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寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第3回 ブルガリア篇(4)
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ブルガリア篇(4)バルカンの原風景
──コプリフシティツァ
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深い山間の駅コプリフシティツァで下車し、一緒に降り立った数人の旅行者らとともに駅前で待っていた乗合バスで村の中心部へと向かった。
“バルカンの原風景”とよばれる渓谷沿いのこの村をブルガリア屈指の観光地にしたのは、ハウスミュージアムとよばれる19世紀に建てられた豪華な伝統家屋群だ。国内で最初に〝美術館都市〟宣言をした村としても知られる。
終点でバスを降り、街歩きの前にお昼を食べて休憩しようとバス停近くの食堂へ。
隣りの席でジモティらしき人が食べていたのと同じブルガリアふうグラタン(5.5レヴァ)とブルガリアビール(1.9レヴァ)を注文。合計7.4レヴァにチップ分を加えて600円くらい。
グラタンはさまざまな野菜、ポテト、卵、チキンなどを煮込んだ上にフェタチーズとハーブを乗せたホッとする味。味も値段も雰囲気も気に入って、この晩もここで食べた。
予約した宿はそこから徒歩10分とかからない距離だけど、5月だというのに30度近い暑さにくじけて食堂の前でボーッと座っていると、通りかかった70代くらいの女性に、大丈夫か、とブルガリア語で声をかけられ、宿の名を言うと、送ってあげよう、という。
そんな、申し訳ない、大丈夫です、と伝えたいのだけれどうまくいかず、焦りながら彼女の後を追ううちに、到着してしまった。
宿の人に「お客さんだよ」(雰囲気からの訳)的な声かけまで。
ことここに至って、これまで多くの国や街を旅してきたけれど、困っていそうな人にためらわず声をかけてくれる人の多さは、この国がダントツではないだろうか、と認識し始めた。
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案内された部屋は寄木造りの凝った天井と柱が美しく、それらに調和したスタイルのある家具が配置されていた。
一泊朝食・税込みで56レヴァ、日本円換算約3500円。50代くらいの朴訥なオーナーに宿の歴史を訊くと、19世紀に建てられた民家を天井や柱などの意匠を変えずに改築した建物だという。
バルカン半島の山奥にこれほど優雅で立派な屋敷がとくに歴史的建造物に指定されているわけでもなく保存され、現役で活躍しているなんて。信じられない、奇跡ですね、と言うと、それがこの村さ、と誇らしげにほほえんだ。
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