妹の夢を見た(ガンダムSEED。シン カガリ)

────お兄ちゃん────

久しぶりにマユの夢を見た。
どんな夢かは覚えていないけど、それだけは分かる。
この数年、1度も見たことがなかった妹の夢。
ずっと忙しかった。と言ったらそれまでだが、ただひとつだけ、ひとつだけ この数年で違うことがあった日の夜の夢だ。

(もうカガリ・ユラ・アスハを恨むのはやめよう。)


その日、公務をしているアスハを見て、なにか心がストンと落ちた。別に特別な公務の日ではない。ただの書類仕事をしてるだけの姿だ。なのに、何故か心が整理された気がした。
「もういいか。」
なんて口から出た。心が透明になり、不思議な感覚がずっと残った。その日の夜の夢。

今日も今日とて、アスハは書類を片付けている。

「マユ。」
あの日から数年経って、俺は少し大人になった。だけど、マユはあの日から止まったままだから、ずっと子どものままなんだろう。
(俺に、ずっとアスハを憎んでて欲しいかな。)


なんて、考えた時。アスハが不意に書類から目を離し、こっちを向いた。

「シン。」
俺の名前を呼ぶ。アンタの事を考えていた。声が出ない、息を呑む俺にアスハは言葉を続けた。
「コーヒーを頼んでもいいか。お前の分も用意していい。今日は ボーッとしてるからな。」
なんて言って笑う。
「………。………本当に人遣いが荒いっスね。待っててください。」
頼んだ。と言う声を背中に受けながら、俺は早足で廊下に出る。

「俺が、コーヒーに毒を入れる可能性とか、考えないのかな。あの人。」
少なくとも、俺が家族の事でアスハを恨んでることを本人は知ってる。それを受け止めて、傍に寄ることを認めている。

見た夢を思い出す。
「マユ。」とまた呟いて、俺は歩き出した。

本当は、恨むことを止め、前に進むことを祝福する夢なのかもしれない。

そんな考えも浮かんだが、夢の内容はもう思い出せないんだ。

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