽が爆発するようなことがあったとしてもね」
「うん。……そうだな。そうだね」
「……! もしかすると、このクラゲを被っていけば、アンコウに飲み込まれても不味すぎて吐き出されて生還できる可能性が……!?」
「お前はそんな恐れ知らずだっけ!? でも面白そうだなそれ!?」
「そうこなくっちゃ! さすが英雄Feldsparだ!」
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お読み下さってありがとうございました!
SNSで仲良くさせていただいている同期ひよっ子の馬矢ン船長氏が、雑談ネタを漫画にしてくれました。ありがとうございます! わーい。絵にすると本当なにしてるんだこいつとしみじみ思う
馬矢ン船長氏の他の作品は以下のサイトからご覧いただけます。
沈没船シー・ホース号
かっこよさと寂しさと清々しさの入り混じるFeldsparの漫画や、現在制作中の先輩飛行士たちの旅立ちの物語すごいからみてほしい。Gabbro先輩の10点満点リラックスポイントはどこなのですか。気になる。