理念と行動を統合する

ベン・ホロウィッツ「What You Do Is Who You Are (原題)」とクレイトン・クリステンセン「How Will You Measure Your Life? (原題)」の2つの本を読み、多くの内容が重なっているとともに、自分の適応障害についても得られる知見があったので、自分用にまとめる記事です。


言行一致は、とても大事

一言でまとめてしまうと、こう。
もう少し長くするなら、理念・戦略(夢として語っていること)と、行動・文化(実際に行っていること)を一致させることは、企業でも個人でも同じく大事
企業で言えば、「n年後にこうなりたい」という長期の戦略があるとき、それにつながる行動を末端の社員は取れているか?その行動をとれるような企業文化があるか?
個人で言えば、「将来こうなりたい」という夢があるとき、その夢に沿った行動を自分は日々取れているか?その行動を取れるくらい自分を信じられているか?

本文中にたびたび登場する以下の言葉は、これと同じ意味。

  • 「徳とは信条ではなく行動に基づくべきだ」

  • 「行動は理念にまさる」

  • Actions speak louder than words. 

  • Culture eats strategy for breakfast. 

企業倫理の観点

「What You Do Is Who You Are」の方で、トップの掲げた「理念」が、現場で実行される「文化」に飲み込まれてしまったウーバーの事例が挙げられていた。

ハイパフォーマーなら、セクハラしてもヨシ!

競合に勝てるなら、法律違反してもヨシ!

トップがこんなことを言いたかったはずは無い。無いが、実際に組織の中で行動が長年蓄積されていった中で、このようなメッセージになってしまっていた。

企業戦略の観点

適切な行動を実行する【OKR】

What You Do Is Who You Areの方には「文化は一度の判断ではない。長年のさまざまな行動が積み重なるうちに自然にできあがる決まりごとなのだ。」の文言が、How Will You Measure Your Life?の方には、「資源配分の方法が、自分の決めた戦略を支えていなければ、その戦略を全く実行していないのと同じだ。」の文言がある。
ともに、戦略を支える適切な行動を取れているか?と問いかけている。

======ここから個人の感想======

企業(個人)が思い描く「戦略」と、現場で取られる「行動」には、だいぶ大きな溝がある。その溝を埋める手段として、KPIOKRなど、いろいろな手段が提案されている。

このうち、「戦略を支える適切な行動を取れているか?」という文脈では、OKRの方に軍配が上がる。
組織のObjectiveを実現するために、我々は何をKey Resultとして実行すればよいのか?」を、経営層・部署・チーム・個人ごとにすり合わせていくことで、常に「企業の戦略を実現するために、適切な行動は何か?」を振りかえる機会が生まれる。

一方の「チームのKey Performance Indicatorを100%達成するためには、我々は何を実行すればよいのか?」という発想でも一見あまり変わらないように見えるが、これのまずいところは、組織の戦略とKPIの指標が乖離した際に修正しづらい点にある。「KPIを100%達成しなければいけない!!必達!!どうしよう!!…………法律違反(捏造・残業・パワハラ)すればヨシ!!」という、短期目標を達成する方向にバイアスがかかってしまう。

======ここまで個人の感想======

適切な人を採用する【経験の学校】

人を採用するときにも、「やれると言っていること」と、「やったこと」が一致しているかを基準に考えると、落とし穴にはまりにくい。

「How Will You Measure Your Life? 」に載っていた、「経験の学校」モデルと、IntelとSAPの合併会社のPandesic社の事例はとても参考になる。

『「正しい資質」の考え方は、 … 候補者が翼や羽をもっているかどうかを調べる。 … 「経験の学校」のモデルは、候補者が実際に空を飛んだことがあるか、あるとすればどのような状況で飛んだのかを尋ねる。このモデルを使えば、候補者が今後対処する必要のある問題に、以前の任務で実際に取り組んだ経験があるかどうかを判断できる。』

『パンデシックの経営陣は、経歴こそ華々しかったが、新規事業を立ち上げた経験のある人材は一人もいなかった。最初の戦略が不調に終わったとき、だれも戦略を修正する方法を知らなかった。』

