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【朗読台本】この狭い宇宙の中で【side/Women】

蛇口を捻る甲高い音が、レコード盤に落とされた針の様だなって思った。

毎日聞くような、水の音。
なのに、どうしてかな。
ありふれた水の音が、心を溢れさせてくれる。

シンクに落とされた水の針。
それは広がって水の円になっていく。
私たちのレコード盤が、回る。

私が水の音を操って、キミに渡す。
キミはそれを受け取って、リズムにする。
たまにおかしなリズムを刻むもんだから、たまらず笑っちゃった。

「ところでさ」

このメロディの主旋律は私で、キミとのセッションが日常に溶け込んでいく。

ふと、目に作ったキミのクマが愛おしく思えた。
だから、キミの名前を呼んでみた。
目をパチクリした後に恥ずかしそうにするキミ。
こんなに心地の良いリリックは初めて歌った気がした。

キミと話がしたい。

これまでのどうでもいいことは、もう今じゃ思い出すこともできない。
冥王星よりずっとずっと遠い場所にある。

2人だけの空間が、2人だけの宇宙が、
ここにある。

「ねぇ、お話しようよ」

シンクにもたれかかってキミにねだる。
立ちっぱなしのまま、ソファにも座らないで。
電車の席なら一目散に座るのに、今ではそんな事だってもったいない。

「なんの話?」

と、キミがそばに立って話を促してくれる。

うん、話をしよう。
取り留めのない話を。
2人だけの、この狭い宇宙の中で。


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