寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第2回 ジョージア篇(15)
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ジョージア篇(15)
おいしくて手頃で親切な料理店に毎日通う
丘とアパートの間には、カハに教えてもらったことがきっかけで訪ね、味、料金、テーブル係の親切さ、雰囲気のすべてが気に入り毎日通ったジョージアレストランChashanagiriがある。
なんたって料理がおいしい。シグナギのゲストハウスでも振る舞われたオジャフリ(肉じゃがふう)やシュクメルリ、今が旬の地産きのこのシチューなどを毎回1皿づつ順に注文し、ハウスワインか地ビールを1杯。炭酸ウォーターとパンを添えて毎回20ラリ程度(約1100円)だった。
本当はあれもこれも少しずついろいろ食べたかったけど、ひと皿の量が日本の一般量比3倍(目算)くらいあるために諦めざるをえず。
ジモティに愛される店ながら外国人旅行者にもウェルカムな雰囲気や、午後の半端時間も開いているのがありがたかった。
そして、ここに通いつめた理由がもう一つ。テーブル係をしてくれた若い女性の親切と思いやりだ。
最初の日から、女ひとり外国人のおずおず感を漂わせていたに違いない私を温かな表情と言葉で迎えてリラックスさせ、家族連れでにぎわうテーブルからちょっと離れた窓際の小さな席に案内してくれた。
さらにトビリシの大半の飲食店同様、手持ちの携帯でQRコードから注文する方法に苦戦する私に、操作の仕方を辛抱強く指南。
うまくいかないとわかると、大丈夫、と言うや、紙に手書きする昔ながらの方法で安心させてくれた。困った友だちを励ますまなざしで。
最後の日、テーブルを去る前に彼女に挨拶をしたくて姿を探したけれど、休憩に入ってしまったのかどこにもいない。
諦めて店を出たそこにいた。ありがとう、旅の神様……。まるで長い友情を育んできた友だちとの別れを惜しむような気持ちで感謝と別れを告げると、彼女から握手の手を差し出してくれ、遠い所からようこそ、よい旅を続けて、と返してくれた。
バイバイ、と何度も振り返りながら店を背に歩き出しながら、またも視界がウルウル。知らない国で偶然出会った人に“親切にされる”経験にはそれくらい力がある。感傷ではなく、恩寵なのだ。
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