自己紹介|はじめてのnote
自己紹介
「3年間、3.5万円でバングラデシュ人とシェアハウスに住んでいた」
と友達に言ったら笑われた。
どんな人生を歩めばそんな出来事が降りかかってくるんだと、笑いの中に呆れを混ぜ込んだ声色でそう言われた。私だって、知るか。別にそうしたくてやった訳ではない。なくなく仕方なく、やるしかなかったんだ。
noteでエッセイや詩、言葉に関係することを投稿しようと決めて、まずは何を投稿しようかと思い悩んだ時、目に留まったのは**「自己紹介」**のコーナーだった。
なるほど、確かにこういうものがあると分かりやすいし、新しい出会いを求めてる人にはうってつけだなと思った。
なので、何を書こうかと思って思案した。
「私という人を伝えるなら何を一番最初に持ってくるかな?」
そうしたら、自分の1番の暗黒期の一文が頭の中にスラッと浮かんだ。
そんな暗黒時代を思い出す私はポジティブ人間にまたもや、なり損なっていた。
家賃0円の空き家時代
そのシェアハウス以前には家賃0円の空き家に住んだことがある。ちなみに犯罪じゃ無い。
ちゃんと義父のお母様が亡くなられたとかで、その空き家が取り壊しまで時間があったのだ。思い返しても人間が住む環境じゃなかった。
出ねぇし、お湯。真冬は地獄だった。
ちなみに空き家に住んだ理由は、新卒の会社を1年で辞めたからだ。
毎日16時間労働のレ・ミゼラブル。
革命を起こした訳である。
その後、私は昔関わりがあったイベント業へ転職し、細々と過ごしていた。
コロナ禍と独房紛いのシェアハウス
その後、空き家から無事に追い出され、家賃3.5万円の家でシェアハウスをしたのは**「コロナ禍」**が影響している。イベントに関わる仕事をしていたのでモロに業務に直撃。1年のスケジュールが全て白紙になった。
当然、お金がなくなる訳で「生活ができる範囲で家賃がウルトラ少ない所」を探したら、その場所しかなかった。まだ、仕事が残存している東京で辛うじて生き残ろうとした。
「あぁ、来るとこまで来たな」
普通の人間だったらこう考えるかも知れない。しかし、自分は
「あー!お湯が出る部屋ー!」
とやや陽気に部屋に入ったのを今でも覚えている。当然やせ我慢だ。
そうして当時25歳頃、花盛りを迎える私は3年間、この独房紛いの部屋で過ごしていくことになる。
住めば都(独房)
一軒家の様な二階建の建物に、所狭しと12室の部屋が1階に6室、2階に6室と綺麗に別れている。そこにシャワーとトイレが2室ずつ1階と2階に配置され、あとは洗面台とキッチンが共用スペースとして置かれていた。
お部屋としては、少し綺麗な独房サイズだ。
思い思いの独房を想像してもらって、そこに少しだけ綺麗めなベッドと机が置かれてリノベされたと考えてもらえば十中八九、私が住んでいた家、独房の出来上がりだ。
ただ、嬉しいことに窓があって、鉄格子じゃない。
私は2階に住んでいたが、いつでも飛び降りて重症を負える環境があった。
結局、飛び降りることはなかったけど。
一回試しにやってみたら良かったと心の中で思っておく。
壁もすべてお粗末な「独房感」
そんな風に、この独房は脱走大歓迎のお部屋だったので、隣室を隔てる壁というのも非常にお粗末だ。
端的に言って「ベニア板」でできている。
試しに一度、ベニア壁にノックをしてみたらトイレの扉より乾いた軽い音が響いた。タイピング音もよく響く。
部屋に入るためのドアはベニア板ではない。かなり厳重な鍵が掛けられている。電車乗り場の脇道の脇道あたりにある事務所に入るための鉄柵扉につけられているのをよく見かける、あのゴツめの鍵だ。
ゴツめのボタンが数字と英字で分かれており、押すと凹む。
押した順序が正しければ開ける事ができるアレである。それが各部屋につけられているので、なけなしの防犯対策はバッチリであり、より一層独房感を増してくれる素敵な家具があった。
ガバガバディフェンスのドア
しかし、一つ「なぜ?」と当時から声を上げたかったことがある。それは唯一の出入り口となるそのドアの下部にガッツリ隙間が空いていることだ。
なんで???
