【主張】立憲民主党には、立憲主義が欠けている。

 立憲民主党には立憲主義が足りない。厳然たる事実だ。もはや、「立憲」の2文字を削ってほしい。しかし、次の記事に書く理由から、「民主党」とも名乗ってほしくはない。今回は、如何にして立憲民主党が立憲主義を蹂躙してきたのかを解説していきたい。

立憲主義とはなにか

 「立憲主義」とは、憲法に基づき国を統治する考え方のことをいう。特に、近代立憲主義とは、政府権力を拘束することにより、国民の権利や自由を守るという考え方である。立憲民主党は、安保法制のとき、「『戦争法案』は立憲主義に反する」と大声で叫んで反対した人々の集まりである。人に立憲主義を説くのであれば、さぞかし立憲主義のことをよく分かっていらっしゃるのだろう。
 以下の記述を読んでいただければ、立憲民主党という政党がいかにして立憲主義と向き合ってきたかということを理解することができるだろう。

その① 他党の質問時間削減

 立憲民主党は、皆さんご存知の通り、野党第一党である。野党第一党は、野党筆頭として与党との協議で決めた質問時間を、割り振る権限がある。もっとも、慣例として、少数政党に配慮しつつも議席数と比例して時間を割り振るのが一般的だ。そうであれば、立憲民主党も、基本的に議席数と比例して野党の質問時間を割り振るべきである。
 しかし、立憲民主党は、令和2年5月15日の衆議院内閣委員会で、日本維新の会の質問時間を削減した疑惑が極めて強い。今回、共産党(会派人数12人)が16分の時間を割り振られているのに対し、維新の会はたったの4分、たったの4分しか割り振られていないのである。

画像1

 日本維新の会の足立康史国政幹事長代理は、これについて「4分になっているのは立国社からの虐めです」と述べていることもあり、立憲民主党が質問時間を思いのままに操作したことは合理的に推認できるだろう。維新の会に議席数に応じた時間を配らないのは、野党筆頭という権力の濫用、私物化である。質問時間を割り振ると言う一種の権力を、本来予定されていない使い方で思いのままに使おうとする立憲民主党は、権力を抑制するという立憲主義の趣旨に反するのではないだろうか。
 維新は嫌いだから、質問時間を削っても良いと思う人がいるだろう。気に食わない少数政党は議場から排除して良いという考えが根底にあるから、改めるべきだ。そのような考えこそ、立憲主義にもとる。

その② 代表選出規定がない!

 立憲民主党は、党規約に、代表選出規定がない。つまり、規約に基づいて代表選挙を行い、選ばれた政治家が党を代表し、他の議員も従うという一連のプロセスが制度化されていないのだ。党内で規約に基づいた統治を行うことができていない政党が、立憲主義を語るのはおこがましい。
 対して、立憲民主党と会派を共にする野党第二党・国民民主党は、既に一昨年に党規約に基づき代表選挙を行っている。現職の玉木雄一郎代表が、津村啓介議員を破り、代表の座を再びものにした。立憲民主党は、国民民主党から学んで、代表選出規定くらい設けてから、「立憲」の2文字を掲げるべきではないのだろうか。

その③ デマを擁護

 立憲民主党は、自分に有利な主張であれば、デマを擁護する政党であることがはっきりした。
 先日、きゃりーぱみゅぱみゅ氏が #検察庁法改正案に抗議します  タグを用いて、反対の姿勢を明確にした。そこまではよかったのだが、デマが入った相関図を引用していたのだった。その内容を要約すると、「安倍は逮捕されるのを防ぐために検察庁法を改正し、黒川氏を検事総長にしようとしている」という内容だ。普通に考えれば、①安倍首相に逮捕されるような嫌疑が無いことは明白であり、政治を知らない一般人でもわかる。さらに、②検察庁法改正案の施行日は令和4年であり、今年中に定年を迎える黒川氏の出世とは直接関係はしないという点でもデマである。しかし、ここできゃりーぱみゅぱみゅ氏を批判することはしない。なぜなら、同氏はすでにSNSで多くの批判を浴びており、言論の自由を行使した責任はとっていると思われるからだ。


きゃりーぱみゅぱみゅ

 しかし、見逃せないことが起こったのだ。立憲民主党(会派)の柚木議員きゃりーぱみゅぱみゅ氏を名指しで擁護したのだ。同氏のツイートの問題は、内容が間違っており、それが安倍首相や黒川氏の名誉を棄損しているということであった。それを、あろうことか女性差別の問題にすり替えている。

デマを擁護

 また、枝野代表も暗にきゃりーぱみゅぱみゅ氏を擁護するツイートをしている。なぜかというと、後にきゃりーぱみゅぱみゅ氏はツイートを削除しているからである。どうやら、立憲民主党の考えは、「デマであっても一般人が意見を発信するのは良いことだ。」ということなのだろう。

デマを擁護2

確かに、表現の自由(憲法21条)は、重要な人権である。なぜなら、一度侵害されれば、民主政治が従来通り機能しなくなり、民主政の中で回復することが困難だからである。しかし、安倍首相や黒川氏の名誉権も憲法13条で保障される重要な人権である。
 最高裁の判例(「夕刊和歌山時事」事件最高裁判決)に照らせば、政治家に対する名誉棄損の表現は、確実な証拠・根拠に照らして真実だと誤信した相当の理由がある場合でなければ、憲法21条で保障されない。きゃりーぱみゅぱみゅ氏のツイートの画像は、ちょっと注意すれば真実に反するとわかるはずであるから、上記の相当の理由が認められることはまずないだろう。よって、同氏の画像ツイートは憲法上保障の範囲外となるだろう。
 ここまで長くなったのでひとことで要約すると、立憲民主党は、憲法21条で保障されない「デマを発信する自由」を、あたかも人権のように強調した上で、今回の対立利益である黒川氏らの名誉には一切配慮を示さないのだ。これほど、立憲主義を蹂躙する愚行はないと、私は考える。
 枝野氏と柚木氏のツイートを、文脈も併せて解せば、「デマであっても一般人が政治的発言をすることは自由」ということだ。これを前提にすれば、立憲民主党に対する批判が仮にデマであっても、彼らは容認すべきなのである。しかし、立憲民主党公式は、「デマ」について過去にファクトチェックを行っているのである。とすれば、立憲民主党は、「自分に都合の良い意見はデマでも容認し、自分に都合の悪い意見がデマであれば糾弾する」という姿勢なのである。これは、憲法21条(表現の自由)の趣旨に照らし、極めて反立憲主義的な姿勢である。

その④ 報道への圧力

2月のことを思い出してほしい。安住氏は新聞社の記事を一方的に「花マル」「くず」などと評価し、国対委員長室に張り出した。これも、憲法21条1項で保障される報道の自由への圧力、介入である。立憲主義の精神に照らして断じて許されるべきではない。

まとめ

 立憲民主党は、これだけの立憲主義に反する言動をとってきており、言行不一致との誹りを免れえないだろう。安倍首相に立憲主義違反を質す前に、自らの立憲主義批判を猛省すべきである。


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