寺田和代【Book Review】『アレクサンドレ・カズベギ作品選』三輪智惠子訳
「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」
第2回 ジョージア篇【Book Review】〔3〕
◆『アレクサンドレ・カズベギ作品選』三輪智惠子訳、成文社、2017年6月
コーカサス交易の要衝だったカズベキ含む19世紀のヘヴィ地方を舞台に、羊飼い、山の民、国境警護の傭兵コサックたちの人間模様を描く4篇を所収。
ロシア帝国の支配にあえぐ民や、家父長制と貧しさに追い詰められ命さえ落とす女性の姿はやりきれないけど、豊かな自然や音楽や祈りに慰められ、生きる希望を見出す民の姿には、時代や場所を超えて人を鼓舞する力がある。
男同士の友情と裏切りを描いた『長老ゴチャ』に今回の旅で訪ねた三位一体教会が村で最も権威ある会議場として登場し、
“山の上には、山の名を冠した、古い、苔むした教会があり
下に漂う霞はわれわれの過去の聖なる形見と地球とのつながりを絶っている” (抜粋)
とつづられている。
地元出身の著者にとっても雲上の教会は “地球とのつながりを断つ” ほど孤高の存在だったのだ。
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