【思い出】小さなドライブレコーダー
(全体の冒頭部分として書く)
私は小さい頃から母に連れられて、そのあとをトコトコとついて歩いていていた。
当時、特に意識していたわけではなかったが、今考えると私は母の小さなドライブレコーダーだった。
私はずっと母の行動と発言を記録し続けていた。それは私が物心ついてから母が亡くなるまで半世紀近くにわたって続けられた。
以下、その記録について書き出してみようと思う。
(以下、あとがきとして)
大学進学を機に私は親元を離れ、母のドライブレコーダーとしての役割は後退し、自分の行動をとり始めていた。
それから私は社会人となり、自分の夢を追いかけていた。
私は自分の夢を、志を、一日たりとも忘れたことはなかった。
初めて夢を見てから35年以上の歳月が流れた。
私はようやく長年の夢を果たした。
それは男子一生の仕事だった。
そして私は最後に天馬となって、幾ばくもない母を背に乗せて一気に天空を駆け上がった。
私は母を乗せたまま大気圏を超えた。
そして私は自らの背を振り返った。
そこにはすでに母はいなかった。
母はすでに私の手の届かない宇宙の果てで白銀の星となって輝いていた。
その星は冷たいひとすじの光で私を照らしていた。
私はその様子をこの星の大気圏外から眺めていた。
これが私の母についての最後のドライブレコードになった。
私はその最後を地上に配信した。
そのとき私は自分が天命を果たしたことを理解した。
そして私のドライブレコーダーとしての役割は終わったのだった。
最後に私は背後を振り返った。
そこには国境などない青い地球が広がっていた。
私は使命を果たした。
あとはこの星に帰還を果たすために大気圏に再突入し燃え尽きるだけだった。
長い旅だった。
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