とある作成中の文章を投稿してみる。いわゆる下書き書き下ろしで、ここからどう変化するか記録用に。

　地域猫。
　耳が虫食いのように欠けた猫。
　地域住民の認知と管理を得て、その地域と共存する特定飼い主のいない猫。
　人慣れしているくせに、つれない距離感を保つ猫。
　そんな地域猫と仲良くなる方法を知っているか。私は心得ている。

　私が暮らしている地域には小さな商店街がある。区画の端から端までちゃんと屋根があり、一応はアーケード街のようなモノだ。
　揚げたてコロッケが美味しいお肉屋さん。ブリのカマ焼きが旨い魚屋さん。台湾パイナップルも扱っている八百屋さん。飲食店だって豊富なラインナップだ。カレーパンがゴツいイートインのパン屋さん、焼き鳥専門居酒屋、九州地方本格もつ鍋屋、行列のできないラーメン屋さんなどなど。一通りの店が揃ってはいるが、シャッターが降りたままの店舗跡もあるにはある。そんな特筆すべき特徴がない地元の小さなアーケード街。いや、ある。特徴は地域猫が多く棲みついている商店街だ。
　餌もトイレも管理されて眠るところにも困らない地域猫に、私もなりたいと思うことが時たまある。そんな時は用もないのに商店街に出向き、猫の喉元をゴロゴロ鳴るまで撫でまくるのだ。
　猫撫でたいか。ゴロゴロ聴きたいか。地元住民と適度な距離感を保った地域猫と仲良くなる方法を教えよう。

　まずは身だしなみ。香水をつけたり、シャンプーの香りをまとったり、アロマオイルとかお香とか、強い匂いを発するモノに気をつけること。わざとらしい香りの柔軟剤を投入した衣服も、猫にとっては刺激が強過ぎる匂いだ。パン屋さんのツナサンドレベルの匂いにとどめておこう。
　商店街のどの店でもいい。一言許可を得て、猫用液状化おやつのパッケージを持ち歩くのも手だ。地域猫は餌もしっかり管理されている。健康管理のため餌の与え過ぎに注意だ。
　それと、地域猫同士にも意外とナワバリがある。仲良く連れ立っている猫たちもいれば、特定のお店の用心棒であるかのようにどっしり構えて他の猫を寄せ付けないヤツもいる。狙いはそいつだ。単独猫だ。
　猫にはこちらから近付いてはいけない。単独猫であればあるほど野良人との付き合い方を把握している。無遠慮に接近すれば、磁石のようにするりと離れてしまう。
　うちの商店街には休憩用だったり、おしゃべり席であったり、食べ歩きながら座れるようにベンチが設置してある。実はそこが猫ポイントなのだ。
　狙いの猫を見つけたら、一番近くのベンチに静かに腰掛ける。ちゃんと猫も心得ている。おしゃべりしている人間には近付かない。暇そうにしている単独人間に「おまえ、何用だ？　ここはアタシのナワバリだぞ」とチェックしに来るのだ。
　そんな奴にモフモフ用の手をぶらつかせたり、液状化おやつのパッケージをチラホラ見せつけて、そして最も重要なコツは猫の顔や目を見つめないことだ。
　目を合わせたら猫は寄ってこない。一定の距離を置かれてじとーっと監視されるだけで終わりだ。
　ちらりと顔を猫の方へ向ける。でも猫の目や顔は見ない。前脚の付け根辺りだったり、尻尾の根元だったり。あるいはちょっと手前の地面とか、猫越しの向こう側の景色とか。君に興味がありますよ、とさりげないアピールが大事だ。
　もしも目と目が合ったら要注意だ。目線をかち合わせるのは敵意がある意思表示。喧嘩上等。宣戦布告。ここは見窄らしく身体を縮こめて自分の足元を見つめて大人しくしているがいい。
　あとは猫の方の気分次第。最短距離で接近してくるか、くるり距離を測るように円を描いて寄ってくるか、去ったと見せかけて遠回りして背後を取るか。
　さて、撫でまくる準備はいいか。猫は気難しい生き物だ。特に地域猫は人慣れしているぶん丁寧な取り扱いが必要だ。
　心を整えたか。はやる気持ちを抑えて静々と手を差し伸べよう。
　まずは指先の匂いを嗅がせる。すんすん、地域猫はこの人間が何者なのか匂いで判断する。香水やお香、強いシャンプーの香りなどは身にまとっていないな？
　地域猫が指先の匂い確認を終えて、すっと頭を下げたらそれは猫に認められた証拠だ。その手をスライドさせて指の背中で猫の頬にそっと触れよう。意外と強い力で猫は後頭部を押し付けてくるはずだ。
　触れ合うことができれば、もうその地域猫との契約が交わされたようなものだ。撫でまくるといい。モフりたければモフるがいい。ただし抱き上げるのはNGだ。
　猫パンチを繰り出されない程度に撫でたら、その手を猫の喉に回す。人差し指と中指でトコトコと歩くように喉を掻き回す。これが猫にとって至上のひと時なのだ。
　やがて、ゴロゴロというよくよく聴けば不気味で不明瞭なつぶやき音が鳴り出したら、猫側も準備が整ったサインだ。
　喉をぐりぐりやりつつ、もう片方の手で鼻筋から狭いおでこへとなぞるように指を這わせる。そのまま頭を包むように撫でて、後頭部の毛皮の密集地帯を掻き分けて、アレを探せ。そう、アレだ。ファスナーだ。
　ファスナーのスライダーを見つけたら、そこからは一気に行動すべし。誰にも目撃されないよう気を付けて。

これより改稿してみる。
より読みやすく、展開も急角度になるように。

次回に改稿後を更新して読み比べてみます。