【心揺さぶる名言4】「行っちゃいかん」と言うわけは、俺が惚れているからだ。悪いか。(映画「男はつらいよ38 知床慕情」より)
ごめんなさい。いきなり、大切なところをネタバレしているといえば、しているかも?
でも、どうしても、この言葉を紹介したかった。
「男はつらいよ38 知床慕情」
マドンナは、竹下景子さん。「心の旅路」「口笛を吹く寅次郎」と合わせ、3作品に別設定のマドンナとして登場した。たぶん、別設定としては最多出演のはず。この二つもめちゃくちゃ面白いので、ぜひ。
主な登場人物は4人。
寅
りん子(竹下景子)
老獣医・順吉(三船敏郎)
スナックママ・悦子(淡路恵子)
なんと豪華なキャストか。とりあえずは、これだけ把握しておけば十分。
舞台は題名通り、北海道知床。
三船演じる順吉は、とんでもないへんくつものだが、どこか憎めない。1人やもめの順吉の身の回りを世話する淡路演じる悦子。恋とか愛とかいう年齢ではないように思えるが、密かに大切に思い合っている。
知床の高原で、バーベキューをしているとき、いろいろな事情があり、悦子は「店を閉めて、新潟へ帰る」と言い出す。
すると、順吉は、新潟には行くなと言い出す。「反対だから黙ってたんだ。理屈なんかあるか」と横暴に聞こえる発言を繰り返す。
寅「いいかい、おじさん。反対なのはみんな同じなんだよ。ただ、ママさんは店をやめて、田舎へ帰らなきゃならない理由があるんだよ。あんたが子どもみたいにだだこねたってしょうがねえんだよ」
順吉「とにかく行っちゃいかん。俺が許さん」
悦子「なんて偉そうな口きくの。私がどうしようと私の勝手でしょ。私は先生の女中じゃないんだよ」
寅「なあ、おじさんよお、あんたがそこまで反対してるってのは、それなりのわけがあるんだろ?だったら、そのわけをちゃんと言ってみな」
順吉「言えるか そんなこと」
寅「勇気を出して言え。今言わなかったらな、おじさん。一生死ぬまで言えないぞ」
順吉「よし、言ってやるぞ」
ここで、
順吉「行っちゃいかん!俺が「行っちゃいかん」と言うわけは、俺が、俺が、惚れているからだ。悪いか」
文字だけではなかなか伝わりにくいかもしれない。不器用そうで、頑固者の順吉が徐々に追い詰められ、やがて、それを勇気に変えて、一世一代の勝負、告白をする。なんと、うまい演出か!
泣ける。
いくつになっても、誰かにそばにいてもらいたい、大切にしたい、という思いは誰しも持ち続けているのだと、この映画は教えてくれます。
でも、この先、寅は逃げるんだけどね。
ここから先は、映画を観てください。
2022年8月10日 トラジロウ