======ここから個人の感想======
以前、東大の松尾先生が、(東大生ではなく) 高専生を対象にした技術コンテストを開催したという記事を読んだ。「東大を出ている」という「資質」ではなく、「実際に機械を作った」という「経験」を買っているということで、これも、この経験の学校モデルと合いそうだ。

就職活動の時に経歴を話す際、「経験の学校」モデルでの自分の実績を考えると、伝わりやすくなるかもしれない。採用担当者としては「あなたを雇って、我が社に何か良いことがあるのですか?」と聞きたいはずなので、それに対して直接的に「私は、実際に○○をした経験があります。御社は今△△から○○の領域にシフトしようとされていますが、私はそこでお役に立てると思います」というのが言えれば、通りやすいのではなかろうか。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば人は育たず。
やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば人は実らず。

山本五十六

======ここまで個人の感想======

自分戦略の観点

資源を本当に大事なものに振る:会社編

自分が、会社を「雇って」片付けたい「仕事」とは何か?長期的に見たときに、自己と乖離している職を選んでしまうと、不幸になってしまう。
『人のためになる仕事をするには、経営者になればいい …… 従業員が毎日仕事を終えて、よい一日を過ごした時のダイアナのように、動機づけ要因に満ちあふれた生活を送っているという満足感を抱きながら家に帰れるよう、一人ひとりの仕事を組み立てる責任を担っている。……』
自分を経営するに当たって、会社をどう使うか?という観点から考える。

資源を本当に大事なものに振る:自分編

======ここから個人の感想======

まず、自分が何を大事にしているかを認識すること。
そもそも自分に何が必要か、本当に大事なものは何かを認識していなければ、大切にできるはずがない。
忙しさに溺れて見えなくなる前に、一度じっくり考えておく必要がある。自分は、適応障害で休職になった経験がとても、とても役に立った。

続いて、その大事にしている「戦略」に対して、適切な「行動」をとれているかを考える
自分の場合は、「自分は家族を大事にする人間である」と思いながら、日々帰宅は深夜で、疲れきっていて家族とzoomすることもできなかった。だから、乖離した。自己を統合するためには、言行を一致させる必要がある
また、「体が資本」と頭では分かっていながら、睡眠を削り、休日出勤し、運動の時間も取らずにPCに向かっていた。だから、乖離した。
なので、以下のことを自分に課すようにした。この1ヶ月くらいは、だいぶ自分が統合されている気がする。

  • 食事を欠かさない。栄養バランスを考えて、ちゃんとした、温かいものを、作ってくれた人に感謝しながら食べる。

  • 運動は大事。毎日エアロバイクをこぐ。

  • 睡眠は大事。21時から6時まで寝るのが必要なら、そうする。スマホを21時から「睡眠」モードにして、ネットが使えないようにする。

こういう話題の時に毎回引用させていただいている記事を、ここにも貼っておく。
自信とは「分の事をじられる行動を普段しているか」。ここにも、「行動」の文字がある。良い記事だ。

「三月のライオン」より、プロを目指す高橋君の言葉。

「逃げたり」「サボったり」した記憶って自分にしかわからないけど……
ピンチの時によく監督に「自分を信じろ」って言われるんすけど
でも自分の中にちょっとでも「逃げたり」「サボったり」した記憶があると
「いや…だってオレあの時サボったし…」って思っちゃってそれができないんです
だからうまく言えないけど
そういうの失くしたかった……って事ですよね

三月のライオン / 羽海野チカ より

[2024/10/3追加メモ]
スティーブン・コヴィー『7つの習慣』にも、「自分が最終的に成りたいものに対して、適切な行動を取れているか」というほぼ同じ趣旨の記載がある。このような記載が多くの本に出るということは、それだけ日々の生活の中で実践するのが難しいという事なのだろう。

======ここまで個人の感想======

最後に

日々のタスクに追われているうちに、いつの間にか忘れてしまっていた概念を思い出させてくれる本だった。

「行動は理念に勝る」は、これから戒めとして自分の机に張り出しておく

これとも親和性があった。併せて読んでおくと吉かも。


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