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お弁当を温めずに食べていた話

僕は高校生の頃に2年間、専門学生の頃に1年間、コンビニでバイトをしていた。

あまり長い時間仕事をしていたわけではないが、休憩は15分と30分の休憩をもらえていた。
僕はその30分を、お昼や夕飯を食べたりして過ごしていた。

コンビニでは、多かれ少なかれ廃棄がでる。ホットスナックもあれば、お弁当だったりもする。
店舗にもよるのだろうけれど、高校時代にバイトしていたコンビニはそれらを持ち帰ることは出来ずとも食べることは許されていた。

当時の僕の仕事のクオリティはは可もなく不可もなく、たまに褒められたまにミスを注意されるぐらいだった。
嘘かも、実際はちょっと下だったかもしれない。ごめん。

心が小さい僕はその廃棄を食べるときに「あいつ仕事がイマイチなのに弁当食うのかよ」とか思われたくなくて、温めなくても食べられて、そこまで体験が悪くないものを選んでいた。
おにぎりやサンドイッチはその最たる物で、比較的数も出やすいためあまり気を使わずに食べられた。

逆のときもある。
住宅地という立地の関係で、日中のお客さんは近くの建築現場の仕事や介護の方、夕方も派手な買い物をする人は少ないお店だった。
日常使いだからこそ、安く済ませるためにお弁当類が残る日もあった。もう10年以上前の話なので記憶は定かではないけど、ちょっと高い系が多かったように思う。

そんな時どうしていたのか。
前述の通りなにか思われるんじゃないかという気持ち……もはやただの被害妄想なのだけれど、それによってバックヤードから出ずにこっそり食べることを選んでいた。
そう、表題通り温めないで食べていた。

海苔弁のような比較的食べやすいもの、豚カルビのような温めないとちょっと微妙なもの、スープがジュレ状になったスパゲティ。いろいろ試した気がする。豚カルビは麦飯だったし、比較的残りやすかったので結構好きだった。
逆にスパゲティはそのままでは難しい一度試してもうやらなかった。
蕎麦やうどん、ラーメンの類はあまりのリスクの高さや、逆に「あいつ、温めずにこれを?」と思われるのも嫌で避けていた。

思い出して書いていて、なんて小心者なのだろうと思う。でも、16やそこいらの時分には大事なことだった。

それから社会人になり、幸いにも本業だけで暮らしていけたため、再度コンビニでアルバイトをすることはなかった。
そのまま10年以上たった。でも、たまに思い出す。
あの頃食べた常温のお弁当、今食べたらどんな気持ちになるのだろう、と。

実は、このNoteを書き始める前に試してみた。
好きだった麦飯入りの、塩豚カルビを食べてみた。
懐かしくもあり、なんだか少し小さくなったその姿を見つけた時は少し嬉しかった。いつも視界には入っているはずなのに。

温めどうしますか、大丈夫です。
さすがにコンビニのバックヤードを借りるわけにもいかないため、家に帰り食べる。

温めることを前提としているから脂身が少し固まっていたり、冷蔵庫に入れたほどではないけどちょっと硬めの締まったお米たち。
そうそう、これこれ。バックヤードでTwitterをみながら食べていたあの味。

正直お店としては推奨していないと思うし、美味しさも損ねていると思う。
けれども、あのときバックヤードでこっそり食べていた時分とちょっと向き合える気がする。
大丈夫、きっと糧になっているよと、言える気がする。
今日試してみてよかった、選んで良かった。そんなちょっと不思議になった。

余談
僕の住んでいる地域は、お弁当はもちろんおにぎりも温める人が多い。
おにぎりあたためますか といういう名前のバラエティ番組の名前を初めて聞いたときに「コンビニでよく聞くフレーズがタイトルになるんだな」なんて思ったけれど、おそらく他県の人からしたら「おにぎりって温めるのか?」という意味で面白い名前だったんだな、ということにあとから気付いた。

#自分で選んでよかったこと

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