幸福洗脳というエンタメ
『わらしべ長者』のおはなし、覚えてますか?
あの男の本当の望みって何だったんでしょうね。
■ オリエンタルラジオ中田敦彦オールナイトニッポンPremium 2019.2.6
中田敦彦さんが立ち上げたアパレルブランド「幸福洗脳」のビジネスプランを語るラジオ番組。
2018年10月から始まり、4か月経過した現在は、こんな感じ。
「着るのに差しさわりのある服を高価格帯で売る」ことが
「ブランドを創るとはどういうことか」になるという、経過の面白い番組です。
2月6日の回は、ゲストに来られたキングコング・西野亮廣さんとこれまでの総括のような会話になっていました。
■ 西野さんから中田さんへの提案
1.戦略を語りすぎるな。夢も語れ
2.ギバーになれ
3.超長期計画を持ち説明する
4.叩かれたことを拡散しろ。ブルーオーシャン状態を維持しろ
中田さんが今一番熱くて難易度が高いというのが「ギバー」。
「ブランド」を創りあげるために必要なのは与えること。「世界にはルーサーなギバーがあふれている」という中田さんに構造としてのギバーとテイカーの説明をする西野さん。
■ わらしべ長者は何者か
虻を結んだ藁が物々交換を経て田畑屋敷になる、二束三文のものが高価なものに変貌するという『今昔物語集』『宇治拾遺物語』などにある説話です。
説話のためか絵本などでは仏の慈悲を得て、正直者が得をする型になっています。
藁が蜜柑になり、蜜柑が布になり、布が馬になり、馬が田畑屋敷になるという過程において男が行ったのは「持っているものを差し出す」という与える行為のみです。
しかし、『宇治拾遺』などで読むと、その男のしたたかさが如実に出てきます。
なぜなら、蜜柑をもらった時点で食べてしまったらそこでお終いになるはずです。けれど男は「これが次に何になるか」と思うからつながっていくわけです。そして肝心なのは欲しがる人が「それがないと二進も三進もいかない状態」にあり、裕福であるという点です。男は状況を見て与える相手を決めているともいえます。
したがって、与えられた方は感謝し見返りとして等価ではないモノを差し出すことになるのです。
giverでありwinnerであるということは、持っているもの・与える人の価値を判断するという側面は否めない。しかし、与えるときにはそれ(物・人)が何に変わるかは不確実で、目の前の他者の非常に困った現状を見過ごせないという性質も持ち合わせていなければならない。
中田さんのいう「聖人」は後者を物語として享受した時で、西野さんのいう「giveは投資」というのは前者が明確になった時ではないだろうか。
■ 魅力的な夢を語りそして勝つ
藁を授かった男は、単なる藁に虻を結び付けそれを捨てずに持ち歩き、歩みを止めることなく人と向き合い次へと進んで行きます。
男の歩みを止めずに次へ進む姿に読む側も期待をして待ってしまう。
この番組はまさに中田さんの突き進む姿を楽しめます。
『宇治拾遺物語』のわらしべ長者は「まだ生きる理由があるのか」から始まります。期せずして今回の放送の終わりに中田さんがつぶやきます。
「何のために生きてるんだろう」
最後に交換した田畑屋敷の田畑半分を人に貸し与え、自らも田畑を耕し、そこに風で吹きよせられるように人が集まり長者になった男は、何を夢見て進み、そして最後には生きる理由はわかったのだろうか。
男が勝ったのは長者になっただけではなく、生きる理由が見つかったからに他ならないことをきっと中田さんが証明してくれるはず。
期待することは楽しい、そんなエンタメがここにあります。
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