【思い出】自伝の見出しのスケッチ
私は小さい頃から両親の出会いについて何も知らなかった。また特に母の生い立ちについてもほとんど知らなかった。しかし生まれたときから知らないものだから特になんの疑問にも思わなかった。
しかし人生においてたった二つのことに気がついてから私の人生は大きく変わった。いずれも両親からはっきりと聞かされたことではなかった。
ひとつは私の母親が在日韓国人だということだった。私は小学生の高学年までそのことを知らなかった。たまたま親戚の家でおばたちの会話を聞いていてようやく気がついたのだった。
もうひとつは、義伯父のことだった。このことに気がついたのはもっと大人になってからのことだった。母が何気なく言った次の一言だった。
「昔、あの義伯父さんがxxxxx。それでお母さん、ほんまに困ったんよ。」
私は母のこの一言でもう一つの重大な事実に気がついたのだった。
そして私はこれまで自分が両親の出会いや母の生い立ちについて何も知らされていなかったことに気がついた。その後、私は自分の記憶を辿ったり、親族の何気無い発言に耳を傾けながら慎重に情報を集めていった。そしてようやく自分が生まれる前のことがおおよそ思い描くことができた。
この物語はその記憶を辿る物語である。そしてその全てが事実なわけではない。多くは私の推測にすぎないのだから。