トイレのドアくらい下の隙間が空いてる。頑張れば覗ける。
コインをシュッ!ってやったら部屋の中へ普通にシュートできるガバガバディフェンスシステムだった。
刺激的すぎる生活環境
先程も書いた通りだが、私はその住居の1住人である。
**色々な国籍の方がいる。**だから、キッチンには理解不能な液体と粉物がいつも置かれていて、とても刺激的な香りをさせていた。
料理も刺激的で、恐らくスパイスの混ぜすぎだろうか、さっき豚でも屠殺してきたのか?というくらい尋常じゃない香りが漂ってくるのはご愛嬌なのである。
住人達はそこそこ陽気なので、キッチンで料理しながらスマホで大音量で音楽を流す。
壁、薄いのに。洋楽みたいなのを流す。
私は洋楽もよく聞くので、なに聴いてるのかなと思ったら、謎の言語で言葉が紡がれる「バングラデシュ・ポップ」みたいなのが流れていた。
音楽を聴いて初めて**「わかり合う以前の問題」**を感じたのはその時が最初で最後であって欲しいと願わずにはいられない。
「孤独」という存在
そんな、住みにくい独房に3年間入っていた。
別に慰めて欲しいとも、よく頑張ったねとも言われたい。
めちゃくちゃ苦しかったし頭がおかしくなるかと思った。
深夜に顔を枕に埋めて絶叫したのは一度や二度ではない。
大変に苦しかったし余人には理解されない地獄がそこにあった。
でも、そこで生き続けるのが当時の私にできる精一杯の抵抗だったのだ。
生きるという事への根源的な執着。それしかなかった。
夜勤という選択肢
コロナ禍は勢いを増し、いよいよ私の貯蓄を切り崩しに掛かった頃、私は夜勤の仕事を始めた。健全に物流の仕事である。不思議なことに、あまり辛くなかった。むしろ喧騒が少ない夜の世界に幽閉されて、嫌な事から目を向けずに済んだ。
しかし、人付き合いは解消した。面白いくらいに。「解消」という表現が正しいだろう。自分が置かれている地獄と、友達が過ごす「普通」があまりにも雲泥の差に感じられて、こちらから友達契約を打ち切らせて頂いた次第だ。それに、夜勤で時間も合わなかったしね。
それを、3年間、過ごしてきた。
それが私だ。
狭い部屋と孤独
自分の周りに人は消えて、夜の暗がりだけがそこにあった。
自分の不始末を責めるようなその部屋の狭さが、私を常に悲しくさせた。
街に出て、通りを行くカップルを見つける。
私より歳下でなんと楽しそうなんだろうといつも思った。
「今度、箱根のホテルに2人で行こうよ」
なんて言葉は幻想小説に出てくる一編かのように感じられた。
昼夜は逆転し、外に出ても人はいない。
ただ、自分と向き合う為の時間がそこに転がっていた。
寄り添ってきた「孤独」
だけど、そんな私にも常に寄り添ってくれる存在がいた。
それは**「孤独」**である。コイツだけはぶん殴っても、大絶叫しても、見放さずにいた。
孤独は、私を常に見つめ、逃げ場を奪った存在だ。
それでも、その孤独が私に唯一無二の時間をくれた。
誰にも邪魔されず、ただ自分を磨くための時間だ。
そうして私は言葉を手に入れた。
「虎に翼、僕に孤独」
苦し紛れの生活に、私の口からぽつりと溢れた。
それは私の心の中に生まれた**初めての「言葉のアート」**だった。
虎には翼がない。仮にあっても飛べやしない。それでも翼を求め続けるのが、人間の性だ。そんな世界の中で、私に与えられたのは翼ではなく孤独だったのだ。
ありもしない幸せや、よくわからない権力や権勢。人気。
そういった**翼にみえる何か**は紛い物で、自分の孤独から湧き出てくる言葉が本当に幸せに繋がると私は信じてる。
そんな、やせ我慢とプライドが詰まった言葉を、私は暗闇の中でひっそりと思い付いていた。
独房からの一歩
3年間、苦しみ悶えてやっとのことでお風呂付きの独房へ引っ越すことができた。やったね!
そこからもう一つ大きめの地獄を味わうことになるのだが、それはまたの機会に話すことがあるはずだ。
今ではそんな地獄の様な環境からオサラバしている。
それでも人間とは不思議なもので、不安や不満というのは次から次へとやってきて私を苦しませるのであった。
ただ、そんな時、ネックレスの様にぶら下がっていた「虎に翼、僕に孤独」という言葉がずっと心の中に引っ掛かりを感じさせていた。
言葉で再構築する
この言葉、良い言葉だなぁ。
自画自賛甚だしいのだが、ずっと思っていたのだ。この言葉を世の中にぶちまけてみたいなと。
今まで、良いことなんて一つも無かった。
そんな事ない?なら私と同じ20代を生きてみますか?
本当に、嫌なことばかりだったんだ。人生。
だから、再構築したい。言葉で。
嫌だったこと、苦しかったこと。
好きなこと、面白いと感じたこと。
わからなかったこと、心のモヤモヤ。
そういうものを全部、言葉で再構築したい。
「虎に翼、僕に孤独」
この言葉の様に、過去を意味のあるものにしていきたいと思っている。
そんな言葉をいっぱい作り出せたなら、今まで受けて来た仕打ちの意味も、少しは納得できるはずだろう。やがて、様々な人に評価されるようなら、そんな苦境も全て精算できるような事をしてみたい。
言葉の展覧会
今、頭の中には**「言葉の展覧会」**を開くことがぼんやりとある。
有名無名を問わず、心を震わせるような言葉を飾っていきたいのだ。そこにはもちろん自分の言葉もある。
このnoteは、自分にとってそんな場所を作るための一番最初の所にしたい。
もし、そんな未来があるなら。
この孤独も、あの時の闇も。
翼より意味のあるものだったと思える筈だ。
読者へのメッセージ
これから、皆さん。よろしくお願いします。
この場所が、孤独に耐えた私の言葉と、読者であるあなたの心が出会う場所になりますように。
素敵な言葉の旅へ、共に進んでいきましょう。
書き手:「虎に翼、僕に孤独」