【思い出】伯父の話

母には親子ほど歳の離れた兄がいた。祖父を小さい頃に亡くした母はこの兄を父親のように慕っていた。

その伯父は戦後の間もない時期にのちの朝鮮学校のようなところで子供達に朝鮮語を教えていたそうだ。
しかしある夜の帰り道に伯父は暴漢たちに襲われた。半殺しにされて血だらけの口の中に唐辛子を詰め込まれていたと。
祖母は泣きながら看病をし、小さい母はその横で震え上がっていたと。
結局、伯父は一命をとりとめたが、以来随分人が変わってしまったと。朝鮮語を教えるのをやめて、別人のように無口になり、引き込んでしまったと。

別の機会に聞いた話だが、兄の配偶者の義伯母が亡くなり、祖母はその息子たちの世話をすることになった。朝鮮は長男至上主義だそうだ。そのために末っ子の母は中学の三年間を双子の妹と二人だけで暮らしていた。
当時、母の一つ上の伯母が二人の生活の面倒を見ていたが、この8歳年上の伯母は二人のために毎晩夜遅くまで働かなければならず、夜になると二人きりで怖かったと。

それとはまた別の機会に母自身から聞いた話だが、関東に行ってしまった伯父に会いたかった小さい頃の母は汽車に乗って東京駅に向かった。しかし終点の直前で駅員さんに見つかってしまい、おそらく無賃乗車だったのだろう、結局は伯父が保護者として迎えに来たと。母はこの伯父によほど会いたかったのだろう。

最後に、数年前、母が言っていたのだが、実はこの伯父は戦前に日本兵として出兵したことがあるのだそうだ。母自身最近まで知らなかったようだが。

https://ameblo.jp/toraji-com/entry-12432480604.html

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