寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第2回 ジョージア篇(4)
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ジョージア篇(4)
崩れかけた旧市街地のエレガントな味わい(上)
チェックアウトのあと 荷物をクロークに預け、朝9時には出発。
シルクロード時代から 異なる文化や宗教の出合いの街だったトビリシ。
まずは旧市街エリアをじっくり歩いてそれを感じよう。
無料マップをもらおうと 昨日バスを降りたリバティスクエア横のツーリストインフォメーションを訪ねると、あいにく休館。
が、沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり。
建物のすぐ隣から、今まさに出発しようとしていた旅行者向け無料まち歩きツアーにまぜてもらうことに。
リバティスクエアの南東に広がるカラ(城)とよばれる地区から温泉街まで約2時間のウォーキングだ。
聖ギオルギ像のロータリーから一つ通りを入ったエリアがもう旧市街だった。
車がすれ違えないほど細く曲がりくねった路地を、トビリシ中心を流れるムトゥクヴァリ川に向かって歩く。
崩れかけた建物や家々の中庭、路地に張り出したバルコニーの続く景色の中をブラブラ歩くうちに、古い映画の街並みに入り込んだ錯覚に陥った。
古い街並みや歴史的建造物が残るという意味では、トビリシの旧市街も欧州各地のそれと変わらないけど、この街の特徴をあえてあげればリアルなさびれ感だ。
見られることを意識した演出されたさびれ感ではなく、実際に朽ち、色あせ、傾きながらも現役で活躍する建物や道。
その一つひとつに、それらが一体となった街並みにも不思議とエレガントさが漂う。詩や絵を描く人なら歩き出した途端、心をつかまれてしまうだろう。
とりわけ印象的だったのは“青い家”とよばれる集合住宅だ。
18世紀に建てられたキャラバンサライ(隊商宿)を、ソビエト連邦時代に地方から上京した人々ができるだけ大勢住めるよう館を分割・改修した建物で、今も現役の集合住宅として活躍している。
出入り口を増やすためにバルコニーが増築され、外階段がとりつけられたごった煮のような建物には、高齢に至ってなお高い美意識や誇りとともに生きる人間に似た貫禄が漂う。
きれいに保たれた共有スペースや暮らしの一部をオープンにしたたたずまいに、住人たちの建物への敬意と責任、ここに住まうプライドと喜びを感じた。
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