スピッツ「仲良し」 あれは恋だった
こんな風に青春時代の淡い恋心と後悔のようなものを歌った曲も結構好きです。
アルバム「フェイクファー」の5曲目。
スピッツには、こういう淡い思い出系の曲が多いような印象だけはあります。しかし、実際のところは少ないのではないかと思っています。結構、許されぬ恋などを描いている曲が多めなのが、スピッツの正体ではないかと思っています。
草野さんは「恋はそんなにきれいなものばかりではない」と多くの場面で語っており、そういった現実の毒をたくさんの曲に盛り込んでいます。
でも、この曲には「毒」そのものは、少なめだと感じます。
私には感じ取れません。
「いつも仲良しでいいよねって言われて
でも どこかブルーになってた あれは恋だった」
ああ、誰かに言われた何気ない一言。それをきっかけに自分の気持ちに気づいていったのかしら。
「悪ふざけで飛べたのさ 気のせいだと悟らずにいられたなら」
気づいちゃったら、意識してしまって、ぎこちなくなっちゃったんだろうね。
で、結局のところ、この淡い思いはどうなったんだろう・・・。
そのことさえも、歌詞からは読み取れませんね。淡い思いだけを表現できれば、この曲の趣旨はもう貫徹しているのでしょう。結論を書く必要がない。そういう草野さんの美意識を感じます。
この歌詞を「大人になった男の人の回想的なもの」だと解釈すると、この淡い思いは成就していないのでしょうね。
さらには、「君」に対して、気持ち自体を伝えていないような気もしてきます。そんな主人公の頭の中だけの曲。
もしかしたら、アルバムの表題曲「フェイクファー」で、許されぬ愛に葛藤を感じている人と、この「仲良し」で回想する人は、同一人物ではないだろうか?
2022年8月14日 トラジロウ