20年愛した某化粧品メーカのファンを辞める話

その化粧品メーカとの出会いはただの偶然で、単に「当時の職場近くにある商業ビルに店舗が入っていた」からだった。で、ドラッグストアでジプシーするのからは卒業したいと思いつつもデパコスへ行く勇気はまだない、そんな初々しい新卒新人の時のこと。

が、特にこれはどうでもいいこと。
ただその頃から20年近く、時々浮気しつつもずっと使うくらいには好きだった。
そんなにも愛し続けたものを嫌になるのは意外と簡単であっけないというお話をしたい。

きっかけは「たった一人の社員のせい」にすぎない。
しかも厳密にはその化粧品メーカの人ではない。関連企業の社員だ。

このたった一人の人間が一体何をしでかしたのか。

たまたまそいつと一緒に仕事をすることがあった。
身バレが怖いので詳細は伏せさせてもらうが、そこで信じられないくらいありえない、怖気がつくことをやられた。
パワハラともモラハラとも言い難く、一部に関してはセクハラと言えないこともない……が、本質的には何ハラなんだろうな、あれ。
とにかく気色悪くて堪らない。もう生理的にその人間が嫌になっていた。隣に存在するだけで緊張するほど。
最終的には精神科通いをしなければ日常生活もままならないくらい追い詰められた。

全て過去形で書いているとおり、これらは「過ぎた話」である。
あの変態野郎にはとことん精神を削られたが、それでもそのメーカ製品は使っていたのだ。まだ。
そいつが直接作ったわけでも、売ってるわけでもない。あくまでも「同じグループ会社ではあるけど製品開発には直接かかわらないとある部署の社員」であって、その化粧品メーカの人間ですらないのだから。

と、思っていた。

化粧品というものは「ときめく」アイテムだと思う。
パッケージや色が綺麗、可愛い、それをつけた自分のテンションも上がって楽しい、嬉しい。
もちろん会社に行くためだけに睡眠時間を削ってやる化粧はクソめんどくさいことこの上ないのだが、それでも化粧品売り場で見るのは好きだ。
憎むべきは「女性は化粧をしましょう」というビジネスマナーであって化粧品ではない。
(とはいえ、すっぴんで人前に出る勇気もないんだけどね)

だから新商品のお知らせが届いたりすると、買う買わないは別として楽しかった。
けれど、段々ワクワクしなくなっていることに気付いた。

直接ではなく遠くとも、奴は関係者なのだ。
全くの無関係ではないのだ。

その化粧品会社にはランク制度があって、年間の購入金額によってステータスがかわる。
よくある買えば買うほど上がるやつなのだが、自分は「公開されてないワンランク上」のもの。
自分で言うのもなんだが、割と優良な顧客なんじゃなかろうか。15年以上毎年ウン万円買い続けていて返品したのは本当に合わなかったもの一品だけで、特にクレームも入れたことない(カスタマーサポートに連絡したのはこの返品の時一度きり)

そのくらい、愛してた。
でも、もう駄目だ。
私の払った金が、グループ会社内で巡り巡ってあの野郎の給料になっているかもしれない。そう思うと嫌で嫌で堪らなくなった。どうして私があの変態を潤さなければならないのか。例えそれが1%に満たなくても我慢しがたい。

ストレスでそういう欲求や興味がなくなったわけでもない。
現にデパコス見かけるとソワっとするし、ドラッグストアでも化粧品コーナーはついチェックしてしまう。コスメの動画もよく見る。そして欲しくなっては「いやまだ家にあるだろ」「そんなに化粧品ばっかりあっても困る」「確かにかわいいけど普段使い厳しいだろ」と戒める日々だ。

なのに、今まで一番ときめいていたその化粧品メーカのアイテムに、何も感じなくなった。
興味も持てなくなった。
新製品のカタログが届いても開けばまだいい方で、分別だけしてそのまま捨てるようになった。
メールの通知にはとうとうイライラしてくるようになった。

そのくらい、冷めてしまったんだなぁ……。

さすがに勿体ないので購入済みのものを捨てるまでするつもりはないが、もう新規に購入はしないだろう。現に買い替えるアイテムは全て他社のものになっていっている。
つもりはないのだけれど、割と化粧品に対して「ときめかない」というのは致命的な気がする。よほど使い勝手がいいとかあれば別だけれど、それなら他社製品で「使いやすくてときめく」アイテムがあるのだから。

それでもこの化粧品会社を、と選んでいた私の愛はどこへ行ったんだろうなぁ。
けれど最近の私は、その化粧品メーカの店舗を見掛けただけでテンションが下がるようになってきた。

もう、無理だろうな。

「まぁコーヒーでも飲みなよ」とか思ったらよろしくお願いします。