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セーフになりそうだからGO、アウトになりそうだからストップ、ではない。 2024/9/3
2024年9月3日の阪神対中日戦。2回裏のプレーをご覧いただきたい。1アウト2・3塁で打者はセンターフライ。3塁走者はタッチアップからのホームインを試みたが、センターの好返球により本塁タッチアウトとなった。
これは見事なバックホームでした。 pic.twitter.com/9WGPwaNHTm
— 虎講師 (@toraho) September 3, 2024
このプレーだけを見ると、センターは定位置よりややライト寄り前方で捕球しており、かつ処理したのは送球の強さと正確さに定評のある外野手である。捕球した時点で3塁ランナーは本塁でアウトになる確率が高い。
しかし、野球は目の前のプレーだけを見て状況を判断するスポーツではない。9イニングの戦いの中で最終的に相手より1点リードするために、今何をするべきか判断する必要がある。
踏まえてこの場面の状況をもう一度振り返ってみよう。
回は序盤。このプレーの直前に2点の先取点を奪った。しかし相手は防御率リーグ1位のエース。この先チャンスは1回あるか無いか。そしてそのチャンスをものにできるかわからない。今このチャンスでできれば1点追加してより有利にゲームを進めたい。
このような状況で打者は浅めのセンターフライを打った。タッチアップでの3塁ランナー生還はタイミング的に厳しい。しかしセンターが捕球した時点でアウトカウントは2となる。3塁にランナーが残ると次打者はヒットを打たなければ追加点を奪えない状況となる。
ここで3塁ランナーがとるべき選択肢は2つ。
・次打者に期待して3塁ベースにとどまる。
・タッチアウトになるリスクはあるが、本塁に突入し得点を狙う。
ランナーは本塁に突入することを選択。しかしセンターの好返球によって余裕を持ってアウトとなった。この判断はミスだったのだろうか。
確かに、この時の3塁ランナーは俊足とはいえない選手である。しかもセンターの選手の捕球体制もいい。それでも私は「本塁突入」の判断は、決して誤りではなかったと考える。
このプレーは
・センターの捕球
・センターの送球
・捕手の捕球
・捕手による走者へのタッチ
守備側が走者をアウトにするためには正確にこの過程を経ることが必要である。この過程の中で1つでもミスがあれば3塁走者は生還できる。
さらに、好投手から1点がほしいとはいえ、アウトになっても2点はリードしている状態である。2アウトから2割と少しの打率しかない次打者に期待するよりも、本塁へ突入するという判断があってもいいだろう。状況を踏まえて、多少の浅いフライなら突入するようベンチから事前に指示がでていた可能性もある。
もし、この送球が1塁側に逸れていたら、または捕手がセンターからの送球を捕球できていなかったら、今回とは逆に「なぜ突入させていなかったのだ」「突入していたらさらに得点できたはずだ」などという意見が出ることは容易に想像できる。結果論である。実際はドラゴンズの野手がミスなく素晴らしいプレーをしたのだ。
プロ野球選手は野球を職業としている。我々のように本業があり娯楽として野球と関わっている素人ではない。朝から晩まで野球漬けのプロフェッショナルである。そのプロが、なぜそのような判断をしたのか、考える目を持ちたいものだ。