夢を追う毎日に追われる。支払いは待ってくれない。立ち止まるのは私だけ。
8年目になる。
芸人というものはこうものんべんだらりと続けられるものなのか。改めて数字にするとゾッとする。
すぐ売れるつもりで始めたこの世界は思ったよりもずっと厳しい。
社会人で8年目ならば、仕事もそこそこ頼られ責任も増え、もしかすると家庭もあったかもしれない。
だが、こうしてまだ社会人に未練があるような事をうっかり芸人の飲み会で零すと「じゃあ辞めちまえ」となるのが関の山だ。シラケる、酒が不味くなる、湿っぽい人生観より今この場を盛り上げろ、女ならおっぱい揉ませろ、下ネタを言え、先輩のグラス空いてるぞ…
今日も芸人たちは、社会と自分達とのギャップを見て見ぬふりをし、誰よりも気の利いた大喜利を、誰よりもウケるネタを、誰よりもすべらないエピソードを求めてしのぎを削る。シラフでも、そうでなくても。
本音抜き。茶番ありき。それが粋なのだ。正しい姿なのだ。
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